第三話 足軽織田信勝
一五五六年(弘治二年)十月初旬 尾張国清洲城内足軽長屋
〜織田信勝〜
朝一で清洲城に着いた。末森城を出発する直前に、刀の事を思い出して、どうしようかと焦っていたら、なんか収納できた。異世界系の定番のインベントリってやつ。スキルじゃないみたいで、鑑定しても出て来なかったから気付かなかった。これは仕方ない。最初消えた時は、無くした!?と思ってめちゃくちゃ焦った。
清洲に着くと、小姓が待っていて、俺を足軽長屋に案内した。俺の家は端っこで隣は前田又左衛門利家だそうだ。あの槍の又左!?と思って今はテンションがめちゃくちゃ高い。後で挨拶に行って仲良くならないと!ちなみにその隣の家は木下藤吉郎秀吉だ。なんか、改めて戦国時代だなぁと思った。
二人とも家には居なかった。秀吉は信長の小姓として働いているし、利家は足軽として訓練にでも行ってるのだろう。
俺も用意をしたら訓練に行かないと……。
―清洲城内訓練場―
訓練場に行くと、中では別々に訓練をしていた。刀、槍、弓、音だけしか聞こえないが鉄砲もあるみたいだ。そういえば技能には鉄砲が無かったな。後で訓練しよう。先ずは剣術の練度を上げたい。誰に話しかけたら良いんだろう。
俺が訓練場の中に入って進んで行くと、訓練をやめて皆が俺の方を見ている。それもそうか。つい昨日まで敵対していたもんな。まぁ別にどうでも良い。気にしない。
キョロキョロしていると一人の男が近づいて来た。……デカい。180cmはあるんじゃないか?
巨男は俺の目の前で止まり、話しかけてきた。
……鑑定してみるか。
名前:前田又左衛門利家
レベル:18(3622/10600)
年齢:18
職業:織田家足軽
状態:健康
体力:100/100
筋力:30
頑強:33
敏捷:28
器用:11
知能:17
精神:40
技能:剣術(中級)、槍術(達人)、弓術(初級)、鉄砲術(初級)、騎馬(中級)、格闘術(中級)、算術(初級)、不屈(固有)、槍の又左(未開花)
装備:六間半槍
流石は槍の又左だな。素晴らしい能力値だ。でもこの『未開花』ってのはなんだ?まだ使えないのか?まあ良いか。固有技能が二つも……。達人の技能もある。凄いな……。
「勘十郎様、前田又左衛門利家でございまする。殿から訓練場の説明をするように言われておりまする。宜しいですか?」
見た目とは違ってとても礼儀正しかった。こいつが本当に傾奇者と呼ばれているのか?
「かたじけない、又左衛門殿。それと俺の事は勘十郎で構わない。敬語も無用だ俺は其方と同じ立場なのだ」
利家が目を見開いている。
「承知した。ならば俺の事も又左で構わん。これから宜しくな、勘十郎」
「あぁ!宜しく!」
利家がニコッと笑った。意外と順応が早い。
「では早速俺に着いて来てくれ。先ずは剣術指南だ」
利家に着いて行くと、一人の男がいた。ある道場の師範代らしい。
着いてすぐに刀についての座学から始まった。刀の使い方や長所短所、有名な剣豪などなど……。
そして座学が終わると直ぐに実践訓練が始まった。まぁ案の定ボコボコにされた。
木刀で殴られた場所が赤くなって腫れている。明日までに治るかなぁ。
次は利家に槍術が弓術どっちか選べと言われたから、大分食い気味に弓術が良い、と言った。利家は残念そうな顔をしていたが知らないふりをした。ごめんね。
そして弓術の師範代にさっきと同じような事をされた。一つだけ違うのは弓の腕前がとても良いという事だった。射った矢が10本中7本は真ん中に当たった。これが上級の力か。少し興奮した。
一通りの訓練が終わり、自分の能力値を見ようと鑑定をすると、経験値が少しだけ上がっていた。練度も少し上がっている。なるほど、訓練で経験値は上がるのか……。一刻も早く法則性を見つけないと……。
帰りに、利家に会うと隣に小さな男がいた。いや、利家の体型からしたらほとんどの人が小さく見える。近づくと俺とほぼ同じ身長だった。もしかして......?
「勘十郎、こいつは俺の友達の木下藤吉郎だ。藤吉郎こっちは織田勘十郎だ」
やはりあの秀吉だ!早速鑑定をしよう!
名前:木下藤吉郎秀吉
レベル:14(188/5600)
年齢:19
職業:織田家小姓
状態:健康
体力:100/100
筋力:19
頑強:18
敏捷:30
器用:38
知能:39
精神:45
技能:剣術(初級)、弓術(初級)、鉄砲術(初級)、格闘術(初級)、鷹の目(中級)、根性(中級)、算術(中級)、建築(中級)、弁術・説得(中級)、立身出世(固有)、人たらし(固有)、中国大返し(未開花)
装備:無し
やっぱり凄い能力値だなぁ。技能も大量にあるし、固有技能が二つ、いや三つか?凄い能力だな。
ん?この『立身出世』はなんだろう。見てみるか。
〜立身出世〜
説明:普通よりも速く出世する
主君から好かれやすくなる
ふむふむ、なるほど。やばいなこの技能も。未開花の技能はまだ見れないみたいだな。名前的には本能寺の変の時だろうけど、いつ開花するんだろうな。
「織田勘十郎信勝である。木下殿よろしくお願い致す」
出来る限り平静を装って言った(つもり)。
「木下藤吉郎でございまする!!勘十郎様!宜しくお願い致しまする!!」
元気ハツラツって感じだ。こっちまで気分が良くなる。流石人たらしいだな。
「木下殿、様など付けないでくれ。どうか気軽に勘十郎と呼んでくれ」
秀吉は素っ頓狂な顔をしている。その顔が少しおかしくて吹き出してしまった。すると秀吉が慌てて
「これはこれは失礼致しました。でしたら某の事も藤吉郎で構いませぬぞ!!」
「了解した、藤吉郎。これからも宜しくな!」
そう言うと秀吉は顔をくしゃくしゃにして笑った。俺も一緒になって笑った。利家も笑っている。
一五五七年(弘治三年)十一月下旬 尾張国清洲城内足軽長屋
訓練が終わり、部屋で寛いでいる。少し能力値を見ようか。
名前:織田勘十郎信勝(東郷泰人)
レベル:8(688/1100)
年齢:20
職業:織田家足軽
状態:健康
体力:100/100
筋力:19
頑強:16
敏捷:23
器用:23
知能:26
精神:34
技能:剣術(中級)、弓術(上級)、鉄砲術(初級)、格闘術(初級)、百舌鳥使い(中級)、算術(中級)、鑑定(初級)、弁術・説得(初級)、超集中(上級)、人たらし(固有)、急成長(固有)
スキルポイント:0
装備:鬼切丸
訓練を始めてから一年が経った。
スキルポイントを使って、『人たらし』の技能をとった。これは後々絶対必要になると確信している。
訓練でも一応能力値は上がるみたいだけど急成長を感じれる程早くはなかった。やっぱり実戦じゃないと上がりにくいのかもしれない。
まぁ焦らなくても半年後ぐらいに浮野の戦いがある。そこに呼ばれ、活躍出来たらレベルも上がるだろう。
……よし、もうちょっと訓練しようかな。
―――
〜織田信長〜
「奴に怪しい動きは無いのか?」
「はっ、特に御座いませぬ。このまま監視を続けなされますか?」
「……いや、もう良い。奴の真意は分かった。それよりも岩倉はどうなっておる?」
「やはり一色と繋がっているようで、頻りに文を交わしているようでございまする。嫡男の信意を廃して、次男の信家を当主にしようとしているようです」
「そうか、内が纏まっていない様だな。然らば攻めるか。この俺の敵では無い。軍備が整い次第、直ぐに出陣する。良いな」
「はっ」
「この戦には勘十郎も連れて行く。奴がどのような立ち回りをするか見せてもらおうではないか」
クックックッと含み笑いが出た。