第十八話 混沌
今回は大分早いペースで投稿できたかなと思います!
ぜひコメント等よろしくお願いします!
※硝石について説明してる場面があるのですが何かおかしいなと思う事があれば教えていただけると幸いです!
一五六三年(永禄五年)十月中旬 尾張国中島郡信勝の屋敷
〜織田信勝〜
「失礼します。今村の検地帳をお持ち致しました」
部屋で算盤を弾いていると、小姓が声をかけてきた。入れ、と言うと小姓が襖を開けて入って来た。小姓から紙を受け取り、ちらりと見た。おぉ、今村も去年と比べて収穫が増えていた!
「これで最後か?」
小姓に背を向けたまま聞く。
「はっ、伊右衛門様が今村で最後と仰っておりました」
「わかった。下がって良いぞ。あぁ、茶を持って来てくれるか」
俺がそう声をかけると、小姓は返事をし、一礼して部屋を出て行った。
今は中島郡の石高を計算している最中だ。もともと織田家は貫高制を導入していたのだが、農地改革や開墾奨励を行う時に貫高制は使い勝手が悪そうな気がして石高制に変えるようにしてはどうかと、丹羽五郎左と話して兄に進言したのだ。二つ返事……というか勝手にしろと言われた。兄は農業よりも商業の方を重視している節があるからな。その分俺たち家臣がカバーしないとな。米は非常に大事だからな。酒にもなるし、不作の所に売れば金にもなる。それで石を"京枡"と言う新しい公定の枡を採用したのだ。この計算がまぁ面倒だな。もともと算盤が得意じゃないのに、算盤でしてるというのも原因の一つだな。……鉛筆でも有れば良いんだろうけど。流石に筆でいちいち紙に書き記して行くのは面倒だからな。……ちょっと調べてみるか。確か徳川家康が使ってたような……。
えーと、合計で五千二百十一石三斗五升か。そういえばこの辺りに去年の検地帳が……。ふむ、去年は石高で表すと約四千六百石か。大体六百石増えたのか。この時代の農業の感覚がまだわからないから、多いのか少ないのかわからないな。まぁ増えてる事に越した事はないからいいか。色々便利な農具を開発したんだがな。まぁこんなもんか。
「殿」
襖の向こうから声が聞こえた。竜胆の飛鷹仁兵衛憲通だ。最近は直接会う事が少なくなっていたから、かなり久し振りだな。実は最近領内に甲賀の者が紛れ込んでいると仁兵衛から報告があって、可能な限り直接会う事は避けていたのだ。普段は文や伝言で報告をしていたが、今回は恐らく直接会って話しをしなければならないほどの事だったのだろう。
「仁兵衛か、如何した?入れ」
俺が声をかけると仁兵衛は一切の音も無く部屋に入って来た。筆を置いて甚兵衛の方を振り返ると、少し困った様な顔をしている仁兵衛が居た。
「殿の命で一条院の覚慶について調べて参りましたが、その事で幾つか御報告致したい事がありまして……」
ふむ、覚慶……、つまり足利義昭の事か。いつも通りに文で報告出来ると思っていたのだが……。
「我等の手の者で、覚慶の侍女として忍び込ませている者がおりまする」
覚慶の侍女?そこまで深いところまで入り込めていたのか……。凄いな、仁兵衛。
「その者からの御報告によりますと、覚慶の一条院からの脱出を手引きした者は、細川兵部大輔藤孝、一色式部少輔藤長、松永弾正少弼久秀、内藤備前守宗勝との事です。脱出した後は大和の松永久秀の居城信貴山城に入ったとの事でありまする」
うーん、やはり松永久秀派は義昭派だな。という事はこの変の首謀者は三好重存でほぼ確定だな。
「という事はこの変の首謀者は三好重存で確定か?」
俺が聞くと、仁兵衛は自信無さげに首を横に振った。
「……信憑性の低い事なのであまり鵜呑みにしないでもらえると良いのですが……」
なんだ?随分歯切れが悪いな。……珍しい。
「覚慶の一条院脱出に三好重存か関わっていると……」
……え?そうなってくると矛盾が生まれるぞ……。
「それは一体どういう事だ?御所巻を行い、義輝公を弑したのは三好重存では無かったのか?」
「実行に移したのは三好重存で間違い無いのですが……、三好重存は三好家の当主になったとはいえその実権の殆どは伯父である三好実休・安宅冬康が有していると言われておりまする」
それは俺も知ってる。次男である三好実休には三人の息子がいたにも関わらず、四男の十河一存の一人しかいない息子を当主にしたのは、親の実家の関係も有るのだろう。恐らく二人はこの一連の流れに対して不満はあったと思う。しかし、御家騒動ほど無益なものは無いとわかっていたのだろう。だから強く反対する事はなく、いわば重存を傀儡として三好家の実権を握る事に納得したのだろう。
「三好実休と安宅冬康は紀伊に遠征に出たと聞いていたが……?」
「はっ。三好実休・安宅冬康は和泉の畠山高政を攻めていましたがこれといった大きな衝突も無く、僅か一日で帰還したとの事でありまする」
……なるほど。確かにクサイな。裏があってもおかしく無い。三好重存に汚れ仕事をさせたと考える事が出来る。
「成程……。仁兵衛、もう少し詳しく調べて参れ。それとまた一つ頼みたい事がある」
「はっ、何なりと」
「甲斐の武田勝頼の人となりについて調べてくれ」
「万事、お任せ下さい」
そう言うと仁兵衛は部屋を出る際に一言挨拶をして去って行った。……なんか、疲れたな。久しぶりに訓練場に行くか。最近は鉄砲も何挺か仕入れて、練習させている。硝石の作り方を知っている俺からすると火薬は超がつくほどの貴重品ではない。俺の領内で作られている硝石は、人間の糞尿を堆積させた土と灰汁を混ぜ合わせる事で作られている。いわゆる硝石丘法と言われるものだ。実はと言うと蚕があれば良いんだけどな。蚕を使ってする方が大量に生産できる。でも蚕の生息地は覚えてないからな……。爺ちゃん、蚕の生息地も教えてくれてたら……。
ちなみにこの生産方法は尋常じゃないくらい悪臭を漂わせるため、これに従事している農民には年貢や賦役の免除などの待遇で何とか帳尻を合わしている。本当に尊敬する……。俺ならやりたくない……。
―――
〜雛菊藤七郎〜
訓練場で兄上達と共に日課の稽古をしていると、殿が現れた。滅多に訓練場に来る事はなかったのに如何したのだろうか?
稽古を途中で止め、殿の前に控えた。
「畏まらなくて良い。立て」
殿がそう言って俺たちを立たせた。何ヶ月振りに会ったのだろうか。姉上が林家に修行?しに行く時以来か。あの時、姉上と婚姻を結ぶと聞いて何かの間違えではないかと思ってしまった。たかが農民の小娘が織田家当主の弟と結婚なんて……。姉上に詳しく聞くと、二人ともお互いに好いていて、添い遂げたいと言われたらしい。まるで御伽噺のようだと思った。
「今日は久しぶりに体を動かしたくてな。仕合をするぞ。五人ずつで構わん。準備致せ」
そう言うと殿は壁に立て掛けていた木刀を持った。そして二、三回素振りをした。正直、殆ど見えなかった。当たったら死ぬかもしれない……。
―――
〜織田信勝〜
大体これで五十か。中々手強かったな。真面目に鍛えていたという事だな。
……さて次は……。
「某が参りましょう」
左近かぁ。左近を相手にして五人はキツイな。さすがに一対一だな。
「ふむ、左近か。ならばお主だけで良いだろう。来い」
左近が一度俺に一礼をして、近づいて来た。そうだ、久しぶりに鑑定しようか。
名前:島左近清興
レベル:33(2350/43600)
年齢:20
職業:織田家織田信勝家臣
状態:健康
体力:92/100
統率:22
筋力:48
頑強:36
敏捷:38
器用:12
知能:41
精神:58
技能:剣術(上級)、槍術(達人)、格闘術(中級)、騎馬(初級)、鷹の目(初級)、兵法(初級)、洞察(中級)、義人(固有)、鬼左近(未開花)
装備:木刀
名前:織田勘十郎信勝(東郷泰人)
レベル:37(18950/56200)
年齢:26
職業:織田家中島領主
状態:健康
体力:95/100
統率:48
筋力:55
頑強:50
敏捷:58
器用:55
知能:69
精神:60
技能:剣術(達人)、槍術(初級)、弓術(上級)、鉄砲術(中級)、格闘術(上級)、百舌鳥使い(中級)、隠密(初級)、兵法(中級)、指導(初級)、暗視(中級)、挑発(初級)、調略(上級)、算術(中級)、書法(中級)、鑑定(上級)、弁術・説得(中級)、弁術・論破(初級)、町割(初級)、治水(中級)、農業(初級)、超集中(上級)、織田の赤鬼(固有)、人たらし(固有)、急成長(固有)
スキルポイント:2
装備:木刀
能力値的にも技能的にも俺の方が全て上回っている。でも能力値が上だからといって必ず勝てる訳ではない。これはあくまで目安だからな。左近は若いながらも一対一には強い。もともとは大和にいたからな。剣豪の柳生家の誰かと繋がりがあったのかもしれない。……とにかく、油断せずにいこう。
「では、参ります!」
声を出すとともにいきなり俺の喉元目掛けて刺突してきた!
中々な速度だったが、木刀で最小限の動きで軌道を逸らした。少し態勢を崩した瞬間を狙って思いっ切り木刀を振り下ろす!
『ドカッ!!』
……ギリギリで身体を捻って躱したか。左近から自分の木刀に目を向けると床に穴が空いていた。今の音はそれだったのか。後で直さないとな……。
俺が床の穴に目を向けた瞬間に左近がまた突っ込んで来た!意外と脳筋タイプなのか?いや、違う、フェイントか!刺突は本命じゃない!刺突の動きから逆袈裟斬りの動きに変えた!まずい!
「うおぉ!」
左近の首元に木刀を当てて床に押し付けた。左近が持っていた木刀は遠くまで飛んでいた。
「……参りました」
「いやぁ、危なかった。特に最後は肝を冷やしたぞ」
本当に危なかった。あのまま防御に入っていたら追撃で追い込まれていただろう。あのタイミングで前に踏み込んだのが功を奏したな。咄嗟の動きだな。漸く達人らしい動きが出来た気がする。
刺突から逆袈裟斬りの動きに変わったタイミングで少し前に出て、左近の斜め上の力の向きとは反対の方向から木刀に向かって叩き付け、木刀を吹っ飛ばし、返す刀で左近の首元を狙って床に押し付けた。流石に最後は手加減をした。本気でやっていたら、首の骨が折れていたに違いない……。
「左近、怪我は無いか?」
「はっ、御指導有難うございました」
左近は一礼して木刀を拾いに行った。
名前:島左近清興
レベル:35(35650/49700)
年齢:20
職業:織田家織田信勝家臣
状態:健康
体力:52/100
統率:22
筋力:52
頑強:40
敏捷:42
器用:16
知能:42
精神:59
技能:剣術(上級)、槍術(達人)、格闘術(中級)、騎馬(初級)、鷹の目(初級)、兵法(初級)、洞察(中級)、義人(固有)、鬼左近(未開花)
装備:無し
おぉ、凄く上がったな。こういう仕合だけでも意味はあるみたいだな。改めて認識できた。
......藤七郎たちはまだまだだな。俺と左近の仕合をみて少しは意識が変わってくれると嬉しいのだけどな。まぁ、そろそろ行くか。約束の時間までもう少しだな。……少し汗を拭ってから向かうか。




