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第十三話   十六人の城奪り

一五六ニ年(永禄五年)三月下旬   尾張国中島郡信勝の屋敷



〜織田信勝〜



「ふぅ……」


縁側で波瑠が淹れてくれた茶を飲む。美味い。五臓六腑に染み渡る。……大袈裟か。

縁側で波瑠が俺の部屋を掃除しているのを見ながら茶を啜った。助かるなぁ。


十日程前に、墨俣(すのまた)に城を築く事に成功した。被害は八十人程で、主だった戦いは無かった様だな。

成功した要因は二つだな。一つは秀吉が川並衆を調略した事、もう一つは長秀の現場指揮が的確だった事だ。

特に長秀の現場指揮のおかげで築城がスムーズに進み、被害が少なくなった。尾張国内で事前に城の部品を作っておき、川を使って筏で運び、現地で組み立てる。この作戦が功を奏したそうだ。これで西美濃への調略が楽になる。


他には半兵衛から手紙が届いた。内容は稲葉山城の事と、支援の感謝だ。主に俺が提供した技術力に感謝しているな。

俺が教えた農具と肥料によって領地が豊かになったらしい。偵察に行った仁兵衛からも聞いた。成功して良かった。

ちなみに稲葉山城の事だが、だいぶ内部が腐敗しているらしい。龍興は変わらず先代からの家臣を遠ざけて、斎藤備前守やその側近共と楽しくやっているみたいだ。斎藤備前守も半兵衛からの献金の一部をちょろまかして自分の物にしているらしい。稲葉山城はドロドロだ。

半兵衛に、龍興を殺す事になる、と言ったら、是非に及ばず、と返事がきた。半兵衛も覚悟を決めた様だ。


恐らく決行は再来月になるだろう。六月になる前だな。雨季になる前に美濃は制圧したい。兄もそう考えている。

ちなみに今回は利家と成政は御留守番だ。南の抑えの為に残しておく。松平の行動がはっきりしていない。だから、美濃攻略は勝家ら重臣たち中心で行うとの事だ。それに速度が重要視される。前線での迅速な対応が求められる。経験豊富な重臣たちが一番適切だ。


「殿、御部屋の掃除が終わりました」


「うむ、助かった。……待て、波瑠」


俺が波瑠を引き止めると、不思議そうな顔で俺の顔を見た。


「如何なされましたか?」


「少し……話そう」


俺が自分の隣に座る様に示すと波瑠は示した位置から少し離れた所に座った。俺は、ふっ、と笑ってから波瑠に近寄った。


「此処での生活には慣れたか?」


「は、はい!殿にはとても良くして頂き、感謝しています!弟たちにも気にかけて下さって本当に有難うございます!」


「ふふ、そうか。なら良かった」


「それに、此処では私のやりたかった料理が出来ます。殿はとても美味しいそうに食べて下さるので、とてもやり甲斐があります!」


波瑠は口元を隠しながら年相応に笑った。作り笑いには思わなかった。

二人の間に少し沈黙が流れる。聞こえるのは鴛鴦の囀りだけだ。


「波瑠」


「は、……いぃ!?」


俺は波瑠の方を向いて肩を掴んだ。波瑠は目を見開いて驚いている。その顔が少し可笑しかった。俺は大笑いしてしまった。


「と、殿?」


今度は不思議そうな顔で俺を見た。初めて会った時と比べて、とても表情豊かになったな。

今まで色々な表情を見た。戦に向かう時は不安そうな顔だが、それを悟らせない様にしてにこりと笑う顔。戦の怪我の手当てをしている時の少し怒った顔。料理が美味しいと伝えた時の恥ずかしくも、嬉しそうな顔。弟たちを見ている時の優しい顔。全て俺の心に残っている。

俺の気持ちはとっくの前に決まっていたのかも知れない。それこそ初めて会った時から……。


「波瑠殿、其方の事が好きだ。これからは隣で俺の事を支えてくれぬか?」


「なっ、……え!?」


波瑠は何が起こったのかわからない様だ。


「自分を顧みないで家族を守ろうとするその意志に心惹かれた。最初は妹の様に感じていた。しかし、共に過ごすに連れて、波瑠の良い所が沢山溢れてきた。そして、其方と隣でいるこの瞬間が一番心地良いのだ」


波瑠は手を口に当てて、涙を流している。

俺は波瑠の肩を離し、波瑠の手を握った。


「波瑠、幸せにする。共に生きよう」


もう一度力強く、言った。意外にも頭は落ち着いていた。

波瑠は一度涙を拭ってから頭を上げ、俺の顔を見た。波瑠は満面の笑みで泣いていた。


「勘十郎様……。私もお慕い申し上げていました。初めて、会った、あの日から……」


「勘十郎様の手が好き……。優しく話しかけてくれる声が好き……。家族の様に見つめてくれる目が好き……。勘十郎様の全てが好きです……。隣で一生支えたいです……」


波瑠は一通り言い切ってからまた涙を拭った。そして俺の顔を見て、微笑んだ。


「不束者ですが、宜しくお願い致します」


波瑠が頭を下げた。


「あぁ!あぁ!宜しく頼む!!波瑠、愛している!」


波瑠を抱きしめ、気持ちを伝える。視界がボヤけていた。


「波瑠も勘十郎様を愛しております!!」


俺たちはお互いに抱きしめ合い、お互いに気持ちを確かめ合った。これが結婚か、これが夫婦か。



―――



一五六ニ年(永禄五年)五月中旬   美濃国墨俣城城内



「おぉ!勘十郎ではないか!久しいのぅ!」


「そうだな藤吉郎。ふふ、その具足、似合ってるな」


藤吉郎は嬉しそうに胸の辺りを撫でた。


「そうかぁ?おねとお主がそう言うのなら間違いないのぅ」


藤吉郎が顔をクシャクシャにして笑った。俺も一緒になって笑った。藤吉郎とは田楽狭間の戦い以来、ちゃんと話せていなかった。久しぶりに思い出話に花を咲かせた。寧々の事や、又左の子供の事など色々話した。勿論俺の事も。


「お主もとうとう結婚するのかぁ。波瑠殿の事大切にするのじゃぞ。何かあれば儂やおねに頼ると良い!」


「そうだな、そうさせてもらうよ。さて、そろそろ今の状況について話そう」


陽が沈んでから半刻程経った。今夜は月明かりが無い為、松明の火が無ければ周りの様子は把握出来ない。こういう日は夜襲が有る可能性も高い。藤吉郎と長秀はしっかり警戒している様だ。

ちなみに墨俣城は城というよりも砦に近い感じだ。最低限の防衛が出来る程度に作っている。本格的に城化するのは美濃攻略後だろう。

今夜、この暗闇に乗じて菩提山城に向かう。俺一人のみだ。伊右衛門や波瑠たちには伝えていない。絶対に止められると思ったからだ。兄もこの策には顔を顰めていたが、最後は許可を出した。この策を知っているのは兄、長秀、藤吉郎の三人だけだ。波瑠たちには、兄に呼ばれて清洲に向かう。しばらく帰れない、と伝えた。伊右衛門もついて来ようとしていたが、領内の様子を見る様に指示を出した。


この暗闇では流石に真っ直ぐ目的地に向かうのは難しい。その為、技能『暗視』を取った。



 名前:織田勘十郎信勝(東郷泰人)

 レベル:33(3460/43600)

 年齢:25

 職業:織田家中島領主

 状態:健康

 体力:100/100

 統率:45

 筋力:53

 頑強:49

 敏捷:55

 器用:53

 知能:68

 精神:56

 技能:剣術(達人)、弓術(上級)、鉄砲術(中級)、格闘術(上級)、百舌鳥使い(中級)、隠密(初級)、兵法(中級)、指導(初級)、暗視(中級)、挑発(初級)、調略(上級)、算術(中級)、書法(中級)、鑑定(上級)、弁術・説得(中級)、弁術・論破(初級)、町割(初級)、治水(中級)、農業(初級)、超集中(上級)、織田の赤鬼(固有)、人たらし(固有)、急成長(固有)

 スキルポイント:0

 装備:脇差(無銘)、当世具足



『指導』は俺の兵士たちを鍛えていたら習得した。『農業』は一緒に畑を耕したり、収穫していたりしたら習得した。

ちなみに鬼切丸を付けていない理由は城内での乱闘が主になるからだ。鬼切丸は大太刀で、城内で振り回すのには向いていない。さて、そろそろ菩提山城に向かうか。『隠密』を使って。



―菩提山城―



「ふむ……」


菩提山城に着いた。城を見てみると、なかなか攻め難い城だ。力攻めで落とせない事もないがその場合被害は甚大だろう。守り切る為の城ではないな。兵を削る為の城だ。わざと弱く作られている所も有る。


「殿」


背後から声がした。仁兵衛だ。俺は振り返らずに話す。


「手筈は?」


「完了しております。此方へ」


そして振り向いて、仁兵衛を見失わない程度の後ろを付いて行く。

暫く歩いていると、人がいた。十三、いや十四か。


「勘十郎様、お待ちしておりました。改めまして、竹中半兵衛重治で御座いまする」


「舅の安藤伊賀守守就で御座る」


二人の男が膝をついて畏まった。一人は華奢で女性の様な男、もう一人はこれといった特徴の無い中年の男だ。



 名前:竹中半兵衛重治

 レベル:19(5650/12100)

 年齢:17

 職業:一色家菩提山城主

 状態:健康

 体力:95/100

 統率:28

 筋力:18

 頑強:13

 敏捷:23

 器用:57

 知能:66

 精神:49

 技能:剣術(上級)、弓術(上級)、鉄砲術(上級)、格闘術(初級)、鷹の目(上級)、兵法(達人)、挑発(上級)、調略(上級)、算術(中級)、書法(中級)、弁術・説得(上級)、弁術・論破(達人)、治水(中級)、超集中(中級)、王佐の才(固有)、神算鬼謀(固有)、今孔明(未開花)

 装備:脇差(無銘)、当世具足



 名前:安藤伊賀守守就

 レベル:36(22560/59600)

 年齢:59

 職業:一色家北方城主

 状態:健康

 体力:87/100

 統率:35

 筋力:33

 頑強:38

 敏捷:26

 器用:41

 知能:42

 精神:59

 技能:剣術(中級)、弓術(上級)、鉄砲術(初級)、格闘術(中級)、騎馬(初級)、兵法(中級)、調略(中級)、算術(中級)、弁術・説得(中級)、弁術・工作(中級)、治水(中級)、

 装備:脇差(無銘)、当世具足



半兵衛はまだ十七歳なのに途轍もない能力をしている。知能は俺にも匹敵するぞ。固有技能は……なんだこれ?



      〜王佐の才〜


   説明:王を補佐するのに相応しい才

      仕えている相手の能力値を常に+5する



      〜神算鬼謀〜


   説明:人知の及ばない、巧みな策略

      戦時、知能・精神が+15する

      敵の策が失敗しやすく、自身の策が成功しやすくなる



二つとも能力値を上げる事が出来るのか。しかも『王佐の才』はサポート系の技能だな。主君の能力を+5か。強い。『今孔明』の能力も見たいけど、まだ未開花か。今回の戦で開花すれば良いな。

安藤守就は普通だな。中堅の様な能力値だ。渋い活躍をしてくれそうだ。

残りの十二人は竹中、安藤家の精鋭たちだそうだ。そこに俺と飛鷹仁兵衛憲通を加えて総勢十六名だ。ちなみに仁兵衛は変装をしている。忍びは顔バレNGらしい。

半兵衛によると他の西美濃衆は中立を表明したそうだ。俺たちにも味方しないし、龍興にも味方しない。今はそれで十分だ。後で後悔する事になるだろうがな。


「うむ、織田勘十郎信勝である。二人とも此度は宜しくお頼み申す。早速だが、準備に取り掛かろう。何時登頂する予定なのだ?」


半兵衛に問いかける。半兵衛は具足を外しながら答えた。


「この後すぐの予定で御座います。一昨日、弟の久作が謎の病で倒れたとの連絡が有りました。それ故、斎藤備前守から稲葉山城に来る様にと要請が有りました」


「此方の荷車は二重底となっており、下に具足を隠しておきます。上には、清酒や米などで誤魔化します」


「そして斎藤備前守は某からの献金の一部を自分の懐に入れていると勘十郎様の素破からお聞きしました。これを利用し、検問を避けようかと思いまする」


ここまでは俺が助言した策だ。場内に入ってからの策は半兵衛に任せた。


「場内に入り、兵士たちに酒を振る舞い、全員が飲み終えてから久作の部屋で具足に着替えます。その後は城内では"織田が攻めて来たぞ"という虚報を流し、混乱に乗じて一色治部大輔龍興と斎藤備前守を討ちまする」


尾張の清洲城には五千が待機している。残り三千は墨俣に待機させている様だ。一色軍は国境警備だと思っている様だ。尾張の五千は目に入っていない様だな。

予め城内で騒動が起こった瞬間、仁兵衛の部下が墨俣の秀吉に伝えて、出陣させる。その後は墨俣の出陣に合わせて尾張の五千も出陣する予定だ。

兄には西美濃が中立を表明したと伝え、東に向かう様に伝えなければならないな。後は月明かりもない故、行軍は気を付ける様に言わなければならない。仁兵衛の部下に頼もう。


「二人を討った後は俺が正体を明かして城内の兵を降伏させる、だな?」


「はい、それと援軍が来ていないという事を悟らせない様にせねばなりませぬ。幸い今夜は月明かりも無く、相手の兵力の把握には時間がかかるでしょうが……。用心するに越したことはありません」


「そうだな、半兵衛の言う通りだ」


具足を脱いで荷車に乗せる。斎藤備前守は俺が討とう。龍興は顔が分からん。半兵衛が討つべきだな。過去との決別を意味する為にも。


「では、そろそろ向かいましょうか」


俺は今、半兵衛の家臣として振る舞わなければならん。オーラは……無いか。これなら織田信勝とバレる心配は無いな。……少し哀しくなった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  普通に信長からお姫様か重臣の娘を世話されるだろうから愛人枠だね。  能力面はこれから完全に人外に向かっていって欲しいけど、1人で敵陣奥まで突っ込んでいって敵兵なぎ倒すって司令官としては論外…
[一言] 今孔明より今荀彧っぽいスキルだな
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