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手短に読めるハズの短編集

プレイ・アローン

作者: 小説を書く人


 夫がソファに座り、朝食を食べている。

 朝6時半、息子はまだ寝ているが、我が家は少しずつ動き出していた。


 息子のお弁当の準備をしているときに聞こえてきたニュースは殺人事件が起きただとか、犯人不明の誘拐事件が起きただとか、有名人の〇〇が逮捕されただとか、感染者何名だとか、そんな気分が落ちるものを放送していた。


 だがひとつ、不思議なニュースがあった。

 殺人を犯した囚人全員が殺したやつを見た、と証言した。最初は幻覚症状ではないかと疑われたが、全ての殺人犯にそのような現象が起きた不可思議な事件だった。


「いってきます」

「いってらっしゃい」


 夫を見送った後、息子を保育園に送り届ける。

 私自身が専業主婦なので、幼稚園より保育園の方が金額が安くなるのだ。本当は予約が埋まってしまっただけなのだが、そういう言い訳にしておこう。


「らっぱ! …つみき!」

「ゆーちゃん、何してるの?」

「お友達と遊んでるの」

「どんな?」

「しりとり」


 私は1人でしりとりができるのか、と疑問を浮かべたが、子供によくあるイマジナリーフレンドというやつであろうと断定した。


「ゆーちゃん、保育園行くよ!」

「うん」




裕翔ゆうとくん、最近ひとりで遊んでるんですけど、ご家庭ではどうですか?」


 保育園の担当保育士が私にそう言った。


「家でも一人でしりとりとかしてるんですよ。でも、空想の友達……みたいな感じかなって」

「今まで何人かそのような園児さんを見てきましたけれど、裕翔くんは何か違うような気がして……」

「そうなんですか」

「一応、ご家庭でも何気なく探りを入れてみてください」

「はぁ」


 イマジナリーフレンドではない? だとしたら何なのだろうか。そんなことを思いながら、私は家に帰った。




 夕食、うちの家庭は家族3人で集まって食事をする。朝と昼は一緒ではない分、夜だけでも一緒に食べるというのがルールである。


「ねぇ、ゆーちゃん。最近誰と遊んでるの?」

「えーとね、かっちゃんと遊んでるの!」

「かっちゃん?」

「かつたくん! 最近良く遊ぶんだ!」

「他には誰と遊ぶの?」

「ゆみちゃんとね、ちひろくんとね、しおんちゃんとね、他にもたくさんの友達と遊ぶんだ!」

「そうなんだ、よかったじゃない」


 違和感を覚えた。

 保育園に「かつた」だとか「ゆみ」「ちひろ」「しおん」という名前は聞いたことがない。新しく入ったのか、だが5歳児の息子と遊ぶのだから、同い年くらいではないか。

 だが、私の記憶上にはそのような園児は存在しなかった。

 記憶違いだろう、そう考えたのは後々見れば失敗だった。あの時、もう少し探りを入れていればよかったのかもしれない。




 3ヶ月後、その日もいつもと同じような朝だった。

 夫が習慣的にニュースをつける。


『3ヶ月前に発生した、殺人犯の幻覚症状について、研究チームは【殺人犯によって亡くなった方々の幻覚が見える】という見解を発表しました』

『これってつまりは、言い方は悪いですが、死者の亡霊ってことですよね?』


 ニュースキャスターの報道に、椅子に座っているコメンテイターがそう述べる。


『そういうことになりますね。何かしらが原因で幻覚が起こりやすくなったとかでしょうかね』

『番組の取材では、幻覚症状で現れた人物と友好な関係を築いたり、遊んだりする場合と、喧嘩や罵声を浴びせられて精神的に参ってしまう場合があるそうです』

『それはまた不可思議な……まるで意志があるみたいですね』

『実際、幻覚を作り出しているのは本人ですから、本人の思うようになっている可能性が高いですね』


 コメンテイター達が議論を交わし、ニュースキャスターが締めくくり、そして次のニュースに移る。


『番組は今後とも、この現象については追っていくつもりです』

『次のニュースです。警察は、行方不明の12名の子供達について、殺人の疑いがあると見て、行方不明の子達の名前と顔写真を再度公開しました。次のような子供を見かけたら、すぐに警察に連絡を入れてください。行方不明になったのは、全員5歳児で、広末ひろすえ勝太かつたくん、くすのき由美ゆみちゃん、臼井うすい千尋ちひろくん、藤川ふじかわ汐音しおんちゃん……』


(かつた……ゆみ……ちひろ……しおん……他にもたくさん……まさかね……)


友梨奈ゆりな、どうしたんだ?」

「あ、大丈夫よ、あなた」


 どうやらかなりの時間ぼーっとしていたらしい、夫に声をかけられた。


『……警察はこれらを同様の犯行として引き続き捜査していく意向です』


 その後、夫が家を出て、私は真っ先に裕翔のところに向かった。


「ゆーちゃん、いつも何人で遊んでるの?」

「13人だよ。何人かいない時もあるけれど……」


 疑問が確信に変わった。

 裕翔、貴方は……


「……何人殺したの?」


 普段は可愛げのある裕翔の笑顔、この時だけはそれに恐怖を

覚えた。

 

短編2作目です。

感想、評価、改善点、お待ちしております。


前作「カウントダウン」や連載作品「時を斬る少年」は、ご迷惑をお掛け致しますが、私のマイページからご覧頂けると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] Twitterの企画で読ませて頂きました。 話がまとまっていて読みやすかったです。 ラストは驚きました。
[良い点] なろうでは珍しい現実世界に即した表現がされており、感情移入しやすい作品になっていると思います。
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