自由の先に
自由とはなんだ。
俺は餓鬼の頃ふと思った。
戦場に産まれ戦場で死ぬこの世界で。
毎日生きる事で精一杯で何が出来る訳でもない。
死体を漁り売れる物をみつけ、時に殺し、殺されそうになる。
俺の見る景色はいつも何か血で汚れている。
何がしたいと言う訳ではない。
何に不満と言う訳でもない。
ただ俺はもっと何かこの世界には
あるんじゃないかと思っていた。
金の心配やこの場所に縛られる事なく。
俺の行く道を誰も止める事のない自由が。
血にまみれていない世界が。
物心着いた時には親はいなかった。
周りを見て生き方は学べた。
ここでは命は軽く、強さだけが全てだった。
隣にいるやつは明日にはいないか、もしくは殺し、殺されるかのどちらかだ。
剣を握ったのはいつだったか。
武器は何処にでも転がってたが使えるものは少ない。
売れる物はもっと少ない。
その中で俺が最初に見つけた1番マシな武器が剣だった。
その中でも珍しい刀と呼ばれる武器。
たまたま死体が腐った中にくっついていたのだ。
酷い匂いと状態だったので避けられていたせいか
掘り出し物が残っていた。
この刀のおかげで命拾いした事も多かった。
武器の違いは戦いではかなり大きかった。
そして餓鬼の頃から考えていた事も歳を重ね、身体がでかくなるにつれ答えが出てきた。
強くなればいいと。
ここでは強さが全て。
ならば強くなれば全てを自由に出来る筈だと。
何者にも縛られる事なく。
誰にも俺を止める事は出来ない。
それから俺は技を身体を極限まで鍛えた。
人間という限界を幾度も超え。
不可能は全て可能に変えてきた。
その速さ、眼で追うこと叶わず。
その力、まさしく万夫不当。
その強さ、天下無双。
その技、神をも超える。
1度戦場に立てば一騎当千。
敵将などものの一刻も持たず討ち取れる。
そして自由を手にした。
全てを手に出来る。
誰にも俺を止める事は出来なくなっていた。
誰にも止める事が出来ないと言う事は、何でも
出来ると言うこと。
食べ物も女も家も土地も国さえ俺の自由に出来る。
だがそれを出来るとなった途端俺は気付いた。
全てを手に出来る、全てを自由に出来る筈なのに
何も欲しい物が無いことに。
金にも場所にも縛られる事が無くなった筈なのに。
この世界に俺が行きたいと思える場所は無かった。
欲しいと思う物も愛する者も何もない。
自由になった筈なのに俺は誰に止められる訳でもなく自ら足を止めるしか無かった。
俺は自由の先に何を求めていたんだ。