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旅立ち

「カイル、準備できた?」

「大丈夫だよ。 マリーザは?」

「私は荷物なんてほとんどないもん。 カイルが作ってくれたお布団と枕があれば十分!」

「あはは、気に入ってくれててよかった。 それじゃ、出発するぞ。」


部屋を出て宿屋のフロントに着くと、カイルが宿の主人にチップを渡す。

主人は早く出て行けと言わんばかりに乱暴にチップを受け取った。

むかつくー!!

宿代だって、相場の5倍は払ってるのに!

勇者だというだけで、カイルは全ての人に疎まれる。

誰も、彼の中身を見ようとはしない。

本当は優しくて、寂しい人なのに。

ーーー理解者が妖精の私だけだなんて、悲しすぎる。


宿を出ると、カイルが私に手招きをした。


「おいで。 長旅になるから、俺の胸ポケットで休んでな。」

「いいの!? やったあ!」


するん、とカイルのポケットに入り込む。

ここ、あったかくて居心地いいんだよなあ。


「それより! なんで、宿屋にチップなんて渡しちゃったの? ただでさえお金なくてカツカツなところ、相場の5倍も出して泊まったのにー!」

「俺たちを泊めてくれる場所自体、他になかっただろ。 泊めてくれるだけありがたいと思わなくちゃ。」


もう、ほんっとうに、カイルは人が良すぎる!

損ばっかりして生きているから、見ているこっちがはらはらする。

そんな思いが伝わったのか、カイルが宥めるように私の頭をぽんぽんと撫でた。


街の出口の近くまで来て、突然カイルが足を止める。


「あのさ…ダハトールに向かう前に、寄りたい場所があるんだけど、いいか?」

「いいよ! どこに行くの?」

「山を2つ越えたところにある、世界樹を見に行きたいんだ。」

「えっ……山を2つ!? それ、何日かかるの!? 行かなきゃだめ!?」


これから魔王討伐に向かうというのに、カイルに魔法を使わせて消耗させるわけにも行かない。

したがって山越えに魔法は使えないだろう。

私は回復魔法なら使えるけれど、魔法での消耗を回復できる術は持っていない。

かなり長期の旅が予想された。


「ごめん、でも…絶対に、行かなきゃいけないんだ。」


カイルは、真剣な眼差しでそう言い切る。

こんなに頑ななカイルは初めて見た。


「…わかったよ〜。 でも、あそこって、聖なる力が強すぎるから、人間は近づいちゃいけないんじゃなかった?」

「勇者の俺は入れるよ。 だから大丈夫。」


自分は大丈夫、なんて、どうしてそんなことがわかるんだろう。

勇者の生まれ変わりが引き継ぐ歴代勇者の記憶、というやつだろうか。


「そんなに大切な用事があるの?」

「うん。 かつての勇者達が魔王を倒す為に使っていた武器と……宝物を取りに行くんだ。」


武器については、昔カイルから少しだけ聞いたことがあった。

歴代勇者たちが使ったという聖剣。

魔王を封じることのできる、唯一の武器だという。


「聖剣は前に話してくれたけど…宝物って、一体何?」

「ーーー…内緒。」


カイルは人差し指を立て、唇に当てて軽く微笑む。


「もう! 少しくらい教えてくれたっていいのに!」

「ははは。 世界樹についたら、わかるよ。 それまで、楽しみにしてな。」

「世界樹まで何日かかると思ってるの! 気になるよー!」


いくら喚いてもカイルは教えてくれなかった。

まあ仕方ない。

魔王討伐までの道のりは長いのだ。

今は気長に、カイルとの旅路を楽しもうかな。


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