第四十四章 『暴君のはなむけ・結』
「三人がかりで何やってんだか」
二人ほど人が足りないことはとりあえず無視して、私は左右のパーツと頭上に二基ずつ、4×4+2×2=計20門配された艦砲を以てしての全門一斉射撃を敢行した。
敵(いわれた通りのテディベアのようだ)の体に何発もの砲弾が突き刺さり、爆発する。敵がダウンしたのを視認すると、私はジェットエンジンを吹かし全翼機の方に接近し、そのまま着地した。
そして背中の艦橋にくっついたサイロを開放し、SRBMを取り出してそれを倒れ伏したクマに思い切り叩きつける。
それがクマの腹を貫通し、奴は全身を電気が流れたかのように一度痙攣させ、そして再びその動きを止めた。
最後の仕上げとして私はミサイルを起動し、それが突き刺さったクマの体ごと天高く、相対的に鉛直直線運動をするように舞い上がらせた。
高速で飛行中の戦斗機から空中に放り出された相手の体が十分な距離離れたことを確認すると、私はそれに向かい、最後の砲弾を撃ち込んだ。
大爆発が起き、一拍おいて小爆発が起きる。小爆発のタイミングでICカードに印字された数字が50万ptほど増えたことが、奴を撃破したことの証となろうか。
ふわりふわり。
そう音を立てそうなゆっくりした動きで可愛らしいクマちゃんの縫いぐるみが落ちてきたので、それをキャッチ。
お腹に1048と書かれたワッペンが縫い付けられている以外には普通のテディベアで、動き出す気配もない。
ただ左手の先に付着した血痕だけがその異常性を示していた。
『こちら小野寺燈子。 図南姉に回してくれ。 どうぞ』
「新しく来たのは図南妹ですよ~。 戦ってきた奴の本体、回収しました。 どうぞ」
私は姉ちゃんから受け取ったトウジョウマグナムのスピーカー部に口を近づけて言った。
『……図ったな。 どうぞ』
「まだそっちもこちらに心を許してなかった時期に決めた話なんでね、ま、謝っときますよ。 ごめんなさ~い。 どうぞ」
暫く返答がない。
『こちら断月真易。 燈子が拗ねちゃったから今からは私が引き継ぐわ。 取り敢えずハッチを開けてもらうからレガシーの中に入ってくれるかしら。 少し休んで頂戴』
ありがたい気づかいだ。
私たちはレガシーの中に入り、乗組員の方たちに案内されて船内休憩室にやってきた。
変身を解除すれば変身中にためた肉体的疲労はそろって解消されるが、精神的疲労はその限りではない。
事実姉ちゃんを含む三人はぐったりした様子でソファベッドを一人一つずつ確保してその上に寝転んだ。 私は空いたソファに座り、トウジョウマグナムに向かって通信の再開を宣言した。
『質問が三点。 まず一つ、あなたはどうしてここに来たの? どうぞ。』
「姉ちゃんに呼ばれた。 っていえばいいのかな。 最初は普通に絵描きの引継ぎで、姉ちゃんが戦闘に巻き込まれたって電話でよこしてきたんで、仕事にきたんですけど、姉妹で決めてた救援コードが飛んできたので、飛んできました。 自分のアイテムは公共交通機関関係のアイテムなんで、位置情報とか分かります。 どうぞ」
『分かったわ。 では二つ目。 そのアイテムはどのようにして回収したんですか? どうぞ』
「今なら杞憂とわかりますが、ある時あなたたちがARC機構でない超常組織の成員である可能性が浮かんだので、とりあえずアドバンテージを得るために、お見舞いの日に姉ちゃんに回収してもらいました。 自分には完全な映像記憶があるので、場所が分かりました。 どうぞ」
『わかりました。 三つ目。 これが一番気になるところなんですけど、どうやって編集をしたんですか? 我々でさえその異常言語の解読はできていないというのに……。 どうぞ』
「は? ……あなたたちは編集してましたよね? てっきり言語自体はわかるけど、何らかのコピーガードが掛かってて完全には崩せなくなってるんだと思ってたんですけど。 ……どうぞ」
『私たちの異常編集は今まで回収してきた占めて27個のARC-4999—jp実体、そしてARC—014—jpを分析し、蓄積してきた情報を基にしてある程度の編集を行っているにすぎないわ。 ……まさかハッキングした訳じゃないわよね? ……どうぞ』
「姉ちゃんが知り合いから借りてきた教本を参考にしてコード書いたらしいんだけど……。 どうぞ」
『図南姉に回して。 どうぞ』
「ごめん、姉ちゃん今寝てる。 どうぞ」
『分かった。 じゃあ住所を教えてくれるかな。 エージェントに回収に向かわさせるわ。 あとは誰からもらったのかも、後で図南姉から聞いておかなくちゃね。 どうぞ』
取り敢えず住所は伝えた。
『ありがとう。 結果的には何の悪影響も及ぼさなかったし、貴方たちの行為は不問としておくわ。 ……それはそうと、マホウショウジョ・ターミネーターの変身者も探さないとね。 おそらく変身アイテムはあれなんだけど。 どうぞ』
「実は犯人には心当たりがありますんで、私一人に行かせていただけないでしょうか? どうぞ」
『……わかった。 知り合い? どうぞ』
「そんなもん。 どうぞ」
『燈子にも後で謝りなさいよ~? これにて通信終わり。 今日はもうお休みでいいけど、またいつか調書を取らせてもらうから、その時はよろしく。 どうぞ』




