第四十一章 『暴君のはなむけ・起』
『You fxxkin' nuisance! You've just spoiled all of my scheme!』
『Remember that I just needed your magic wand!』
『It means that you're no longer useful for me!』
『I told you whether you can SURVIVE or NOT!』
『Even thought I'm fxxkin' angry at you,however I do detest the BITCHES!』
『ARC athority? Then,I'll first assult them!』
2018年7月29日午後3時10分、奴はそう言って飛び出していった。
『犯人』はスタジアムの冷たいコンクリート床にへたり込み、彼女達の健闘を祈ることしか出来なかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以下はインシデント事案ARC-4999-jp—19を、その際にARC-4999-jp—1048の制圧に参加したEクラス職員、図南■に、自身の手記という形で証言してもらったものである。
時系列に関しては付記するタイムラインを参照されたし。
【15:27】
「なんで直々に本丸が出てくんのよ!」
「馬鹿なこと言ってる暇があるならとっとと撃て!」
「もう撃てる限り撃っとるわい!」
先ほどから 息もつかせぬ展開が続いている。
【14:47】
『掃除屋』が『36』のカードを全て回収し、装甲トラックで帰投していった後も、最初からあった薄いが確かに存在する気配は消えていなかった。
そのため私たちは、変身だけ解除して私たちは五人小隊を崩さずにスタジアムの周りを廻っていた。
「能力封じてくる奴がそんなうようよ来るんですか。 ……怖いんですけど」
白鳥さんがふよふよ震えながらそう言った。
「お前はどう考えても火力型だからな。 最悪どうにかなるだろ」
変身すらできなかった人の偉い方が言った。
「燈子ちゃん、それはそうと嫌な気配が滅茶苦茶するんだけど」
「海月、そのくらい我々も分かってる。 その場所がわからないだけだ、……いてっ」
突如立ち止まった白鳥さんの背中に、前方不注意の渦中だった燈子ちゃんがもろに衝突した。
可愛い。
「今、その気配がかなり接近……」
「まさか!」
「皆さんの気で気が散ります……」
「どこにいる!」
白鳥さんは人に反駁できる性質ではない。
「スタジアムの方です」
【15:22】
『Thunder! Bolt! Spark!』
『撃墜王の遺児 サンダーボルトデストロイヤーフォーム!』
「動けないのは二人だけか?」
「ええ、それ以外はちょっと動きづらい程度よ」
花鏡さんの質問に答えながら、私は天に舞い上がった。
【14:48】
「今人が密集しているところにARC-1048がいるって言ったか」
「言ってないですよ、そっ、そんなこと」
燈子ちゃんのあまりの剣幕に思わずふよふよ震えながら逃げの一手を打ってしまう白鳥さん。
「あんまり怖がらせちゃだめよ。 ……とはいえ」
場の緊張がさらに硬くなり、氷塊のような冷たさを放ち始めた。
それは極めて絶望的な可能性が提示されたせいだった。
【14:55】
スタジアムの最上層の回廊まで長い階段を一気に駆け上がる。
西高の試合は既に終わっていて、今は長崎県内でも一二を争う強豪高二校の試合で本日の試合が締めくくられようとしていた。
これで勝った方が甲子園に行くわけで、スタジアムはそれ相応の喧騒で包まれていた。
空は青く、ここにARC機構の把握しているオブジェクトの中でもトップクラスに危険な奴が。
「はっ……、はっ……。 異状はないみたいだが」
「でもっ、いますよっ! ここ」
「……間違いないのか……ちっ」
しかしながらトウジョウマグナムの反応はより強まり、異常といっても障りはない域に達していた。
他の皆の変身アイテムも多かれ少なかれ同じような状態にあるらしく、その言葉に疑いを持つ者はいなかった。
とりあえず最悪の状況は回避されたが、まだ懸念材料は消えたわけではなかった。
「今日この日にここにいるということは、つまりそいつが大勢の前でで何か派手なことをしでかそうと考えてることの証座じゃないか?」
「私もそう思うわ。 ……とりあえずもう少し詳しく見回るとしましょう」
【15:07】
これにて回廊から降りてスタジアムを一周したわけだが、特に何の成果も得られなかった。
そもそもの気があまりにも強すぎる関係で、白鳥さんや各変身アイテムによる位置検知の精度は人工衛星レベルでしかない。
「スタジアムの職員さんに協力を仰ぐのはどうですか?」
「眉見ちゃん、それは相手にこちらが動いていることを感づかせることになるわ」
「だめですよねぇ」
そういう風にしゃべりながら歩いていると、突然話しかけてきた者がいた。
「よう」
球児には見えないが高校生男子の一団が前にいた。
その先頭にいたチャラそうな男が話しかけてきたのである。
視線の先を確認するとお嬢さんだったので、視線をブロックする形で立っていた燈子ちゃんの袖を掴んでこちらに引き寄せる。
「あっ、久しぶり」
『西歐の男子部の知り合い』
ちょうど相手に聞こえなさそうな音量でお嬢さんが教えてくれた。
「なんでここにいんの?」
「ちょっと応援にね。 あんたは?」
『あれは私に惚れてる』
未曽有の犠牲が出るかでないかの瀬戸際にあっては出会いたくないタイプの人間である。
「俺も似たようなもんだよ。 知り合い?」
「仕事仲間、かな」
花鏡さんが後ろでヒューヒューはやし立てている。
燈子ちゃんが横でにやにや笑っている。
男の方も同じような感じだ。
危険な存在を負っていることも一瞬は忘れられそうなしょうもない空気感だ。
そう、一瞬はね。




