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 第四十章 『VS. oculoma』

 空から落ちてきたものが何かはすぐに分かった。

 今まで一度も私はそれを目の当たりにしたことなどないのだということも含めてすぐに分かった。

 まず視界に入った段階ではそれは大柄な人間に見えた。

 『刃牙』の登場人物のほとんどが該当するシルエットだった。

 夏の14時半はまだかなり明るいから、それからそう長く経たない内に奴の全身像が認識できた。

 『身長は2m強で、全体的には人型をしていました』、『頭部が異常に大きくて』、『電球型のシルエット』、『まともな存在でないことはわかりました』。

 そいつはそのまま着地した。

 力学的エネルギー保存の法則に従えば、それ相応の高さから落ちた怪人にはそれ相応の衝撃が掛かることは言うまでもない。

 相応の轟音が鳴り響き、そいつは大地に着陸した。

 さすがはプロとでもいった所か、隊員たちは全員怪人が着陸した途端に、立ち上った砂煙で相手の姿もまともに視認できない時点でそれと距離をとり、ライフル(私の知らない奴)を構えて着陸地点を狙い定めて戦闘態勢をとった。

 砂煙が晴れる。

 『その頭部の膨らんだ部分は、眼球,でかい目玉でした』、『その巨大な目玉を囲うように小さい目玉が大量にみっちり付いていて』、『下半身と両肩に何本ものガラス管が刺さってて』、『メモリが入ってる、メスシリンダーとか注射器みたいなやつ』。

 はい、会津さんが出会った奴です。

 そいつはどこから出ているのかわからない咆哮を上げ、元気を要求する孫悟空のようなポーズをとった。  

 途端周りで10本の光の柱がたち、その中にノイズのような靄が現れ、見覚えのあるシルエットが現れた。  

 テレビの砂嵐のような『ザザッ、ザザッ』というホワイトノイズ音がし、そのシルエットは実体化して奴らの姿になった。

 機械腕、ドミネーター、初音ミクみたいな色に光る『001』。

 またお前か。

 この瞬間私たちは変身シーケンスの中途にいたのだが、お嬢さんと燈子ちゃんはそれを中断させられてしまった。

 銃声が鳴り響く。

 機動隊員のライフルがが火を吹いたのだ。


 『Thunder! Bolt! Spark!』

 『撃墜王の遺児 サンダーボルトデストロイヤーフォーム』。


 超大型のドラムガトリングガン、『GAU-8 アヴェンジャー』を背負い、原典通りのエンジンと翼を浮かべた準最強フォームじみたフォームは、特殊能力を封じてくる相手には効果的だろう。


 「どいてぇっ!」


 左体側につけて腰だめで抱えたガトリングの引き金を引いた。

 30mm焼夷弾の嵐が怪人たちを襲う。

 一番手前にいた36二人をひき肉にし、奥の目玉おやじの化け物にも被弾する。

 左側にあった目玉がかなりの数砕け、そこから腐ったような液体が飛び散った。

 この時、神は相手に味方した。

 飛び散った液体が風に乗ってこちら側に降りかかったのだ。

 先ほど私が避難を勧告したために、私を含め場の人間は全員風下にいた訳だ。

 液体を浴びた瞬間、全身に悪寒が走った。 呼吸が苦しくなり全身が発熱するような感覚を抱く。

 覚えのある具合の悪さだ。

 咳の音がそこら中から上がる。

 私はひどい関節の痛みを圧して顔を上げた。

 全身をひどい痒みが襲う。


 「ひゃっ!」


 「きゃぁ――!」


 いろいろ聞こえているが精神衛生上深く考えないことがよいように思われた。

 相手のG生物もどきもケガでまともに動けないように見えるが、目が復旧していくのが見えたから、この膠着もそう長くは続くまい。

 機関銃を取り落とした。

 弾ともどもかなり重さがある代物なので、そのまま体が引っ張らてしまう。

 立ち上がれない。

 ドミネーターがゆっくり歩いてくる。

 途端、どこからともなく飛んできた砲弾が甲殻寄生獣の偽もんの一番大きい眼球に風穴を開けた。

 より大量の毒液が放出されるが、それは死に瀕したものの最後のあがきにもならなかった。

 爆発が起きる。

 場所がいつもの採石場なら完ぺきだった。

 そんな派手な爆炎が完全に消えないうちに花鏡さんと白鳥さんが変身状態で降りてきてプラズマ砲と46㎝砲を存分に暴れさせた。

 小爆発が八回。


 「何があったの? 全員具合悪そうだけど」


 「多分インフルエンザ」


 私の体を襲った体の不具合は見事にインフルエンザに罹った時のそれだった。


 「彼女の言うとおりよ。 ARC—5350『oculoma』。 全身に目ん玉そっくりの腫瘍がぶつぶつ出てくる改良型インフルエンザだな」


 保健の教科書で見たことがある。

 確かに後ろは振り向かなくてよかったかもしれない。


 「それ、予防注射受けてたはずなんだけど」


 「ここにいる奴はたぶん全員そうだ。 あちらさんがよこした変異株なんだからワクチンが効かないというのが一番ありうる理由だな」


 「確かにオキュロスウイルスで間違いないみたいですよ」


 花鏡さんはさっきバックベアードが立っていた場所へ歩みを進め、ちょうどそこでしゃがみこんだ。 


 「パスします」


 そうして立ち上がって、彼女が拾ったものをお嬢さんに投げ渡した。


 「なるほど」


 最低限の動きで手を上げてそれをキャッチしたお嬢さんは掌の中のものをみて目を細めた。


 「……注射器を投げるなよお前」


 「ごめんなさーい」


 花鏡さんは『てへぺろ♪』の表情をしながら言った。

 こういう時に彼女が発する声は明らかにくらくら(倉祁イズミのファンが勝手に言い始めた愛称)のそれである。


 「もっといいニュースもあるわ。 『マホウショウジョ・ターミネーター』、こいつの正体が今のでほとんど確定したわよ」


 「どういう意味だ?」


 戦闘が終わった瞬間から隊員の皆さんに指示を飛ばしていた燈子ちゃんが聞き返した。


 「さっき発症した時に、前奴の攻撃を食らった時とそっくりな息苦しさに襲われた。 ところで、『oculoma』が重症化した時の症状の一つに、本来体の表面にできるはずの眼球型の腫瘍が食道や気管に生じてしまうというものがあるな」


 「なあるほど」


 お嬢さんの横に来た花鏡さんがそう言いながら手を打った。

 やっぱりくらく(以下略)。


 「ARC-1078のインシデント案件に、奴の作ったテディベアの叫び声を聞いた者の食道に耳型の腫瘍が大量に生じ、それが原因となって窒息死してしまったという者があった。 その熊野郎は害のないただの叫び声も上げられたから、そのせいで油断があったってのもあるし、それにこれはまだ機構の安全対策が甘かった時代の話だ」


 なるほど。


 「いったん人体の出所については置いといて、ARC-1048であると仮定して調査を行った方がいいな」

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-5350 Oculoma

by Anorrack

http://www.scp-wiki.net/scp-5350

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

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