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 第三十一章 『説得力のある目撃証言』

 音声記録:事案ARC-014-jp-27に関する聞き取り調査

 

 インタビュアー:エージェント・白鳥

 対象:会津■■ (元ARC-014-jp-3-27。 以下会津氏と呼称)

 付記:エージェント・白鳥は会津氏の同級生である。


<2018/07/■■録音開始>


 エージェント・白鳥:

 まず、このオブジェクトをどのようにして入手したかお教えいただきますか?

 

 会津氏:

 はい。

 私がこれを見つけたのは、今から二か月前、学校からの帰り道のことです。

 当時野球部のなかでは[部内の人間関係の不和についての詳説が続く。 重要性が低いため省略]、その日はそれを解消せんと少しばかりの話し合いがあり、しかし結局特別に進展もなく、失意のまま帰途につ きました。

 こういう事ってよくありますよね?

 

 エージェント・白鳥:確かにそうですね。

 

 会津氏:

 その時私は深刻な将来への不安も併発していて、自分で言うのもなんですが、相当追い詰められていまし 

た。

 その日の帰り道も、考え事で頭がいっぱいで、あまり周りも見えていなかったと記憶しています。

 声をかけられたときは、家のすぐ近くまで来ていました。

 

 エージェント・白鳥:

 声、ですか?

 

 会津氏:

 はい。

 女性の声で『お悩みのようね』と。

 確かにこういわれました。

 声のしたほうを向くと、塀の上に粘土の人形のようなものが置かれていました。

 

 エージェント・白鳥:

 それがARC-014-jp-3-14だったということですね。

 

 会津氏:

 はい。

 わたしは専ら反さんと呼んでいましたが―彼女がそう名乗ったのです。

 私は彼女をそのまま家に連れて帰り、その後は専ら話し相手になってもらいました。

 

 エージェント・白鳥:

 ARC-892-jp,つまりその基となったオブジェクトには『ある人間の芸術的才能を看破する』,『どこから 

か芸術作品を転送してくる』,大まかに言ってこの二つの異常性があります。 

 そのような体験がありましたか?

 

 会津氏:

 はい。

 彼女とはいろいろな話をしていて、それは私にとって現在や未来への不安を整理し、見つめなおすことの 

助けとなりました。

 その一環で私の才能の話もありました。

 どうやら私には音楽の、それもヴォーカルの才能が有るらしいです。

 後者に関してですが、彼女を連れ帰ってから三日後、部屋の中に見覚えのない美少女フィギュアを見つけ 

ました。

 写真を撮って画像検索してみると、どうやら■■■■■■■というゲームのキャラクターのフィギュアの 

ようでしたが、それが公式に制作されという話は見当たらなかったので、それが転送物だとしたら、誰か

が私的に作ったものでしょう。


 エージェント・白鳥:

 ありがとうございます。

 それからは?


 会津氏:

 基本は話し相手になってもらうだけでした。

 私がはうちの学校の演劇部の話をしたら、それに興味を持ったので、今回はここに連れてきたのです。 


 エージェント・白鳥:

 初めて魔法少女に変身した時のことをお聞かせ願います。

 

 会津氏:

 一か月くらい前のことです、その日私は彼女をバッグに入れて学校にもっていっていました。

 彼女がうちの美術部に興味を示したんです。

 その帰り道のこと―美術部は結構気に入ったみたいでした―午後の7時ちょっと前だったと思います。  

 空もかなり暗くなっていて、私は歩みを速めていました。

 セブンイレブン■■■■店を通り過ぎてすぐだったと思います。

 後ろからうなり声が聞こえてきて振り向こうとしたんですが相手の姿も見えない間にものすごい衝撃がぶ 

つかってきたんです。

 アスファルトの上に倒れこんでしまったのですが、幸い打ちどころがよかったので何とか手をついて立つ 

ことができました。

 そうして下手人と相まみえることとなったのですが、そいつが……。


 エージェント・白鳥:

 大丈夫ですか?


 会津氏:ええ。

 そいつは身長は2m強で、全体的には人型をしていました。

 しかし、頭部が異常に大きくて……ガンダムにズゴックっていますよね、あれみたいな電球型のシルエッ  

トになっていました。  


 エージェント・白鳥:

 なるほど?


 会津氏:

 第六感とでもいうべきでしょうか。

 とにかくまともな存在でないことはわかりました。

 その瞬間のことです。

 反さんが叫んだんです。

 よく考えたらおかしいんです。

 反さんはかばんに入っていたわけで、それが叫んだと認識できるほど大きく聞こえる訳がないんです。  

 反さんは直接心に語りかけてくる―よくRPGなんかで言うでしょう?―、そういうことをしたんです。  

 『私を使って!』

 今からすれば文脈もくそもなくてまったく意味が分からない言葉なんですけれども、その時は何かしっか 

りとした実感があって、私はバッグから彼女を取り出してそれを天にかざしたんです。

 目を開けるとそいつがしっかり見えるようになっていました。

 その時の私は自分が目をつぶっていたこともすぐには気づいていなかったくらいですから、自分の衣装が 

大きく変わっていることよりもいきなり目に入ったそれのほうがまず意識されたんです。

 その頭部の膨らんだ部分は、眼球,でかい目玉でした。

 その巨大な目玉を囲うように小さい目玉が大量にみっちり付いていて、……わかりますか? 妖怪に百目

鬼ってやつがいますよね。

 つまりはあれなんですけど異常なのはそれだけじゃなくて、ガラス管。

 そう、下半身と両肩に何本ものガラス管が刺さってて、ちょうどスカートみたいな感じで。

 それもただのガラス管じゃなくてメモリが入ってる、メスシリンダーとか注射器みたいなやつです。

 それが下半身に大量に刺さっていて、中身も入っているように見えました。

 バイオ1の洋館の地下の研究所ってわかります?

 タイラントがガラス管に入れられてたりするところ。

 それを一つのジオラマにしたような感じに見えました。

 そう、そう見えたんです確かに。

 それで自分の変化に気づきました。

 メカニックみたいだと思いました。

 修理とかする人です。

 白の半袖ブラウスにレザーに鋲を打ったレザーのベストとドレープスカート、足には鉄板を仕込んだブー 

ツ、手には鉄製のガントレットみたいな手袋がはまっていました。

 そこからコードが伸びていてそれが背中の装置につながっていました。

 背中の装置についてはよくわからないというのが実情です。

 なんせ背負っていたので。

 しかしその装置とつながった砲台が二台-っていうんですか?-両肩あたりに一台ずつ浮かんでいまし

た。

 少しつぶした立方体みたいな形の奴です。

 そこまで見てさっきの百目鬼が動き出しました。

 両腕をぬうって上げて、両肩のガラス管から緑色の気体を噴き出したんです。

 体が反射的に動いていました。

 いつもの何倍もの跳躍力が出てたと思います。

 私はそうやって飛びのいてこれまた反射的に両腕を突き出しました。

 このタイミングで何かしらのトリガーを引いたんだと思います。

 両掌から何かしらの衝撃波が出て、それがほとんど減衰しないまま相手に直撃しました。

 頭部の目の玉が潰れました。

 ぐちゃっと音がして。

 さっきの気体に似た色の液体が噴出して、相手はそのまま爆発しました。

 そのあとのことはあまり覚えていません。

 気が付いたら家に帰ってベッドにもぐりこんでいました。 

 エージェント・白鳥:

 わかりました。

 では、お辛いかもしれませんが、今日の話をしていただけますか?

 

 会津氏:

 お構いなく。

 ……今日の昼前のことです。

 南棟の裏の涼しいところを歩いていました。 

 特に行先のない散歩みたいなものでした。

 あの時と全く同じことが起こって、つまり反さんが警鐘を鳴らしたんです。

 何かがくるって。

 空のほうに嫌な気配がしたので建物に入ろうと思いました。

 変身したままなるたけ窓のない、外の空間から離れた部屋に入ったのです。

 南棟の楽器室。 

 音楽室の方には鍵がかかっていたのでその部屋に入りました。

 二度目になりますが、これ以降記憶がありません。 

 気が付けば死んでいた。

 そういう事です。


 エージェント・白鳥:

 わかりました。

 ありがとうございました。

 ご協力感謝します。


<2018/07/■■録音終了>

 [会津氏にはその後クラスB記憶処理を施した]

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