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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第四章 後進は魔王の足並みと共に
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第87話:止まり角、ゆらめく赤と、溢れる深紅




赴くままへと足を動かし、青白い街の中を駆けまわる。

冷たい風はざわつく心を宥めようと私の頬を刺激するのに。

冷静になればなる程に、私の心は怒りの邪炎に乗っ取られてゆく。


狼の様に匂いを頼りに手繰っているのではない。

蝙蝠の様に遠くまで聞こえる聴覚を持っているわけではない。

まして、鳥の様に全てを見渡す羽があるわけでもない。


でも分かるのだ。


私を呼び出した、あの憎い男の必死に走る姿が。

汗をダラダラと流し、押しつぶされそうになっている心臓の鼓動が。

甘美なまでに苦渋に歪む恐怖の顔が。


私の怒りを潤してゆく。



―――そして怒りを宿すこの深紅の魔眼が


「……決してお前を逃さないッ!」


地面を鋭く擦り止める音と共に、目的の場所へとたどり着く。

チョロチョロと流れる水音が静寂の中で木霊し、その合間を縫う様に奥から荒い息遣いが聞こえてきた。

だがそれは……私が望む獲物ではなかった。


「あ……あ、あの……」


声にもならない様な震える声で私を出迎えたのは、酒場で目が合ったあの女の子だった。

私はずっと彼女を獲物と勘違いして追っていた?

そんなはず……でも、たどり着いた場所は大きな外壁で囲まれた行き止まり。


用水路は途切れていて、鉄格子の小さな隙間と流れ込んでいる。

水路から逃げるのも不可能。

探し求める獲物はどこを見渡してもいない。


……取り逃がした?

いや、そんなわけはない。

この私の力が間違いを起こすはずがない。

私の力が失敗に終わる?……そんなこと、そうだと言うのならそれは。


「……チッ……異技能(スキル)か」


……隠蔽系(ハイド)か?

だとすれば、こう暗いと厄介この上ない。


()()()()()()()()よく使ってたけど。

 こういう奴らに限って陰気臭い異技能ばっかり持ってやがって……鬱陶しい」


いや待て……それとも逆にこの子自体が囮の様な役割の特殊な異技能を持ってるとか?

考えにくいか、この子以外に捉えた獲物はいなかった。

それに小鹿の様に震えて座り込むこの子がここまで一人で逃げ切って来たとも考えにくい。

だとすれば、抱え込むなりして彼女をここまで連れて逃げて来て囮として置いていったと考える方が妥当だ。

そして例の足音と気配を消すタイプの隠蔽異技能を使って、この隙に逃げ……。


蜂ノ如き一撃(スピアショット)ッ!!」


「……あぐっ!?」


逃げの一手しか持ち合わせていないと思い込んでいた、それ故の油断。

背後から掛かる嘶きと共に私の胸部から鮮血が飛び散り、素早く鋭利な刃先を抜き取られる。

そして支えを失った身体が地面へと静かに倒れ込む。


「やっ……やった!!ハハッ……仕留めてしまえばただのか弱い女だった様だね。

 無駄にビビってしまったよ、全くっ!!」


優男は額にしわを立て、倒れた女だったモノをボールの如く蹴り飛ばす。

異技能を解いて姿を現した男は恐怖からの解放から、勝利の余韻に浸り出す。


「蝙蝠の様に潜み蜂の様に刺す、僕の秘剣『蜂ノ如き一撃(スピアショット)』の前にはこの化け物でさえこの有様さ。

 やられる前にやった方が勝ちなのさっ!ハハハッ!!!」


「だ……だめ……」


首を小刻みに横に振りながら、座り込んだ女が何かを訴えようとしていた。

優男は振り返り、女を陽気に宥め始める。


「フフッ……もう終わったんだよ。

 なに、君の鷹の目のお陰で相手を油断させる良い位置を割り出せた。

 この礼は……そうだな、今日は取り分け優しく抱いてあげよう。

 ほんとは彼女にもこんな無粋な突剣じゃなく、

 僕の荒ら荒らしい大剣をその柔肌で味わってもらいたかったんだがね……。

 実に残念d……」


「そんなに自信に満ちた逸品と言うのなら、こっちも切り落としがいがあるわね」


あるはずのない声と、あるはずのない化け物の立ち姿に男の笑みは間抜けに瓦解した。

優男は慌てながらも 急いで隠蔽技能を使って姿を消して行く。


「……武装()魔血ノ大爪(ブラッドネイル)


化物が両腕を掲げると、それを纏う様に赤く染まった魔素が大きなかぎ爪を形成されてゆく。 

そして化物は静寂を支配し、深紅の瞳をギラリと右に揺らめかす。



―――ザシュ




肉が抉り取られる軽快な音と共に、片腕を切り飛ばされた愚者の悲鳴が響き渡った。



遅れるのが当たり前になってきた。


今回の内容で色々違和感を感じてもらえる状態は……問題ないです。

過去の掲載を読み返しても答えは載っていないので。

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