第83話:暗闇、笑う下衆と、響くメロディ
エリックの方を見る。
ナイフが刺さっているのは肩、息は少し荒めだがしっかりとしている。
そして、小刻みに身体を震わせている。
不味いのは毒、でもこれは……。
「……流石エリック、ポンコツの癖に相変わらず反射神経は良い様ですね」
眼鏡をかけた男がただの不意打ちをどや顔で誇っている。
ブリプスって言う大男はまだわかるけど、こいつは誰だろう?
多分、前に囲まれた時の大勢の中にいたのだろうが今一印象がない。
と言うか、高々二人相手にまぁ、何人もゾロゾロと……。
「多勢に無勢……それにソレが私に当たっていたらどうするつもりだったのかしら?」
「安心しろよ、当たってもどうせ死にゃあしねぇ!ソマールの麻痺調合の腕だけはピカイチだからよ!
それにちょっと傷がついたとしても、気持ちいところが無事ならそれで十分だからよぉ!ギャハハ!」
頭の悪いブリブリが私が知りたかった情報を全て教えてくれる。
「分かりやすい解説ありがとう、見た目通り相変わらず下品で能無しみたいね」
「あ?」
ブリブリがそのミニマムサイズの脳みそを駆使して、煽りを理解し血管を浮きだたせる。
こっちはそれ以上にはらわた煮えくりかえってるんだけどね。
「ところでさ……」
「あ゛?」
「ちょっと、話の途中で切らないでよブリブリ」
「このアマさっきから調子こきやがって……ぐちゃぐちゃに泣かせてやるっ!!」
「待ちなさい、ブリプス。で?お嬢さん、ところで……何です?」
変態メガーネ君が静止して、私に質問の続きを促す。
こいつは冷静を装ってるが間違いなく変態だな、呼吸を整えようとしてるが若干リズムがおかしい。
気持ちは悪いが油断してくれているのは良い事だ。
「確かジェリドって言うあのキザったらしい親玉がいたでしょ?見当たらないんだけど?」
「彼が直接来ることはないです」
汚い事はやらない汚い主義と。
どうせならこの場にいてくれたら手間が省けたのに。
「最初の美味しいところは俺たち私兵にくれるありがてぇリーダー様ってこったな!」
「いえいえ、彼女なら後の方でも中々に楽しい遊びが出来そうですよ……」
日がゆっくりと隠れて行き、暗闇が私へと覆い被さってくる。
周りの下っ端共からいやらしい笑い声が漏れ出す。
「ごめんなさい、最後にエリックの顔を見てきてもいいかしら?」
「へへっ……観念したみたいだな?
いいだろう、と言うかその方がこっちも楽しめるからよぉ?」
ブリプスを一瞬睨みつけ、エリックへと歩み寄る。
「……ミコトさん、逃げ……」
「……」
「早く……逃……」
小声で話しかけるがエリックには届いていなく。
必死に逃げる様にと私に伝えようとするが、麻痺毒が口すらもうまく動けない様させてゆく。
「ねぇ、ほんとに死んだりしないでしょうね?」
「フフッ……大丈夫ですよ、私の調合は完璧です。
寧ろはっきりとあなたの姿を視聴できるほど、意識はっきりしてますから」
周りの男たちが目の前の道を塞ぎ、何人かがカチャカチャと不快な音を鳴らし始める。
半分は囲んで見張り役ってところだろうか……それでこの人数か。
まぁ、何ともくだらない事に関しては用意周到だこと……。
「言っとくけど私、そんな簡単には泣かないから。寧ろ泣かせちゃうんじゃないかしら?」
「へへっ……安心しろよ、こいつらまで行くまでもなく最高の声を上げさせてやるからよぉ?」
ブリプスが私の顎を持ち上げ、その臭い息を吹きかける。
「じゃあたっぷりと……泣きべそかき散らかせよメス豚ぁっ!!」
不意打ちをかける様に私の襟元へと両手をかけ、服を一気に破り去る。
―――スローモーションが始まる。
男たちの静かな歓声が遠くで上がり始める。
眼鏡男の口角がそれに合わせてゆっくりと上がってゆき。
ブリプスの汚い顔が獲物を前に更に汚く歪ませてゆく。
そして……破れた服の下から、私の真っ白な肌が露わになった。
スローモーションは解かれていき、驚愕の顔と共に彼らの楽しい時間は終わる。
これからは……私の楽しい時間が始まるのだ。
彼らには一つ大事なことを言い忘れていた。
私と相棒はね……対人戦最強なんだ。
暗闇の中、白いツタが踊ると共に……男たちの楽しい悲鳴が空へと響くのだった。
ちょっと用事が重なり、投稿が遅れて申し訳ない。




