第80話:終劇、うっかり喜劇と、ビターな終わり
「私は君と知り合った覚えはないのだが……」
「えっ?いやいや、私です……よーお?……お?」
ここで漸く、自分の顔がいつもとは違った事に気づく。
人間用フェイスとは言え、あくまでも変装中であったと。
と言うか、隣に正体知られちゃいけない人間がいるのにこのミスは酷いっ!
これにはプリニア様も目を皿の様にして私を見ているっ!
誠に申し訳ありませんっ!!
「ご、ごめんなさい。ひ、人違いでしたぁ~……」
「言い訳にしてももう少し何か出ない物か……?
……まぁいい。状況から察するに君……たちが助けてくれたのだろう?」
プリニアの方を向いて制止する白銀の騎士。
私も小娘だがプリニアに至っては幼女……怪しすぎるよねぇ。
「……まぁ、そんな感じです」
「マグダウェル卿、彼女たちは紛れもなく私たちの恩人です。
それにそれがなかったとしても……友人になりたいと思える人々です」
手持無沙汰な右手が痒くもないのに頬をかく。
王女の横顔に戸惑いはなく、白銀の騎士を真っすぐに見定めていた。
「……わかった、いいだろう」
「ありがとうございます!ルディ兄さん」
「お、おいっ馬鹿っ!?」
「あっ……」
「お前なぁ……」
顔を押さえて項垂れるルディお兄ちゃん。
あたふたと私たちにただのニックネームだなんだと言い訳をするうっかり王女。
兄さん呼びまでされるとは……相当に親密な関係なのだろう。
もしかしたら新たな王子を誕生の瞬間を私は目撃していたり?
いやいや、そんなドラマチックな展開になったら過程がヤバいな、うん。
「すまない、申し訳ないが……」
「大丈夫ですよ、今のは心にしまっておきます。ね、プリニア?」
「……ん?いいけど、なんで隠す?」
そりゃごもっとも。
とは言えだ。
「私たちにはわからないけど人それぞれ事情があるんだよ。だから、ね?」
「ん、よくわからないけど、わかった」
「よしよし、良い子良い子」
「むっふぅ~」
頭を撫でてあげると可愛い奇声を上げて幸せそうな顔をするプリニア。
……萌える。
出来れば変装用の仮面じゃないプリニアで見たかった……でも可愛いけど。
「……助かる」
「いえいえ……それじゃ、私たちはこの辺で失礼します」
「……えっ?」
王女よ、そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。
私もせっかく良き友人が出来た手前すぐにこの場を去るのは忍びないのだ。
しかし、しかしだねぇ。
「ごめん、姫さ……アリエル。気持ちとしてはあなたとゆっくり話したい気持ちはあるんだけど。
私たち、家主に黙って出てきた身でして……早く帰らないと怒られちゃうんだ……」
「ん、早く帰らないとマイ……」
慌ててプリニアの口を塞ぐ。
プリニアさん、うっかりアリエルの真似はしなくていいからっ!
てか、私たちの素性がバレるのはうっかりじゃすまないからっ!!
「……お互い大変だな」
「ハハハッ……ま、そういうことなんで。後の事は任せます、マグダウェル卿」
「ふっ……わかった」
「そうでした。マグダウェル卿、街の南口まで馬車をお願いします。
あと……お医者さまも」
「……わかった、重傷の者はいるか?」
「いえ……それだけが不幸中の幸いでした」
「そうか、すぐに手配しよう。詳しい話は治療を終えてからだ」
「……はい」
出来ればこの場に残って支えてあげたい。
だが、それも彼に任せるべきだろう、部外者は下手に首を突っ込むべきでもない。
「それでは私たちはこれで」
「あぁ、ありがとう」
これにて一件落着。
いや、それでも少し苦い……違うな。
アリエル王女達にとっては後悔の残る終わりとなった。
前回完全にお休みして申し訳ない。
体調ガッツリ崩してしまって。
休んでしまった分はどこかで余分上げたいと思ってます。




