第78話:新風、追われる不運と、希望の向かい風
「ふきゃぁっ!?」
「あっ……ごめんごめん!怖がらないで!ワタシタチ、何モ悪イコトシナーイ。」
「デア……逆に悪い人っぽい。」
おかしい……ピエロお面からファンシーなウサギちゃんお面に変えたのに。
この世界だとウサギって可愛いの代名詞ではないのだろうか?
見てるだけで癒されるのに……。
「とっても可愛いはずなのに……おかしい。」
「デア……そういう問題じゃないと思う。」
「いえ……その、失礼いたしました。私たちを助けてくれた……お方?ですよね?」
「あ、うん、そうそう。」
どうやらあのポンコツ君とは違って話の分かる子な様だ。
これで話を進められる。
「それでね、私たちもそこまで首を突っ込む気はないんだけどさ。
まぁ、程々まで教えてもらえるなら、それなりには助けてあげてもいいよって言うね?」
「いえ、そんな……そこまでして頂くわけには……。」
「そうなると彼女たちは置いてくしかなくなると思うんだけど?
……あなたはそれでいいんだね?」
「それは……。」
関係のない人間が首を突っ込める程軽い話ではない、それはわかった。
かと言って、手負いのメイド達を連れてく程の余力だって持ってない。
ならば、私たちの手を借りないというのは彼女たちを見捨てるという事と同義の事だ。
「あなたはどちらを選ぶの?」
彼女が考えるに要した時は……倒れている彼女たちを見返す、それだけで十分だった。
そして私が彼女をどこまで助けるかも、その時決まったのだ。
「なるほど……ガチもんのお姫様でしたかぁ……。」
「ガチモン?いえ、私はアークランドの姫ですが?」
「あ、ごめんなさい。今のは気にしないで、方言みたいなもんなんで。」
「姫様っ!!私はまだ納得できていませんっ!!!」
「……あなたは黙ってなさい。」
「そうだぞ、そうだぞー。」
「貴様っ!!!」
「カスケスっ!!いい加減にしなさいっ!仮にも命の恩人ですよっ!!」
「し、しかしですな……。」
流石のポンコツ君ことカスケス=フォルニッシモ君もお姫様の一喝の前ではたじたじの様だ。
しかし、一国の姫だったとはねぇ……どこぞのお嬢様ぐらいの案件が良かったんだけどなぁ。
まぁ、私についてる神様は邪神だってのはわかってるんで、もう驚きも薄いんですけどね。
「カスケスの無礼、本当に申し訳ありません。
今この身で返せるものがないのも、口惜しい限りです。」
「そりゃこの状況じゃ返せるものなんて何もなくて当然でしょ?
カスケス君は口を動かす元気があれば、護衛中に集中して黙って欲しいところではあるけど。」
「……ぐっ!?」
「恩なんて返せるときが来たら返すでいいんだよ。それまでは太々しく恩を受けてればいんだって。
お姫様なら、その程度の傲慢さの一つは持ってないと、ね?」
「傲慢さ……ですか。きっと私に足りなかったものですね……だから兄は……。」
「アリエル、後ろ向きよくない。」
プリニアさんの華麗なる援護。
昔のプリニアの事はよくわからないが、知り合ったころと比べて少し顔つきが変わった気がする。
初めて会った時はなついてくれてはいたが、どこが後ろ暗さがあったというか、そんな感じだった。
人の良い成長を見れるというのは……とても気分の良い物だ。
しかし、アリエルちゃんも不憫な子だ。
腹違いとは言え、実の兄のロ―ドランド=アークランドに汚名を着せられ、追われる身になろうとはね。
……こんなに良い子なのに。
いや、良い子だからか……どの世界でも権力社会ってのは悪い人間が得をするのだ。
「ところでアリエルちゃん、例の匿ってくれる貴族様ってのは本当に信用できるのかね?」
「それは大丈夫です。彼は昔からよく知ってる人ですし、私にとって本当の兄の様な存在ですし……。
だから大丈夫だと……思うのですが……。」
「私もこれ以上悲しい結末は見たくないからねぇ、うん、信じようよ、ね?」
「……はい。」
今更彼女たちを放り投げるわけにはいかないけど、これ以上悪い方向に自体が転んだら……凄く困る。
私も安心が欲しかったわけだけど、どうやらこれから先は神頼みになってしまうようだ。
アリエルちゃん良い子なんだけど……政治には向かなそうだなぁ。
そのお貴族様とやらの妾にしてもらって、平民として隠れ住んだ方が彼女にとってはいいのかも。
「あ、今更けどさ、そのお貴族様ってなんて名前なの?」
「はい、マグダウェル家の……ごめんさい、ファーストネームは口止めされていて。」
「あ、そうだんだ。なんか変わってるね。」
マグダウェル……?
どっかで聞いたことあるような?
いや、気のせいか。




