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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第三章 前進は異世界宿屋と共に
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第64話:デアクレアと言う女





「おっと……すまぬ。もう一人が少々過激な言い方をしたのう。」


「……もう一人?」


もう一人。

その言葉が意味する事が、このグラウ老人の豹変と暴言に繋がったと信じたかった。

でなければ、突然に放たれたあの言葉を捨て置くことなんて出来ないのだ。


「今の言葉は本当のワシから出た言葉ではないと言う事じゃ。

 じゃからの。ナチュラルに剣の柄に手をかけるのは辞めてもらえんかの?」


逆にそのことはグラウ老人に言い返したいところだ。

そんな話を聞かされて、あなたに対して敵意を向けずにいられるものかと。


「それは、もう少しちゃんと説明していただけないと飲めません。」


豹変したもう一人のグラウ老人とは何なのか。

そして仮にそうだとして、放たれた言葉にどんな意図があったのか。

それ次第では、グラウ老人は僕たちの敵になるかもしれないと言う事なのだから。


「どこから説明すればいいものか。そうだのぅ……。

 この世界のルール、それに縛られているのがワシたちデモニアの血統と言う事からか……の。」


「世界のルールですか……滅ぶとか言っただけに話の内容は壮大ですね。」


「トゲがあるのぅ……まぁ、いきなりこんな話ばっかじゃからの、致し方もないかのう。

 じゃがの……デアクレアとプリニア、この二人が魔王の幹部だと言う事実は見逃せまい。」


それは知っていた。いや、悪い方に信じたくはなかったと言った方が正しいか。

プリニアさんと初めて会った時、確かにデアクレアと言う人物と彼女は魔王の幹部であると言った。

だがそれは、プリニアさんがミコトさんの事を勘違いしているだけの可能性だってあった。

そして……ミコトさんが見せた『狂人病』が勘違いの一言では済ませなくさせていた。


「だが……それを言うならあなたはどうなんですか?」


どうにかして僕は、デアクレアと言う女性がミコトさんであると認めさせたくなかった。


「当然の質問じゃ、ワシも子の見た目、魔王の幹部っぽさが満点じゃからのう。

 そして……それに対する答えはイエスでありノーじゃ。

 

 ワシは魔王貴族『デモニアの血統』としてこの世界で生まれ、以前は魔王領にも身を置いていた。

 じゃから、魔族側の人間だったことは確かじゃ。

 ……魔王軍の誘いは断ったがの。」


そんな話を簡単に信じられるほど、僕の心はあなたに対して敵意を緩めているわけではない。


「あなたのその言葉を完全に信用するのなら、剣柄から中指程度は外してもいいですが。」


「手厳しいのう。じゃが、信用してもらう必要はない。

 ワシがお主に知って欲しいのは、我らデモニアの血統の真実とその脅威についてじゃからの。」


「ならばさっさと本題を話していただきたいっ!!

 あなたの先程の発言のおかげでこちらは余り冷静ではないんですよ。」


「……わかった。では端的に話そう。

 デモニアの血統は異世界の記憶を引き継いだ人間であり、異世界の記憶を失った精神患者じゃ。

 そして、その者たちは世界を制するほどの強力な力を持っており。

 その中で最も強力な力を持っているのが魔王なのじゃよ。


 そして……その魔王が()()()()()()()()()()()……それがデアクレア=デモニアなんじゃ。」


やめろ……そんな話を事実だなんて認めない。


「……異世界?それに記憶を引き継いでるのに失ったって、もう意味が分からない。

 第一、魔王が自分の幹部を一生懸命に探してるってそれこそ意味が分からないっ!!」


「じゃろ?じゃから端的に話せる話でもないんじゃよ。

 少しはゆっくり話を聞いてくれる気になったかの?」


何処から何を考えていけばいいのか分からなくなってくる。

だが、理解しなければミコトさんが危険に晒されていくと言う話を、理解できないで終わらせるわけにもいかなかった。


「……。」


「それでいい。では最初に、我々がどのようにしてこの世界へと転生したのかを説明しよう。

 その答えがお主が抱いている疑問の多くを紐解いてくれるはずじゃ。

 我々転生者はの……。」


混乱する思考を必死で抑え込む。

大事な人を守るための情報を得るために、得るため……。



「皆それぞれ何かしらで精神を患った……自殺者なんじゃよ。」



「……は?」


恐れていた悪い内容ではなかったが……理解出る感じの内容でもなかった。


「まぁ、自殺なんて言葉はこの世界じゃ寝耳に水じゃよな。

 じゃが、わしらの世界ではそれが割と普通じゃったんよ。

 我らの世界は戦がのうなった代わりに、そういう悲しい事で溢れた世界でもあった。」


グラウ老人の話は突拍子もなく、おとぎ話の様な内容ではあったが。

頭に浮かぶ、時に明るく、時に頼もしく、そして時にそこはかとない陰りを見せる女性は……。

そのおとぎ話から来た住人であるような気がして……仕方がなかった。


「そしてわしらデモニアの血統は、その中でもより強烈な精神負荷を前に自殺した人間なんじゃ。

 じゃからの……記憶は引き継げてもそのままの状態での維持は出来なかった。

 維持できてしもうたら、もう一度自殺しかねない人間たちだったのじゃよ。」


「ならどうして、あなたはそのことを知っているのですか?」


「何故なら我々は記憶を忘れたのではなく、記憶を押し込め……再構成したからじゃ。

 つまりの……我々は前の記憶の人格と、この世界で作られた人格。

 

 二つの人格を持っておるのじゃ。」


「……。」


目の前にいる老人は突拍子もない話を何の信用も、証拠もなく話している。

それは分かっている……分かっているのだ、でも……。


「もう色々察しておろう。さっき見せた狂気がワシのもう一人格であり。」


これより先の言葉を僕は聞きたくはなかった。

聞いてしまえば僕は……。



「魔王が新たな魔王を生み出すために求める母体、魔王軍最強の軍師。


 デアクレア=デモニアこそが……ミコトちゃんにとってのもう一人格なのじゃ。」

 


彼女をただの善良で無害な人間であると……心の底から思えなくなってしまうからだった。



初めは短編で終わらせようとは思っていた。(終わるとは言ってない)

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