第63話:動き出す悪魔の砂時計
恋の思い出に、ほのぼのと翡翠の乙女が揺られている頃。
生真面目な男は一人。
真実を知るために……その重く古びた扉を開いていた。
「おぅ……よう来たの。今回は……デアクレアちゃんは連れてきておらんな?」
グラウ老人は意味ありげに、ミコトさんの事を『デアクレア』と呼ぶ。
そのたった一言に心を揺さぶられながらも、私は老人が用意した椅子へと促される。
……デアクレア。
僕が知っている限りそれは、プリニアさんがミコトさんと勘違いした人物であり。
ミコトさんが持つ過去の名前と言う、可能性の一つだった。
そして、グラウ老人の言葉はその不安を事実へと昇華させた。
「……。」
「おろ?もしかして、その名前については知らなかったかの?
プリニアちゃんとはもう遭遇してると思うて、知ってるものかと思ったんじゃがの?」
「ミコトさんが忘れ去っている過去……とだけは何となく。」
「……ふむ。」
「それよりもグラウ老人。
どうして……プリニアさんと戦いになったことを知っているのですか?
ミコトさんの話では、プリニアさんの事はあなたには教えていなかったはずですが?」
グラウ老人とミコトさんは同郷の繋がりがあった事は聞いている。
しかし、知り合いと言う訳でもない。
プリニアさんの事についても、ミコトさんと事前に話し、これから話す予定でいた事項だ。
「教えてください、グラウ老人。
何故あなたは、プリニアさんの事を知っているのですか?
何故あなたは、デアクレアと言う、彼女が忘れ去った過去を知っているのですか?
何故あなたは……わざわざ僕と言う厄介者に真実を伝えようとしているのですか?」
グラウ老人はその瞳の見えない暗い闇から、粛々と僕を見定めていた。
そして……。
「これから話すことはミコトちゃんがいつか知るべき真実であり。
そして……お主が決断しなくてはならない義務だ。
俺も酷だとは思っている。
だが、避けては通れない……お前が平和を願う末裔ならば……な。」
……末裔?……平和?
予想よりも遥かに大きく膨れ上がっていく話の行く末に、僕の心は踊らされる。
だがそれでも老人の言葉は止まらず、最後の言葉が僕の思考を白く染め上げた。
「勇者の末裔よ……デアクレア=デモニアを凌辱し、子を孕ませよ。」
「…………は?」
グラウ老人の放った狂気に満ちた言葉は、まるで魔王の悪への勧誘であり。
怒りすらも覚えた僕は、すぐにこの馬鹿馬鹿しい話をくだらないと人蹴りするはずだった。
だが……。
「さもなくば……この世界が滅ぶんだよ。」
続いていく底知れぬ真実の前に……僕の心は揺らぎ、黒く染まっていったのだ。
文が短いのはすまねぇ、でも内容は一番濃いと思うんでっ!




