第62話:寄り道、見知らぬ鎧と、フードの女
「またも自分の力を過信しすぎてしまったかぁ……。」
エリック御用達、ドーブさんの鍛冶屋を出てから半時ほど。
屋台なんて引きながら移動するだけで簡単簡単とぬかっていた私。
ドーブさんは本当に一人で運べるのかと心配されていた。
何ならエリックも、自分が付き添える日にしないかと過保護っていた。
だが、それでも私は平気であるとそれを断った。
『そして、私は今へとへとになって木陰で木にもたれかかっている!!』
いやほんと、人の言葉に耳を傾けろと言う言葉を実感しているよ。
自分の身体が元とは違うひ弱な女だと言う事も忘れてはいけないな。
まぁ、元の身体が屈強だったかどうかも覚えてないのだがね。
「家までまだ3分の2は残ってるよねぇ……うへぇ……。」
ドーブさんの鍛冶屋は少し町はずれにあり、現在は霧の濃い林の真っただ中だ。
ただ、ここは『屍の森』とか言われていてモンスターは全くでないそうなので休んでいる。
だが、モンスター以外の遭遇はあるわけで……余り無防備に休んでるわけにもいかない。
とは言えだ……身体の方は休まない事には動けない。
気候は現実世界で言う秋辺り、どちらかと言えば涼しい訳だが。
この美しい顔を人目に晒さないためにフードを被っているので汗はダラダラ。
身体は汗濡れでムレムレで、フードを脱げば誰も彼をも悩殺必至だ。
こんな状態で顔を晒してしまおうものなら、良からぬ輩でなくても攫いに来るだろう。
何てったって美少女ですからねっ!(どや顔)
「あぁ……休んじゃダメだとは分かっているのに、動けないこの辛さ。」
「そう思うなら、一度鍛冶屋に戻ればいいだろう?」
「ぷぎゃっ!?」
油断していたとは言えさ、真横に鎧騎士がいるのは怖すぎるわっ!!
え、何コイツ……てか誰っ!?
いや、鍛冶屋がどうこう言ってたからドーブさんの知り合いな気はしてるんだけどさ。
でも、こんな人けのない林の中で白銀のフルアーマー騎士とか怖いんですけどっ!?
「すまない、気配を消すのが癖になっているのを忘れていた。
君がドーブのとこで運送木車を持って行った子でいいのだろうか?」
「あっ……はい。」
あ、やっぱドーブさんが送り込んでくれたと言う事か。
「それでその……あなたは?」
「あぁ、ただの常連だよ。どうやら……ドーブの心配が当たったようだな。」
「うっ……ぐうの音も出ません……。」
ドーブさん……ほんと、助かります。
実際、助けが来なかったら、ひたすら立ち往生していた自信がある。
「男でもないのに必要のない見栄は張らない方がいい。
どれ、木車は私が持って行くが、君は歩けるか?何なら休んでいっても構わないが。」
「大丈夫です。それさえ何とかなれば、自分で歩けます。」
「そうか。なら行こうか。」
「助かります。」
見知らぬ男は顔も見せぬ冷たい仮面で私を見つめていたが
差し伸べられた白銀の手の平は冷たくも、温かく。
その手を受け取って、私たちは街へと共に歩を進めた。
―――もう結構な間、彼とは特に会話をせずに一緒に歩いていわけだが……。
彼は知り合いの知り合い、そして私の場合は更に知り合いつまりは他人なのにもかかわらず。
何となく、彼と一緒に歩いているこの状況が……不思議と心を和ませる。
と言うか、自分でも警戒心を解くのが早すぎてないかと冷静に焦ったりもしたが。
もしかしたら、歩いている彼の後ろ姿を誰かと重ねているのが原因なのかもしれない。
まぁ、当の誰かさんは別れてからもう大分経っているわけだが……。
少しぐらい顔を見に来てくれてもいいのではないだろうか?
確かに行きずりの関係でしかないし、向こうは忙しい身の上だし。
やらねばならぬ事があるのも分かる。
でもさ、それでもさ、少しぐらいさ……。
探して会いに来てほしいのが乙女ごこ……何が乙女心だよっ!?ミコトちゃん!!
「はぁ……。」
「……ん?どうした?疲れたか?」
「あっ……いや、その……ごめんなさい。」
「???」
フード越しでそこまで顔は見えないはずだが、それでも分かるような反応だったのかな?
白銀の騎士様、いや……白紳士さん、何か申し訳ない。
「何というか……思い出して何とかと言いますか……。」
「お、おう……。」
あぁ、アイツもこんな感じで言い返しそう。
……やっぱ何か親近感沸くなぁ。
声は仮面越しなので似てるかはわからないが、背丈なんかは同じくらいかもしれない。
「どことなく知り合いに似ていたもので……ほんと何といいますか……。」
「……そうか……だが余り見知らぬ男には油断しない方がいいと思うがな。」
「……ご忠告、痛み入ります。」
あぁほんと、良い人。
「しかし、余程その男に私は似ていたのだろうな。
それ程までに信頼されてしまうのも、俺としては嫌な気はしないが。
まぁ、それでも。もう少しは周りには気を張っていた方がいいと思うぞ?」
「え?……あっ……。」
白紳士に言われて初めて、自分たちが街の跳ね橋の上にいたことに気づいた。
いやほんと……色々恥ずかしくて仕方ない。
「信頼ついでだ、君が構わなければ目的地まで送って行く。」
「いや、流石にそれは……やっぱ、お願いします。」
「フッ……了解した。」
快く引き受けてくれる名も知らぬ白紳士は本当に良い人で。
……迷惑とも思いつつ。
想い人を感じさせてくれる彼と……もう少しだけ長くい歩いていたいと思ってしまうのであった。
最近エリック君との絡みは多けれど。
主人公の心は一途でありたい。




