第60話:訪問、新たな出会いと、這い進む計画
「こんにちわぁ~……。」
初めて足を踏み入れる店と言うものは、どうにも弱腰になる。
特に、一人の時は尚更だ。
と言っても、エリックの馴染みの店なので怖がる必要もないのだが……。
いや、常連のエリックだから良い顔をするだけで、初見は冷たいかもしれない。
うん、期待してがっかりするのは嫌なので警戒していこう。
……。
……こういう時、自分は日本生まれなのだと凄く実感する。
「……。」
と言うか、挨拶したのに返事が返ってこない。
声が小さかったかな?
「こ、こんにち……。」
「おう、いらっしゃいっ!!」
「ぴゃあっ!?」
まさかの背後からの奇襲に、生まれて初めて出すような声をあげる。
「おぅ、驚かせちまったか。いや、わりぃわりぃ。」
少しだけ申し訳なさそうにハニカムのは、エリックと同い年くらいの短髪の青年だった。
この青年がここの店主……なのだろうか?
異世界だと見た目で年齢を判断も出来ないのかもしれない。
「ところで君はお客さんでいいのかな?
親父に用があるなら、今ちょうど手が離せなくてさ。
もうちょっとしたら終わるとは思うけど、用なら俺が聞くよ?」
あぁ……そうだよね、息子さんか……まぁ、そりゃそうだわ。
異世界だからと変に勘ぐってしまう、僕の悪い癖っ☆
「いえ、そう言う事ならば店内も少し見たかったので待ちます。」
「ん?もしかして君、冒険者なのか?」
「えぇ、まぁ……と言ってもまだ駆け出し程度ですけど。」
そう私が言うと、青年の顔つきが真面目になり、私の肩を両腕でがっちりと掴んだ。
「悪いことは言わねぇ……冒険者はやめときな。
いや、別に君が女だから向かねぇとかそう言う事じゃねぇんだ。
ただ、君を見たら絶対良からぬ事を考える連中が集まってくるっつぅか……。
いや、まぁ……冒険者に憧れる気持ちは俺にもよ~くわかるんだけどよぉ……。
そうだ!俺の親友にエリックって奴がいてよ、そいつと組むのはどうだろ?
あいつなら信用できるしよっ!どうだろう!?」
何というか……。
人のよさそうな青年ではあるが、色々段階をすっ飛ばしてしゃべる人だな。
取り敢えず、エリックを親友と呼ぶのなら信頼で来る人間だとはわかった。
と言うか、エリックが冒険者になって信頼してくれる辺り、良い友人じゃないか。
どうして、あぁも腑抜けた男になっていたのだ?
いや、それだけ前のパーティのクソ共がクソだったと言う事か。
「親切にありがとう。でも、もうエリックとは既に組んでますよ。」
「……え?」
「エリックから聞いてないですか?改めまして、ミコト=ミヤウェーって言います。
こちらの鍛冶屋さんともお付き合いさせてもらう予定なので、よろしくお願いします。」
「えっと……待ってくれ。いや……そういうことか。
え!?じゃあ、最近一緒に住み始めた師匠って……。」
師匠って……外だと私の事をそう呼んでるのか。
敬ってくれてるのは嬉しいけど、天才君に言われるとなんか……なんだかなぁ。
「多分、私の事だと思います。
師匠って言うのは過分に言われている気がしますが。」
「そっか、そっか……あの野郎。
落ち込んでると思ったらこんな美女を垂らし込んで。
マイノちゃんでは飽き足らず、ハーレム作りとはいい度胸じゃねぇか……。」
いや、マイノちゃんは確かに可愛いが対象年齢としては低すぎでしょう。
と言うかそれでOKならプリニアもいるし。
……まぁでも、可愛い女の子に囲まれているという意味ではハーレム築いてるのか?
「あぁでも、別に私たちそういう関係じゃないで……。」
そう私がフォローする前に彼の姿は消えていた。
てか、ちょっと気を逸らしたとは言え、いなくなったことに気がつかなかったのか。
類は友を呼ぶとは言うし、あの人も結構な手練れだったり?
「帰ったらエリックに聞こっ。」
私は切り替えて店内を物色し始める。
丁度、私以外の客もいないし、店の人の目が今はない。
つまり……例の計画を実行するチャンスでもある。
エリック、お前の犠牲は無駄にはしない!
「シャッハ……索敵記憶。」
今の私は少し悪い顔になっているかもしれない。
別に泥棒とか、そんな悪い事をするつもりはないと思う、多分。
どのみち、シャッハ君の力を引き出すためには致しかない犠牲なのだ。
お金が入ったら何かしら還元するつもりだし……それで、許してもらおう。
そう心の中で申し訳程度の懺悔をしつつ。
私はシャッハ君がこの店の武器に絡みついていく姿を眺め、ほくそ笑んでいた。




