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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第三章 前進は異世界宿屋と共に
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第58話:ハイエナの行進、垂れ流される汚物と、汚れなき白銀





酒気が漂う薄暗い店内。

昔は傭兵たちで賑わっていたその場所も、今は給仕すらいない寂れた酒場となっていた。

安さだけが売りになったそんな酒場で、ゲスな笑いを放つ一団が静けさを乱す。

4人の男たちは汚らしく、そして豪快に飲み食らいながら談笑していた。


不意に奥にある扉が静かに開き、それ共に男たちが黙り、そして卑しく笑う。

姿を現したのはこの酒場には似合わぬ小柄な女性だった。

美しく整っていたであろう長い髪は無残に乱れ。

慌てて気直したであろうその服の肩から、艶めかしい肌が露わになっていた。


「ようやくお目覚めか。お帰りはあっちだぜ?ゲハハハハッ!!」


四人の中で一番の大男がそう笑い飛ばす。

女は顔を歪ませ、悲しさと悔しさの入り混じったその顔で睨み返す。

そして、そのまま涙をこぼしながら駆け足で店を立ち去って行った。


女が通り過ぎて行った後に鼻に届く汚辱の香りに店主の顔が歪む。

罪悪感から目をそらす店主を見て、小柄でひょろい男が口を開く。


「おいおい、マスター。

 ちゃんと笑顔でお見送りしなきゃお客様に失礼だろ?ギャハハハッ!!」


「ロデロそう言ってやるなよ、マスターの細やかな良心なんだからよ?

 ゲハハハハッ!!」


大男こと、『銀色の風』の副団長ブリプス=イーノックが茶化しを入れる。

数少ない周りの客は、この状況をいつもの事の様に受け流していく。

中には同じように静かに薄笑い人間すらもいる始末であり。

この一連の空気が、この店の治安の悪さを物語っている様だった。


「二人ともやめましょう。

 仮にも銀色の風なのですから、風格を乱すような下品な行為は慎んでください。」


眼鏡をした男がゲスな笑いを垂れ流す二人に釘を刺す。


「なぁ~にが、「二人ともやめなさい」だ。

 お前が一番えぐい事してやがった癖によぉ?鬼畜変態が常人ぶってんじゃねぇよ!」


「あれは美しさを引き出す美学です。変態の一言で片づけられてしまっては困りますね。

 変態と言うのなら、見ているだけで満足してる隊長にこそ相応しいでしょう?」


「急に僕に振るのはやめてくれないかな?ソマール。」


銀色の風の団長ジェリド=アーネストは参謀のソマールに対してやれやれと眉をひそめる。


「それには同感だな。

 そもそもあんなに一番乗りにこだわってた奴が見る専とか気でも狂ったのか?」


「脳筋のプリプス君に言われるとはね……。別にたぎる気持ちがなくなったとかじゃないさ。

 寧ろご馳走のための断食ってところかな?」


ジェリドは整った顔を崩し、邪悪に染めていく。


「あぁ、エリック君の女か。

 抜けてくれた上に女まで献上しに現れるとは、いい後輩を持ったよなぁっ!」


「全くだね。しかもあれほど極上な献上品なわけだからね、感謝してもしきれないさ。」


「それで?そろそろ刈り取りに行くんすか?」


仲間に対してはごまをするロデロに、ブリプスが前髪を鷲づかむ。


「何てめぇ調子乗って話題に入ってきてやがんだ?あぁん!?」


「あ、あだだだだ。す、すいやせん!」


「やめろブリプス、ロデロ君が可愛そうじゃないか。」


ジェリドの言葉に大人しく矛を収めるブリプス。

この一連の流れが彼らの上下関係を明瞭にしていることがよくわかる。


「ちなみにその答えに対しては、もうちょっと待ちたいと言ったところかな?

 もっと貯めて、極上の解放を味わいたいんでね……。」


「美学ですね。」


「なんでも美学にしてるんじゃねーよ、鬼畜変……。」





―――その言葉を遮るかの様に、店の扉の鈴が鳴る。

 

入ってきたのは見せに似合わぬ白銀のフルプレートを着た長身の男だった。

一目でこの場のルールを知らぬ部外者だと気づいた店主が慌てて静止させようとする。


「あ、あんた。悪いが今は貸し切り中で……。」


「そうだぜ兄ちゃん?

 悪いがここはあんたみたいなお上品な戦士様が来るような場所じゃねぇからよ? 

 さっさとその青いケツを向けて帰んなっ!!」


息巻くブリプスに、白銀の戦士は表情の見えない兜を傾ける。


「先ほど、少々変わった格好の女性を見かけたものでな。

 この店から飛び出してきたのではと気になった次第だ。」


白銀の戦士は抑揚のない声で兜の奥から尖った瞳を光らせる。


「生憎、その答えに対して返答できることは何もありませんね。

 それにここには我ら銀色の風がいますし、何もなかったと我らが保証いたしたしますよ?」


太々しいソマールの物言いに、白銀の戦士は黙り込む。


「そうか……よくわかった。

 店主。気持ちはわかるが、深入りすれば貴様も同罪だ。くれぐれもそのことは忘れるな。」


白銀の騎士はそう言い放つと黙って店を立ち去っていく。




「お前たち……やめろ。」


白銀の騎士を追おうと立ち上がるブリプスとソマールをジェリドが制止する。


「なんだ?ビビってんじゃねぇよなぁ!?」


ジェリドの冷めた眼差しが、ブリプスの熱気を凍らせる。


「得体のしれない相手と言うのは無闇に手を出すものではない。

 それが、この業界で楽しくやっていくコツだといつも言ってるだろう?」


「だ……だがよぉ……。」


「とにかく、今日はアイツのおかげで気分がそれた。お開きにするぞ。」




今日もこの静かにも歪んだ田舎の町で。

ハイエナたちはよだれを垂れ流しながら、静かにそして嫌らしく町の治安も汚していくのだ。


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