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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第三章 前進は異世界宿屋と共に
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第55話:勇者語り、不思議な老人と、秘めたる血




「つまり……あなたは敵ではないと言う事で良いんですよね?」


「そうじゃ、わしは取り分け誰かを傷つける気はありゃせん。

 まぁ、ちいとばかし恵んでもらおうとはしたがの。」


そう返答するご老人は、白い骨を器用に歪ませながらカッカッカと笑う。

ネクロマンサーと呼ばれる上級魔族を前に、冷静でいられる自分が不思議だったが。

このご老人の憎み切れない雰囲気こそが、そうさせているのかもしれない。


「状況は理解できました……目の前に状況については理解しきれてませんが。」


「それはテレビゲームの事かの?それともそれに夢中になっているチビ坊主の事かの?」


「ついでに言えば、今ここにいないミコトさんも含めてですね……。」


「カッカッカ!分らんことだらけで大変じゃのう!

 では、悩める若者に老いぼれが一つだけ教えてやろう。

 お嬢ちゃんなら、入り口にある本を吟味しに行ったからもうちょっとは戻ってこんぞ。」


「本……ですか?」


「何、先行投資って奴じゃよ。

 本をいくつか渡す代わりに、それで得た利益を一部もらうと言う手はずになっての。」


ここは古本屋……なのかな?

でも、本を渡して得られる利益って何なのだろうか?


「今一、話について行けてないのですが……。」


「ん?お主ら、飲食店始めるためにあちこち回っておったんじゃろ?」


「あぁ……本ってそうい事ですか。」


多分、探していた塩辛い物とやらについての助けになる本があるのだろう。

となると、ちょっとではなく当分は戻ってこなそうだ。


「わしが300年近くかけて調べ上げた秘密のレシピ本なりが諸々あるからの。

 鬼に金棒じゃぞぉ?」


「……300年。

 失礼しました。では、かなり高位なお方と見受けしますが……。」


口ぶりから。ご高齢だとは思ってはいただが、やはり魔族となると年齢のスケールも大きい。


「カッカッカ!何、無駄に長生きしてるだけじゃて、かしこまらんでもよいぞ?」


「恐縮です。」


骸骨の老人は急に真剣な顔になり、僕をじっと見つめる。


「ふむ……謙虚で、真面目で、冷静。

 それでいて、わしを見ても気後れもせんし、肝も据わっておる。

 将来有望な若者じゃのう。」


「いや、そんな大したものでは……。

 あなたについては、多少知識もありましたし……。」


「それは……わしがネクロマンサーと言うのも分かっていたと言う事かの?」


「……はい。」


「……マジか。」


「え?」


老人らしからぬ口調に思わず驚く。


「いや、すまん。中々に衝撃的な事実だったのでのう。

 思わず、昔の自分が出てきてしもうたわい。」


老人は今度は穴の開いた目を細め、僕を見定めるかの様に睨みつける。


「エリックよ。それがどういう意味を持つのか、お主は分かっているのかの?」


……どういう意味。

つまりは……どういう意味合いを持って()()()()()()()()()と言う事だろう。


「意味は……重々承知しているつもりです。

 ただ……僕には『この血』で何かをどうするかなんて考えはありません。

 僕は血に縛られず、ただのエリックとして生きている。それだけのことです。」



「お主にそのつもりがなくても、使命が……それを許さぬのではないのかの?」




―――空気が張り詰める。


老人の背後から垂れ流される底知れぬ冷気が、僕の身体を縛り付け、震え上がらせる。


父から聞いてはいたが、これが……魔族と対峙すると言うことなのだろう。

だが……。


「生憎、僕の妹は人外種でして。

 ミコトさんに出会ってから魔族の知り合いも出来てしまいました。」


「じゃがの……。」


「それに、僕は『この血』を受け継ぐほど、人間が出来てるわけではありません。

 大事なモノのためなら、同族の血が流れようが構わない。

 ……その程度の男なんですよ。」


反転して流れる温かな空気が、身体の緊張を解していく。


「お主……見かけによらず、非情そうじゃの?」


「ハハッ……かもしれませんね。

 と言っても、そもそもこんな会話を出来るほどの実力なんてまるでないんですよ。

 もしも危険が迫っても、みんなと一緒に別の場所に逃げるだけだと思います。」


「実力がない……か、ちいと謙虚過ぎはせんかのう?

 少なくとも、お嬢ちゃんと出会ってからは何度も危険な目には会ってるはずじゃ。」


「えっ……?それはどういう……。」


「残念じゃが、これ以上は時間切れじゃ。」




―――そう老人が告げると、扉が閉じる音と共に件の彼女が嬉しそうに駆けてくる。


「グラウの爺ちゃん!この魔法についての本さっ!私にも使えたりしないっ!?」


骸骨老人の話を聞きながら、大げさに落ち込む彼女を見る。

僕はその様子を呆れつつも、愛おしく眺めてしまっていた。


そうしていると骸骨老人が僕の間抜け顔に気づき、少し恥ずかしくなる。

そして骸骨老人は落ち込む彼女を置いて、僕に小さな何かを手渡してくる。


「これがあればもうわしの術に操られることはないでの。」


……なるほど。



「じゃからの、()()来ると良い。」



僕はグラウさんの言葉に静かに頷き、聞きそびれた話の重要性を理解する。

そうして僕はこの話を胸にしまい、落ち込む彼女を連れてグラウ邸を後にした。


エリック君の設定は、最初からぶれてない予定調和。

投稿時間が遅いのも、ゴールデンウィーク故の予定調和。

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