第50話:調査、豊かなエルダと、甘い食べ歩き
「エリック、これほいひいねっ!」
「エルダサンドがお気に召したようで良かった。
やはり、これを食さなくてはエルダは語れませんからね。」
「んっ……。ソースって概念があったことにまず驚きだよ。
でもおかげで……ソースが開拓で一山当てるのは難しくなったけど。」
私たちは今、この田舎街「エルダ」の市場区で食べ歩き調査を開始していた。
エルダは市場区を中心に冒険区、住宅区と円を描くように囲まれた独特な街だ。
当然、区域が分かれるだけあって人口も多い。
今いる市場区なんて、ほとんどが出店とは言え、30店舗は優にある始末だ。
「田舎とか言ってたけど……ここって十分大きな街だよね?」
「確かに、貧しい街ではないですね。
ただ、中心都市はこの街の比じゃないですよ?」
「マジか……。」
随分発展してんだなぁ……。
いや、そもそも中世っぽい文化圏だからって私の方が舐め過ぎなのか。
元世界で言えば東京23区のうち5区分程度だし?……いや、やっぱでかくない?
「大丈夫ですよ、ミコトさん。
ここは確かに人は少なくはないですが、中心都市からは一番離れた街ですから。
中心都市との貿易もありませんし、心配する必要はないですよ。」
ん……何の心配だ……?
中心都市から離れてるから私には心配ない事……。
今、私が心配してること……うーん……。
「あっ……プリニアか。
つまり、中心都市との関わりが濃くなると私たち、やばいのね。」
「そうでした……ミコトさんは記憶喪失なんですよね。
えっとですね……正確には中心都市は魔族領と隣接してるんです。
大戦だってずっと昔に終わっていますし、魔族事態が過去の存在なんですよ。」
「えっ……待って待って。
じゃあ、例の魔王様ってもう死んでるの?」
なんだよ、もしかして魔王様につけ狙われてる心配しなくていいの?
「死んでは……いません。魔族領そのものを……封印したんです。」
「領土の封印って……凄くない?」
「凄いですよ、なんたって大英雄アーサー=ドルペゴン様の偉業ですから。」
「ブッ……!?」
いきなりの不意打ちにむせた。
あっ……やべっ鼻に入った。
って!?アーサー=ドルペゴンって!!
かのアーサー王伝説の大英雄……を文字った大人気スマホゲームDBOの主人公じゃねーか!!
せめて、そこはアーサー=ペンドラゴンにしろよっ!!
なんでゲームキャラの方にしたっ!!
てかお前ぜってぇ、日本人転生者じゃねーかっ!!!
「ミコトさん、大丈夫ですかっ!?」
「だいどーぶ。ちょっと鼻に入っだげど。」
あぁーもう、めちゃくちゃだよっ!!
スマホゲの名前語るような頭悪い奴が超越能力を与えられ、片や大英雄様。
こっちはトイレットペーパーだけ渡された、ネームバリューだけの元魔王幹部よっ!!
何この理不尽っ!?酷くないっ!?
別にシャッハ君は大好きだけどさっ!!
それでもなんか納得できないんですけどっ!?
「ほんとに大丈夫ですか……?顔がすごいことになってますけど……。」
「何か思い出したわけじゃないんだけど、その名前にはちょっと思うとこがあってね……。」
「まさか……大英雄と戦ったことが……。」
「ないない。
いや、ごめん今の話忘れて。説明もしようがないし。」
「……なんだがわかりませんが……わかりました。
ただ、悩みがある時は言ってくださいね?微力ながら力になります。」
「……ありがと、エリック。」
こう言う時、必要以上に聞き出そうとしないエリックの優しさは助かる。
ほんと、いい友達を持ったよ。
「あっ、でもどうしようエリック……。」
「えっと……何がです?」
私は食べかけのエルダサンドをエリックに見せる。
「咳したときにこれに結構唾掛けちゃったかもしれないんだけど。
これから食べ歩きするから、これだけにお腹満たすわけにもいかないし……。
勿体ないけど捨て……。」
「勿・体・な・い・で・す。」
エリックの語調が強くなる。
やっぱ食べ物粗末にするのはダメだよねぇ……。
胃袋的にはエリックの方が大きいから、大体はエリックに任せようと思ってたんだけど……。
まぁ、これは流石に自分で食べきるか……後半きつくなりそうだけど、頑張ろう……。
「勿体ないよね……うん、ちゃんと食べきりま……。」
「いえ、僕が食べます。」
エリックは私の食べかけを受け取ると、嫌な顔一つせずに食べきってくれる。
いや、爽やかな笑顔ではいるが、少しだけ手が震えてるのがわかった。
なんて良い奴なんだ……エリック。
「ありがとう、エリック。
ごめんね、今度からちゃんと分けてから食べることにす……。」
「えっ!?……いえっ!!それはいけませんミコトさん!!
完成系から食すことで分かることもあるはずですっ!!
初めからちぎって食べるなんて言語道断っ!!それこそ食に対する冒涜ですっ!!」
「えっ?……あっ、うん。」
エリックは私の肩をがっしり掴んで熱く語る。
なるほど……この街もそうだが、この世界の住人は食に対して熱いのかもしれない。
そうだ……日本人だって食に対して熱い想いを持った人種だったじゃないか。
そう、もっと真剣に、食と向き合わなくてはっ!!
「ごめん、エリック。私が間違っていたよ。
やるならば、ちゃんと調査しなくちゃいけないよね。
エリック、汚れ役になっちゃうけどごめん。
でも、私ももっと真剣にこの試食と向き合うよっ!だから協力お願いしますっ!!」
「喜んでっ!!!」
それから私たちは何軒もの有名店を梯子した。
エリックの知ってる隠れた名店にも手を伸ばし……20店舗近く回ったのだ。
「……。」
「顔色悪いですね?大丈夫ですか、ミコトさん?」
「なんでエリックはそんなに平気そうなの……。」
「えっ?……いや、何と言いますか……その……いつもより美味しいですし……。」
「マジかよ……。」
知らなかったが、これはいつもよりうまいのか……。
まぁ確かに、すげぇ幸せそうに食ってたもんな……そんなに外食好きだったのか。
でも、ノートン家の飯とそれほど大差はないと思うんだけどなぁ……。
いやまぁ、だから確かに不味いわけではないし……てか、うまくはあるんだけどさ……。
「もしかして、もうお腹の方の限界が来ましたか?」
「いや……そうじゃないんだよ。量も確かにある程度は来てるんだけどさ。
こう連続でこうだとさ……。」
「あぁ……どれもパンのサンドや野菜のサンドには変わりないですからね。
でも、味はそれぞれの店の持ち味があったと思うのですが?」
「そういう話でもないんだよ……と言うか連続で同じもの食べるのはそんなに苦手じゃない。
味の変化があれば尚更ね。」
「だったら……。」
「でもさ……。」
「でも……?」
「甘いんだよっ……全部っ!!!」
そう、この世界の食い物は全て……甘いんだよっ!!
最初のころは確かに原材料の品質の良さから来るものだと思って感動はしたよ?
でもさ、一つ残らずの食べ物が必ず甘みが主張してくるのだ。
特に照り焼きのように甘辛い感じの食べ物があったとしても必ず甘みの方が勝つんだよっ!!
私はさぁ……塩辛い物がそろそろ食べたいんだよっ!!!
「ミコトさんの言ってることがよくわからないのですが……。」
「せめてさ……甘みがない物ってないの?」
「えっと……ちょっとよくわかりません。」
……絶望だ。
そもそもこの世界の食事は甘くて当然らしい……。
あぁ……私の日本食の夢たちが儚く遠のいて行く……。
……ピザ……ハンバァーグ……ラメェエエエエエエエエエン!!
マイフェイバリットカレーラァアアアアアアアアイイス!!
カンバアァアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーックッ!!!
ま……私が作りたいのは日本食と言う名の洋食なんだけどさ。
「よし……食べ歩きはここまでだ。私は決めた……決めたぞエリック!!
私は……この世界に食の革命を起こすっ!!」
「食の革命ですか……何だか壮大ですね、ちょっとワクワクします。
それで具体的にはどうするんです?」
「よくぞ聞いたっ!!それはな……甘くない物を開発するんだよっ!!!」
私なる華麗な宣言の名の元に新たな壮大で素晴らしい目標が決定されたのだった。
……おい、そこの約一名。
何言ってんだコイツみたいな、その顔をやめろ。
エリックの変態度が増してきた気がする。
今後の投稿なんですが、申し訳ないですが週一の投稿に変えさせてください。
ゲーム制作の時間を確保したいのが理由です。
やっぱ同時進行はちょっと無理がありました、ごめんなさい。




