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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第三章 前進は異世界宿屋と共に
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第49話:朝食、温かな食卓と、甘えん坊さん





~本日のノートン亭こだわりの朝食メニュー~


・こだわりの甘~いコッペパン

・謎肉コロコロの果実炒め(冷めてる)

・ノートン亭自慢のじっくり煮込んだ果実スープ


の3品である。


私は口の大きな木製のスプーンを構え、私の大好きなスープの入った深皿を引き寄せる。

スプーンギリギリに収まるトロっとした果実をすくい上げ、少量の汁と共に口へと流し込む。

そして、舌で包み込むように、撫でるように、そのホロホロの四角爆弾をすり潰す。




―――爆弾が弾ける。


その爆弾の吸い込んだ旨味の塊が私の口いっぱいへとなだれ込んむ。

温かな旨味が私の全身へと染みこみ、私を幸せ一杯にさせてくる。

元の世界では食べれなかったその味に、私はいつものように頬落ちさせた。


……何度食べても、このスープはうまい。


味はオニオンスープに近く、それよりも油分も味も濃い。

それも……ベーコンなんて入ってはいない。。

ノートン亭スープはこの果実一つで、この旨味のほとんどが引き出されているのだ。


トリオンと言う果実は、果実と言うよりも我々の世界で言う野菜に近い。

味は甘みのあるタマネギ、そして触感はまんまダイコンの様な繊維質だ。

だから、煮込めばスープをたっぷり吸いこむし。

加熱すると触感はダイコンを越え、トウガンの様に柔らかくなる。

まさに……タマネギとダイコンと油の役割までこなす、ハイブリット食材なのだ。


さぁ……お次はパンだ。


異世界のパン。

それも、富裕層ではない家庭のパンと言って、どんなパンを想像するだろうか?

私はもちろん、硬くてぱさぱさのパンを想像した。


だがこのパン……柔らかいのだ。


フワフワ……まではいかないがコンビニの菓子パン程度には柔らかい。

と言うか……まんまコンビニの菓子パンだった。

異世界らしさはないと言えばそれまでだが。

故郷を感じられる言うのも、結構うれしいものだったりする。


私は郷愁に思いをはせながらも、今日のメインディッシュへと手を伸ばす。

少し冷めてしまったものの。

皿を近づけた瞬間、香ばしい香りが私の唾液腺を刺激してくる。


私はパンを大きめにちぎって、挟み込むようにして掴んで口に放り込んむ。

言っておくが、これがこの世界の一般的な食べ方なので、行儀が悪いわけではない。


少し咀嚼し始めると、パンのゾーンを抜け、果実炒めの部分へと差し掛かる。

まずは、シャキシャキのゾットの実だ。

ゾットの実は不思議で、炒めてシナシナになってこの触感なのだ。

正確にはちょっと硬めのセロリの様な触感で、味は薄味のきんぴらゴボウだ。


そして……このきんぴらゴボウに謎肉の旨味が絡んでくる。


謎肉と呼ばれたその謎果実……ニルドの実と言うのだが。

元世界で言う、何の肉の味かを言葉で示すことができない。

どの肉とも言えず……どの肉よりも旨いと言える。

触感は脂身の様な感じで、それでいてスッと噛み切れる。

肉ではないので肉汁はでない。


だがそれでも……肉よりうまい、謎多き肉なのだ。


「ミコトさん……相変わらず、楽しそうに食べますよね。」


「お姉ちゃんが嬉しそうだと、何だか食事が楽しい。」


エリックとマイノちゃんの声で我に返る。


「いやだっておいしいし、このニルドの実とか不思議でしかたないもん。」


「ねぇねぇ、デア。」


プリニアが横から問いかけ、私の口に何かを突っ込んでくる。


「ふりひあっ!?……はっ、ほいひい……。んっ……これなに?」


さっきまで食べていたパンサンドなのだが、何かが入っていてすごくスパイシーだった。


「デアの実って言うの。デアと一緒の名前なのよっ!」


そう言って、はしゃぐプリニアは本当に嬉しそうで……私まで嬉しくなってくる。

プリニアの髪を撫でる。

心地よさそうに身をゆだねるプリニアを見て……彼女と出会えたことが嬉しくなる。


もしもあの場で出会えてなかったら、この子はどんな気持ちでい続けたのか。

それを考える度に、今のこの幸せな場所が何倍も尊いモノになって行く。


「でもプリニア。この実どうしたの?」


「デアにもらったのよ?あっ……えっと、昔のデアの方。」


「そっか……。」


昔のデア……それが……この身体の本来の持ち主だ。

理由は私にもわからないが、ミコトちゃんや私の意志はあるが彼女に関しては皆無だ。

狂化時の私がデアクレア……と言う線も考えたが、それも違っていた。


プリニアによれば、デアクレアはツンツンしてるが優しい人だったらしい。

そして今のデアは甘々で優しい人だから同じくらい好きだとプリニアが言ってくれた。


元のデアクレアには乗っ取ってしまって悪いと思っているが。

だからこそプリニアの幸せはきっちり守り切るつもりだ。

魔王の元幹部で裏切り者って話は文句を言いたいところだがね……。




―――幸せな朝食が過ぎる。


街へ行くための支度をしているとプリニアにマントのすそを引っ張られる。

ふくれっ面の愛らしい顔に思わず苦笑いになる。


「ごめんってプリニア。でも私もずっと引きこもってるわけにもいかないし。

 そろそろ外に出て、行動し始めないといけないの……だから、ね?」


プリニアがゆっくりとすそを引っ張る手を緩める。


「絶対に……置いてっちゃいやよ……?」

 

「えぇ、もちろん。もう絶対、一人になんてさせないから。」


プリニアに振り向き、しゃがみ込む。

そして、そのぷくぷくの頬を両手で包み込んでおでこに軽いキスをした。

プリニアが驚きで目をぱちくりさせる。


「これはね、私の知ってる秘密のおまじないなの。」


「……秘密のおまじない?」


「えぇ、プリニアが私の事を信頼してくれる……おまじない。」


「おまじない……。」


「私はあなたが隠れなくても済む安全な場所を必ず作る。

 だからね……信じて待っていて、プリニア。」


プリニアが顔を埋める様に抱き着いてくる。

か細い声で小さく何かを呟いたが、うまくは聞き取れなかった。

だが……抱きしめる強さが、自ずと答えを導き出してくれる。

少しだけこぼれた雫を、私は指で拭ってあげる。


「それじゃ、行ってくるね……プリニア。」


部屋から出ようとする私の手を、小さな手が引き留める。


「プリニア……?」


「……外までは……一緒。」




私はその手を強く握り返し、その健気なわがままを聞き入れるのだった。




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