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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第三章 前進は異世界宿屋と共に
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第48話:計画、紐解く知識と、はやる芽吹き





「店を継ぐ気……ですか……。

 もしもこの店を立て直せると言うのなら、立て直したいです。」


「ほほう?」


「もしも自分がいなくなってマイノを一人で残してしまった時。

 マイノだけでも生きていけるための物を残してやりたいんです。」


「なるほどね……じゃあ、マイノちゃんの事がなければどう?」


「そうですね……僕としては、料理は好きなのですが……。

 経営となるとどうも……苦手意識と言いますか……。」


「興味がある部分はあるけど、それ以外の面を総合すると微妙だと。」


「……はい。」


マイノちゃんのために立て直したい気持ちはあるけど。

自分のためにはそこまででもないと言った感じか……。

まぁ、経営って難しいからねぇ……いや、私もしたことないんだけどさ。


「そうなると……マイノちゃんの意思次第って感じかぁ。」


「それもありますし、そもそも実現できるかの話としての問題もありますので。」


「それに関しては手ごたえ感じてるんだけど……?

 私の用意したベッド……良い感じでしょ?」


「はい。それは確かに、ほんと凄いですよあのベッド。」


最初の手がかりとして私は、あの固いベッドと臭い皮の掛け布団をリフォームしたのだ。

そして試作一号として、そのすべてをシャッハ君で置き換えた。


まず、中に空洞が出来るようにあの臭い皮で箱の様な物を作った。

そしてその空洞の中に、シャッハ君で作ったバネをいくつも挟み込んだのだ。

つまりは……スプリングベッドと言う奴を作ったわけだ。


バネ自体の耐久度に関しては、予想以上に頑丈にすることができた。

紙と言うのは何重にも重ねれば固くなるわけで。

戦闘用の盾としては不十分な硬さであったが、人を支える程度なら余裕だった。


後は臭い皮の箱の上に更にシャッハ君を巻き付ければ、

いい匂い付きのトイレットペーパーによって、臭い匂いは相殺。

しかも、更にフワフワ度が増した完璧な布団が出来るというわけだ!


掛け布団に関してはまんまシャッハ君をぐるぐる巻きにして作っただけなんだけど。

これがまたホワホワで暖かいんだよ。


「プリニアもめっちゃ喜んでくれてたし。

 コスト面に関しても、材料費無料のシャッハ君が80%。

 完璧なベッドであると言っていいのではないのだろうかっ!!」


「はい、それに関しては間違いないです。ただですね……経営となると……。」


「……やっぱ、食事の方かぁ。」


「……はい。確かに自分たちの食事は自給自足は出来るのですが。

 大人数に振る舞うとなると、仕入れをしなければいけません。

 そして元手がほぼないので、仕入れを上回るだけの売り上げが出なければ。

 仕入れ自体がどこかで止まってしまいす。」


「続けて提供できないのはダメだもんねぇ……。

 でも、寝泊まりだけ提供するじゃダメなの?」


食事は別の場所で取って、寝泊まりするだけの形式の宿屋だってあっていいだろう。


「経営自体は可能ですが。

 人の流れが少ない場所にしてしまうと良からぬ人間が集まってしまうんですよ。

 特に、そんな人間にマイノの正体がバレてしまったら最悪ですから。」


「そういうことか……。」


しかし、経営は得意じゃないみたいなことを言ってたが、結構よく考えてるんじゃないか。

相変わらず、この男のポテンシャルはおかしい。


「ところで、料理の腕の方はどうなの?」


「それに関しては、可もなく不可もなくですね。

 少なくとも、料理の腕だけで客足を引き留められるだけの才能が僕にはありませんでした。

 だから、諦めて冒険者の道を進んだんです。」


「そっかぁ……うーん……じゃあさ、マイノちゃんならどう?」


「マイノですか?いや、ミコトさん、マイノは女ですよ?」


……ん?

女だからいいじゃないか……何言って……おい、待てよ。


「ねぇエリック君。家庭の料理ってお母さんが作るものだよね?」


「……いえ、それは父親の仕事ですよね?」


ふぁあああああああああああああああ!?

まさかのここで文化的相違によるすれ違い!?


「え……それってさ、女が厨房に立つなんて出しゃばるんじゃねぇ!……的な?」


「ミコトさんの常識ってどうなってるんですか……?

 女性は育児や男性の心を支える大事な存在だから、男が料理でもてなすんです。

 言わば感謝の気持ちであり、男が女性のために行う大事な義務です!」


熱く語るエリックを見て、この世界の紳士的な文化に少し感激する。

私の世界では男と女は結構いがみ合ってさえいるから、羨ましくも思った。

それぞれ役割を分担して、感謝し、敬う……良い世界だ。


「わかった。マイノちゃんが作るのは、なしだね。」


私の世界での常識ならば、そんな考え自体おかしいと突きつけることはできるものの

だからと言って、この世界の文化を壊すようで褒められるべきではないだろう。

何より、常識と真逆の方向に進むと言うのは、いらない敵を作りかねない。


「エリック君、少しお願いがあるんだけどさ……。」


「現地調査ですよね?

 食料の確保はまだ明日でもいいので、今日は仕事をお休みにしても大丈夫ですよ。

 多少の食べ歩き程度の分ならば、資金も用意してありますし。」

 

「 ……。」


「あれ……間違ってました?」


「いや……それで合ってるよ。」


「なら良かった。」


心なしか、いつもより嬉しそうに話すエリック。

私の気持ちを言い当てたことがそんなに嬉しかったのだろうか?

と言うか、この男の読心力はちょっと察しの良いレベルを遥かに越えてるんだが……。

余りに凄すぎて……もはや怖いわ。


「それじゃ、朝食食べ終わったら早速出かけてみようか?」


「はっ、はいっ!!」


突然、大声で返事をするエリック。

急にどうしたというのだろうか……。


「エ、エリック……急にどうしたの?」


「その……何と言いますか……ん?……今、エリックって……。」


「あぁ、ごめん。驚いてつい呼び捨てにしちゃったよ。」


「いえっ!そのままでいいですっ!……いや、そのままがいいっ!!」


急に何かに慌てふためくエリックを見て、余計意味がわからなくなる。


「それはいいけどさ……ほんとさっきからどうしたの?」


「取り敢えず、朝食食べましょう。ほらっ、マイノたちもきっと待ってますよ。」


そう言って、逃げ去るように厨房へと駆け込んで行くエリック。

理由が分からないエリックの行動に何かモヤモヤする……。

あいつ……なんか私に後ろめたい事でもあるのかぁ?


答えの出ない疑問を抱えながら、私はみんなの待つ厨房へと歩を進める。

まぁ、何にせよ……この調査は抜かりなく行わなければ。

この下調べこそが、経営を左右する一番重要な勝負所なのだ。


そんな決意を胸に意気揚々と厨房に入った私だったが。

そこには、揃って腕組みをしているマイノちゃんとプリニアが待ち構えていた。

そしてその隣には、正座をさせられているエリックと冷え切った朝食を添えて。




この後……話が長いと二人に盛大に怒られた事は言うまでもない。




現実世界も、もっと優しい世界であればいいのに。

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