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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第二章 動き始めた異世界生活
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第46話:帰り道、凍える身体と、温かい夕暮れ




「……こんなものっ!!」


プリニアは大量に絡んでくる紙の蛇たちを振り払おうとする。

身体に張り付いた時点でもう振り払えないと言うのに……だ。


「うざいっ!!!」


痺れを切らしたプリニアが飛び上がり、その勢いで絡んでいた蛇を振り落とす。

だが……


「ぐっ!!?」


飛び上がった上空にはトイレットペーパーの大雲が待ち構え、雨の様に絡みつこうとする。

それでも、それを蜘蛛糸で持って張り付けて吹き飛ばす。

だが……


「何でっ!!?」


着地した先には……湖と化した逃げ場のない蛇の群れ。

情けない声を出しながら、涙交じりに足掻くプリニアは……ようやく気づき始める。




―――どんなに足掻こうとも


もう、この攻撃から逃れられることなんてできないことを。


これが……対閉鎖空間におけるシャッハ君の必殺技、多蛇大雲(スネーククラウド)

蛸足拘束(オクトホールド)でそもそも対処できたのでは?と思った人もいるかもしれない。


だが、シャッハ君は誰に対しても強い……と言うわけではないのだ。


増殖や移動のスピードにだって限界はある、強度に関してだってまだまだ課題は多い。

この攻撃に関してだって

準備に時間がかかったり、使用中は私が無防備だったりするのだ。

ひ弱な人間や、足の鈍いオーガ相手なら考えなしでも余裕かもしれないが……

魔王の幹部相手となると流石に……ね。


しかも蜘蛛の糸と言うのがまた、シャッハ君とは相性が悪すぎたんだよ。

もしも蛸足拘束(オクトホールド)で対処していたのなら

呆気なく蜘蛛糸に包み込まれ、シャッハ君の身動きを封じられていただろう。


蜘蛛の糸と言う物の強度の恐ろしさは、現代知識の中で知っている。

大きささえあればジャンボジェットすら平気で止めることができるとか‥‥‥ね。


さて、説明はこのぐらいでいいだろう。




―――それよりも……


エリックが私の元に来て、糸の拘束を解いてくれる。


「エリック君、その……。」


「私の事は構いません。

 それよりも、早く助けてあげてください。」


「……ありがと。」


彼のお人よしさに甘えすぎるのは、いけないことだと思ってる。

それに、ルードがいたら……許してもらえないかもしれない。

……それでも。


「シャッハっ!!解放リリースっ!!」


シャッハ君によって大きく作られた球体が花が咲くように開かれていく。

そしてそこに現れたのは、大蜘蛛の化け物ではなく……小さな少女だった。


だが今は、そんなことに驚いている暇はない。

プリニアが……呼吸をしてないのだ。

解放するまでに時間をかけ過ぎてしまったのだ。


「落ち着け……落ち着いて、思い出せ……。」


慌てふためく心を落ち着かせ、昔教習所で習った人工呼吸を思い出す。

ここで殺してしまったら、デアクレアに……いや、私が許せなくなる。


「だから……絶対に死なせないっ!」




―――プリニアが私の膝で静かに目を覚ます。


「ごめんね、プリニア……苦しかったよね。」


プリニアの表情は少しずつ全てを理解していく。


「……デアクレア……じゃないのね……。」


それは、私のこの行動はデアクレアならしなかったという事なのだろうか?

だが、そんな疑問は未解決のまま

プリニアは私の顔から目を背け、横に反れてうずくまる。


「……なんで殺さなかったの?」


プリニアのその質問に何と答えるべきか、慎重に考える。

だが、ここで答えるべきは理屈ではないと、心が教える。


私は小さく軽くなった彼女を……抱き寄せる。


今必要なのは言葉ではなく……温かさなのだ。

抱き寄せたその小さな身体はまるで幼い少女のように小柄で、温かかった。

最初は固まっていた身体が徐々に小刻みに震え始める。


最初に出会った時の大人びた姿は、偽装だったのだ。

……いや、と言うよりも彼女の背伸びだったのかもしれない。

長髪から少し短くなった鮮やかなぶどう色の髪を、私はただ優しく撫でる。


彼女の寂しさが……今この時だけは、癒えてくれると願って。 




―――落ち着いたプリニアを抱き寄せながら


私はエリックに別れを告げる。


「ごめん、エリック君。迷惑かけっぱなしだけど私とはここで……。」


「お別れ……ですか?」


「えぇ……エリック君たちの事を途中で放り投げるのは申し訳ないけど……。」


「……デアクレア?」


驚きと寂しさが混じった少女を優しく撫でる。

私は……この子をここに放っては行けない。

そして……人里に連れて行って、エリックやマイノちゃんにも迷惑はかけられない。

だから……。


「ミコトさん……もう、僕たちは仲間でしょう?」


「……え?」


仲間……向こうで生きていた時には聞くことのなかった言葉だ。


「仲間と言うのは、苦難を分かち合うものです。だから、みんなで戻りましょう。」


この世界では、それが仲間と言う事らしい。

エリックの優しい顔に、置いてきてしまった親友の面影を思い出す。


「何も考えずにこんなことを言っているわけではありません。」


エリックの顔が途端に頼もしくなる。


「この辺は魔族の広がる首都領域からは大分離れた大田舎です。

 だから、魔族の自体よく知らない人ばっかなんですよ。」


「でも……。」


「仮にバレたとしてもです。その時はみんなで逃げればいい。」


ルードとは違う、また別の温かい何か。

それにこの世界でまた出会えたことが……嬉しかった。


「エリック君……ありがとう。」


私は溢れ出そうになる涙を抑え鼻をすすり、プリニアに向き直る。

後は……プリニアの気持ちだけだ。


「プリニア、私と一緒に来てほしいの。もしかしたら、窮屈な思いをさせるかもしれない……。

 ううん、あなたにとってはもっと屈辱的な選択を選ばせなければならなくなるかもしれない。

 でもね……私はあなたと一緒にいたいの……だかr……。」




―――私がそう言い切る前に、プリニアが私を強く抱きしめてくる。


期待していた以上の返事は……私の涙腺を刺激した。


泣きつかれて眠ったプリニアを、私はおぶって来た道を戻る。

エリックにおぶるのを変わろうかと言われたが……それは断った。

私のために頑張ってボロボロのエリックに、これ以上迷惑をかけたくなかったし。

それに今はただ……背中に伝わる小さな体温を感じながらこの道を歩いていたかった。





夕日が照らす、この寂しくも優しく……輝く道を、噛みしめていたかったのだ。





幼女……ゲットだぜ!!

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