第42話:探索、飛び越える常識と、前進する心
シャッハ君と会話ができる。
そんな夢の様な事が可能であると聞かされ
驚愕と共に、舞い上がっていた私だったわけだが・・・。
結論から延べれば、私のその夢は無残にも散り去った。
と言うより、神語たるものが異次元過ぎた。
実際に、神語でシャッハ君と会話するとこを見せてもらった訳だが・・・
「kspsa taos psalkjzi ksaoiw kslawo hehshe。」
これが会話中の一文だ。
これを更に、倍速再生で流されたような音声で聞かされる。
英語・・・っぽいように聴き取れなくもないような・・・。
と言うか、何となくでも聞き取れただけ褒めてほしい。
シャッハ君の方はと言えば、一切喋ることはなく。
聞けば、脳内に直接語り掛けて来るとか。
少なくともこの時点で、エリック君の方が神様かなんかじゃねぇのかって思うわ。
「ミコトさん、ほんとに・・・神語使えないんですか?」
「使えねぇわっ!!
と言うか、使えて当たり前みたいに言ってる君が怖いわっ!」
「いや、覚えてしまえば簡単ですって。」
「どこがっ!? 覚える以前にそもそも発声自体出来んわっ!!」
「そんな馬鹿な・・・。」
「そっくりそのまま返すわっ!!」
エリック君の天然っぷりに完全に翻弄されつつも。
シャッハ君と会話できると期待してただけに
逆に不可能な領域だと知ってガッカリ度は2倍増しだった。
ガッカリしつつも、私は手の平に乗せたシャッハ君を撫でて心を和ませる。
まぁ、出来ないことを考えていても得るものはないわけで。
この話はここで留めておこう、と言うかそれよりも・・・
「エリック君、まずさ・・・ここどこ?」
見れば一面が花畑。
しかも、何か変な光がフヨフヨ浮いてるし。
心なしか・・・温かい。
意識がはっきりした後でもここは黄泉の国ではないかと思えてくるレベルで
目覚めてからの一連のイベントがなければ、まず初めに驚愕していた所だ。
「あぁ・・・ミコトさんは神域は初めてだったんですか?」
次から次へとこの男はあたりまえ面で新単語を言いやがって・・・。
特に悪意はないんだろうけど・・・
何かこの面見てると馬鹿にされてる気持ちになるんだけどっ!!
「神域って、何か教えてほしいんだけど・・・。」
「え?そんなことも知らないんですか?」
キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!
天然から来てると言え、どんだけの煽り属性だよっ!?
ちょっと前のパーティでいじめられてたのも納得し始めてるんですけどぉ!?
<・・・青年説明中>
「つまり・・・オーガ君が塞いでた先にあったのがここだったと?
ほいで妖精さんの不思議な力で守られてる秘密の場所がここであると?」
「そう・・・なん、ですけど・・・。
ミコトさん・・・首絞めるの、やめて・・・ください・・・。
胸が当たって・・・あと苦しっ・・・。」
「先に胸の話が出る辺りほんとスケベだな、このエロリックめ。」
ヘッドロックを決めて一通り満足したので、腕を離してやった。
「それで?なんでそんな隠し場所に来れてるのよ、私たち?」
「げふっ・・・それは僕に耐性があったんで。」
「結局、エロリックがすべての元凶かい。」
「元凶って・・・あと、そのあだ名を定着させないでください。
それより、御使い様の話だと花畑の中心に地下へ続く穴があるみたいです。」
「ほほぅ?」
「そこに目的の実がなっている木が生えているそうです。
なので、まずは行ってみましょう。」
花畑の中心に進んでいくと、確かに大きな穴があった。
そして穴には傾斜があり、難なく降りれそうであった。
「それじゃ、僕が先に降りますから。
ミコトさんは後ろからついてきてください。」
「ほいほい。」
中々に長い階段をを私たちはゆっくりと慎重に降りていく。
奥からは青白い光が漏れ出し、道を照らしてくれている。
奥から吹いてくる風が少しだけ涼しかった。
「ねぇ、エリック君。」
「はい。」
「エリック君の一人称って僕なんだね?」
「あっ、いやそれは!?」
「わかるわかる、僕ってちょっとマザコンっぽくさ出てて恥ずかしいよね。」
「別にマザコンじゃっ!?」
「いいんじゃない?
前よりも垢抜けた感じがして、私はいいと思うけど?」
「・・・。」
「それに、私との戦闘で自身の長所が見えてきたんじゃないかな?」
エリック君の背中が少しだけ小さくなる。
「個人プレーは得意でも
協力ができない人間ってパーティとしてはどうなんでしょうか?」
相変わらずの後ろ向き・・・。
「私としてはそもそも個人でそこまで戦える時点で凄いと思うけど?」
「・・・そうでしょうか。
結局、僕が抑えられたのはは所詮は人ひとり、しかも自我もない相手です。」
「へぇ・・・それってつまり、狂化もしてない私はもっと役立たずと言いたいと?」
「あっ・・・いや、そんなつもりじゃ!?」
「謙遜は美徳だと思うけど、行き過ぎると嫌味になるって知ってる?」
「そんなつもりは・・・・・すいません。」
相変わらず、最後はしおれるエリックに私はため息をつく。
前のパーティで追い出し食らったのは、この辺りも原因の一つなのかもしれない。
いじめってのは、やる側が絶対悪ではあるものの
結局、やられる方も相手に油を注いでいることが多い。
人の精神とは未熟なのがデフォルトなのだ。
いじめる側は未熟で心が狭く、される側は相手をイライラさせる原因を持っている。
何事も、どちらかが一方的に悪いだけとは限らないのだ。
少なからず、両者それぞれに問題と言うものは存在する。
だから悪を悪と断じる前に、自身がかえりみる事こそ大事なのだと・・・私は思う。
「エリック君は慎重で堅実な人だとは思う。
でもね・・・ある程度の自信を持つこともね、大事な事だと思うの。
自信をもって失敗するのは誰だって恥ずかしいし、怖いものだよ?
でもね、失敗を恐れて後ろ向きに考える人間なるよりは、
無様に失敗してでも前に進む人間の方がずっとかっこいい・・・って私は思う。」
「・・・。」
「・・・なんか説教臭くなったね。」
「いえ・・・少しだけですが・・・何かがわかったような気がします。
すぐに実行できるかはちょっと不安ですが・・・。」
「・・・そんなもんだよ。
人は変わろうとしても根本は早々変わんない。
でもね、きっと変わろうとする前よりは何かが変わる、そこが大事だから。」
「何かが変わる・・・そうですね、もっと前向きに自分を信じる・・・。
ミコトさん、僕は・・・・・えっ!?」
「どしたの?・・・って、おぉっ!?」
―――私たちの目に映る、青白く光ったそれは
大きな地下空間の中心にそびえ立つ・・・一本の巨木であった。
地下空間の高さは20mほどあるが、その高さいっぱいまで伸びている。
よくよく葉のついている部分を見ると果実がぽつぽつ実っているのがわかる。
「凄いですね・・・地下にこれほどの物があったとは・・・。」
「秘密基地作りたい・・・。」
「え?」
「あっ、なんでもない、なんでもない。」
肌寒さすら感じるほどの広い空洞を私たちはドキドキしながら進んでいく。
巨木へと近づいて行く度に増していくその大きさに、驚愕していた。
そして、ふとここで気づく。
「ねぇ、エリック君。この木って・・・もしかして神聖な何かだったりする?」
「えぇまぁ、神域にあるものですからね。神が降りし木なんて言われていますね。」
「ほほぅ?つまり・・・その木で剣なんて作ったらすごいの出来ちゃったり?」
エリック君が目を座らせて私の方を見てくる。
「ミコトさん・・・間違っても神木を切ろうなんて思わないでくださいね?
神木の絶命は繁栄の終わりとも言われてるんですから。」
「だめかぁ・・・。」
「そもそも物理的に切ること自体出来ませんけどね。」
「なるほど・・・え?じゃあ、あの実も取っちゃダメな感じ?」
「もちろん。ただ、僕たちの目的とするものはきっと・・・あ、やっぱり。」
エリック君が指さす先には大小様々な木々がたくさん生えていた。
「神木の周りの土には豊富な栄養が溜まっていますから。
必然的に貴重な木が生えやすいんですよ。」
「へぇ~・・・で、これは取ってもいいんだよね?」
「えぇ、これは神域に生えてるだけで普通の木ですからね。
ただ、恵は分けてもらうものですから、取り過ぎるのはダメですよ?」
「はーい。」
シャッハ君の案内の元、くだんの実を見つけて2・3個貰っていくことにした。
他にも貴重な木の実はあったようだが・・・
変な業者に嗅ぎつけられるといけないと言う事で、今回は辞めることに。
ただ、マイノちゃんへのお土産としてどこにでも生えてる果物をいくつか採取した。
普通の果物も栄養満点で味は最高級の逸品らしい。
いい感じに熟れて色づく果実。
そしてそこから香る甘い香りが、私の口の中を唾液一杯にさせてくる。
「それじゃ、もどりましょうか?」
「ほうはね!(そうだね!)」
結局、食べていた!
「おいしいですか?」
「ほん!(うん!)」
私はリスの様に頬袋を膨らませて果物を詰めて込む。
頬一杯に溢れ出す激うまミックスジュースが舌を侵略していく。
幸せ過ぎて震えた。
「ほんはひほうは?(それじゃ行こうか?)」
「いや、もう何言ってるか分かりませんって・・・。
とにかく、帰り切るまでは気を緩めないでくださ・・・ミコトさんっ!!!」
地下の入り口へ向かおうと歩を進めようとしたその時。
何かから庇う形でエリック君に抱きかかえられ、視界がぶれる。
―――そして、私がさっきまでいた場所には・・・
甲高い衝撃音と共に・・・鉄串が刺さっていた。
そして更に甲高い声が、私たちの前方の何もない空間から聞こえてくる。
いや・・・その耳障りな声の出どころは更にその上にあると気づいた。
「おっしーい♪もうちょっとで私の可愛いお人形になれたのにぃ~。」
その女は浮いていた。
いいや・・・蜘蛛の糸を垂らして釣る下がっていた。
女が綺麗に回転をしながら地面に着地する。
「あら?あらあらあら?よくよく見たらデアクレアじゃなーい♪
道理で可愛いと思ったわ~~もう、おっひさ~♪」
その女はさっきまでの己の行動を一切気にもせず。
実に馴れ馴れしく・・・『デアクレア』と呼ぶ。
そして、その相手はエリック君ではなく・・・・・私だった。




