第41話:偽り、エリック君は裏表のある、最低の人間です。
目が覚めると・・・そこには綺麗な花畑が広がっていた。
初めは死んで黄泉の国にでも来てしまったのかと思った。
「・・・うぐっ!?」
だが、腹部な強烈な痛みを感じて、そうではないと気づく。
「ミコトさん!?」
エリック君の情けない泣き顔を見つけて、ここが現実であることを実感する。
「すいません、手加減できる余裕もなくて・・・。」
ん~・・・状況からして、私が何かしでかしたんだろうな、うん。
覚えてる最後は、何か変なキレ方してた気がするし。
なによりその辺りから、何もされてないのに記憶を失ってるてのがまた・・・。
「多分、私が迷惑かけたんだよね・・・ごめんエリック君。」
「・・・。」
「だから、このお腹の痛みに関してはエリック君を責める気はないよ。」
「・・・ミコトさん。」
「でもね・・・一つだけいいかな?」
「・・・はい、なんでしょう?」
いや、その全然予想つきませんみたいな顔されても困るんだけど。
と言うか私のこの姿を見て、平然と話していることに私は驚きだよ!?
なぁエリックよ、今一度問う・・・
「何で私、亀甲縛りされてんのかなっ!?」
説明しよう!!今、私は亀甲縛りをされてる!!
しかも結構食い込み方がえぐい感じにしっかりとした亀甲縛りをなっ!!
確かに、恐らく私はエリック君を襲ったか何かしたんだろうけどさっ!!
縛られたって仕方ないのかもしれないけどさっ!!
何で亀甲縛りなんっ!?
服の上からだからセーフってか?
間違いなくアウトだよ!!
起きていきなり亀甲縛りはビビるわ!!
真面目青年だと思ってたら、むっつりスケベな特殊性癖でビビるわ!!
「・・・。」
「おいこらエリック、そっぽ向くなっ!!」
そっぽを向いていたエリックは、こちらを振り向いて・・・ため息をついた。
・・・おっ?
何やエリックわれぇ・・・ケンカってのか?
なに「やれやれだぜぇ。」みたいな顔でため息ついてんの?
え?私が悪いの?違うよね?
どう考えても亀甲縛りに関しては君の落ち度だよね?
おめぇ、迷惑かけたからって無茶苦茶していいと思うなよ?おぉん?
「・・・もう、いいから早く解いてよコレ。」
とは言え、先に悪いことしたのは自分なので呑込む事にした。
なんか納得いないけど!・・・いかないけどっ!!
「なぜですか?」
「・・・は?
なぜって・・・このままじゃ動けないでしょ?」
「それでいいんですよ。あなたはもう動く必要がない。」
そう返答を返してくるエリック君の顔は・・・笑っていなかった。
いや、むしろ冷え切っていた。
まるで・・・私を人として見ていないかの様に。
「安心してください。
引き取り手が来ますから、それまでの辛抱ですよ。」
「エリック君・・・ほんとに何言ってるの?」
「まだ分かりませんか?・・・・・ねぇ、『新緑の乙女』さん?」
急にさらけ出された悪意に、私の心はぐちゃぐちゃにされる。
『新緑の乙女』・・・つまりは、私をミコトとしてではなく
商品としての女として見ていると、そう宣言されたのだ。
突きつけられる嘘の様な真実を、私は呑込む事なんて出来はしなかった。
「・・・エリック君?」
「騙される方が悪いんですよ。」
「やめてよ・・・違うでしょ?
だったらマイノちゃんは?言ってることが破綻してるって!!」
「だから・・・僕たちを信じて正体を明かしてくれたのでしょう?」
「・・・嘘だ。」
「フフッ・・・みんなそう言います。
そう絶望して・・・みーんな、男たちのおもちゃになっていきましたよ?」
「・・・やめて。」
「おや?いつもの威勢と違って、こういう時は可愛い声で鳴いてくれるんですね。」
「なんで・・・こんな・・・。」
「そそられるなぁ・・・『新緑の乙女』を初めて抱いた時を思い出します。」
「・・・え?」
嫌な予感がした。
いや、そんな想像絶対に合ってて欲しくなかった。
だが、エリックはそんな気持ちを笑顔で踏みにじっていく。
「あっ、気づいちゃいました?」
「エリック・・・お前まさか・・・。」
「マイノはほんと・・・何にでも使える女ですよ。」
「ああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
「フフッ・・・いいですねぇ、そう睨まれると気分が高揚しますよ。」
「お前、お前えええええええええええええええええええええええっ!!」
「・・・そうだ、引き取り手が来るまでまだ時間がかかりますし。
ちょっと・・・楽しませてくれませんか?」
エリック君の手が無常に私の胸元にかかる。
「この外道っ!!くそっ、触るなっ!!」
「暴れるなよっ!!」
エリックが暴れる私を花の中へ押し倒す。
無意味だとは分かっていても私は抵抗した。
こんな男に好き勝手になどされたくなかった。
だがそんな抵抗も、私の頬を赤く染め上げる圧倒的暴力を前に敗れ去る。
そして無抵抗になった私の胸をはだけさせ・・・顎を鷲掴む。
怒りと絶望に染まり、泣きじゃくる私の顔を確認して・・・
「大丈夫そうですね。」
―――予想外の言葉と共に、エリックの悪意は消え去っていた。
「・・・へ?」
何事もなかったように
淡々と解いた服を元に戻し、亀甲縛りを解いてくエリック。
さっきまでの悪魔の様な男は・・・元の青年へと戻っていた。
「すいませんでした。」
「なん・・・おい・・・まさか・・・。」
「マイノは、僕の大事な妹ですよ。」
「・・・。
・・・。
ふざけんなよおまええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ここでようやく、本当の意味で踊らされていたことを知り
私はただ、やるせない悲鳴を上げていた。
―――体育座りでそっぽを向く私に、エリックのアホが懇願してくる
「ミコトさん、機嫌直してくださいよぉ~・・・。」
「やっ!!」
「悪いとは思ったんですが、必要なことだったんですってば。」
「うっさいっ!!」
聞けば、私は『狂人病』とか言う類の奇病を疑いがあるらしい。
奇病と言うだけに治療法はなく。
治療法がないだけに警戒しなくてはならなかったと言う事だ。
まぁ、先に私がエリック君を殺しにかかったみたいだし?
ちゃんと奇病の発生条件を知って置きたかったって言い分はわかる。
今、私が怒って駄々こねてるのだって、どう考えても私が悪い。
でもさ・・・騙されたとは言え、エリック君に敵意を向けてしまった事が
私を信じろと大言壮語を吐いた手前、こんな簡単に手のひら返した私が
堪らなく恥ずかしくて・・・なんか悔しいのだ。
後から冷静に考えれば破綻箇所は多かったと言うのはわかる。
そもそも出会いが偶然の産物の時点で完全に破綻してたのだ。
だが、それだけエリック君の演技が上手すぎたのだ。
絶対、将来やり手の詐欺師か女たらしになるよきっと・・・ちくしょう。
それでも、結局は全部私が悪くて、エリック君には何の落ち度も・・・
何の落ち度・・・ん?待てよ?
「ねぇエリック君、最後の服を脱がしたのってほんとに必要だったの?」
「・・・。」
「おいエリック、なぜ黙る?」
「・・・め、迷惑料と言う事で。」
「おいぃっ!?」
・・・この男やりやがった。
真面目な好青年?
いいえ皆さん、コイツ確信犯のド変態ですよっ!!
「いやその・・・つい演技に熱が入ってしまったと言いますか・・・。
欲望にそそのかされてしまったと言いますか・・・。」
「後半完全にただの欲望じゃねぇかっ!!
と言うか・・・あの縛り方も欲望によるものだったと認めるのだな!?」
「え!?そ、それは違いますよ!!
あれはあの縛り方が一番有効的だったというだけで!!」
「で、本音は?」
「・・・ちょ、ちょっとは。」
お前はハーレム漫画の欲望に忠実なエロ主人公か!!
こいつ・・・実はマイノちゃんにもエロイベとか起こしてるんじゃないのか?
ダークネスエリック・・・お前は実に怪しい・・・怪しすぎるっ!!
「と、とにかく!!
ミコトさんが大丈夫なら、そ、そろそろ御使い様を呼びませんとっ!!」
「あ、逃げた!!」
この野郎、ちょっと気を失っている間に随分なキャラになりやがって・・・。
・・・ん?・・・てか、ちょっと待った。
「ねぇエリック、シャッハ君は今どこ?」
「あぁ、御使い様なら少し離れたところで待っててもらってます。」
「え、どうやって?」
「どうやってとは?」
「いや・・・どうやってシャッハ君にそんな指示出せたのって話!!」
「指示じゃなくてお願いしたんですよ。」
「お、お願いっ?」
「えぇ、お願いです。」
「いやいや、そう言う事じゃなくて!!
どうやってそんなやり取りしたの!?会話なんてできないのに!!」
「・・・え?
ミコトさん・・・もしかして、神語を使えないんですか?」
「・・・ん?
・・・神語?
え、何それ、え?・・・え?
それで会話でき・・・?
・・・。
・・・・・。
はぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!?」
当たり前のように出てくる衝撃的な新情報に、私は開いた口は塞がらなかった。




