第39話:洗浄、復讐は、トイレ紙と棒・・・そしてワタシにご用心。
状況を整理しよう。
私の前方20m程先は大きな木を倒し、道を塞いでるオーガ君がいる。
これにより前方への進行は不可能になってしまった。
左右の木々は進行を妨害する牢屋の鉄格子の様にそびえ立っている。
よって、逃走が可能なのは後方のみ。
だがしかし・・・
そもそもエリック君が私の3m先で尻もちをついてしまっていると言う。
詰まるところ、逃走の選択肢は断たれ、奴との戦闘は確定したわけだ。
オーガ君がゆっくりとこちらへと歩み寄ってくる。
―――まぁ、望むところだ。
もう・・・あの時とは違うのだ。
だから!全然足とか震えてないしっ!!
こっ、これは武者震いって奴だしっ!!
「シャッハっ!!攻撃第一っ!!」
シャッハ君を球体モードに変形させて、両手でしっかりと抱える。
意気地なしの足を無理やりにでも動かし、私はオーガへと突進した。
尻もちをついているエリック君を越え、一気にオーガへと近づく。
―――いいか、ビビってることを悟られてはならない。
いや・・・奴をあの場から動かしてはならない!!
案の定、奴は私の予想外の行動に驚く。
そして予想外の事態を好機と捉え、戦闘モードすら解除していた。
まぁ獲物自ら迫ってくりゃあ、そんな邪悪な笑顔にもなるわな。
でもな、ここまでは私の計算通りなんだよ。
お前が突進してきたのなら、私たちに勝ち目はなかったかもしれない。
まだ、防御に関しては十分な自信がないのだ。
だけどな・・・攻撃に関しては自信があるんだよ。
特に、事かいて人型の相手に対してはなっ!!
初対面の時ならば、間違いなく泣き叫びながら逃げてただろう。
いや、エリック君と一緒に腰を抜かしていたかもな。
だが・・・悪いなオーガ君。
「あの時とは違うのだよっ!!あの時とはなぁっ!!!」
砂埃を立てながら急ブレーキをかける。
息を吸い込み、フォームを固定する。
―――くらえ・・・
「シャッハっ!!蛸足拘束っ!!!」
技名と共に空中に放り上がったシャッハボールが爆散する。
そして、奴の上半身に絡みつき・・・
そして、口の中へと入りこんでいく。
呼吸器を責められる苦しみに悶えるオーガ君。
必死にシャッハ君を破って抜け出そうとしている。
だが、無意味だ。
シャッハ君に一度絡みつかれて抜け出せるわけがない。
正直、ここまで来れば後は見守るだけでも事は終わってしまうだろう。
だが・・・私は我が子一人だけに戦わせる卑怯な親ではいたくはない。
それにさ・・・・・オーガ君よ。
―――私は、執念深いのだよ。
自家製のなべ蓋の盾と木の棒を両手に構える。
ちなみに、なべ蓋には取っ手がついており、手で持つことが可能である。
そして、木の棒の先端はプラスドライバーの様に削ってあったりする。
こんな風に削ってあるのは・・・刺さりやすくするためだ。
私は悶えるオーガへと駆け込む。
そして・・・スライディングで奴の股下へもぐりこむ。
―――オーガ君のつんざく悲鳴が森にこだまする。
あぁ、そうそう。
なんで、刺す前提で尖らせなかったかと言うとさ。
初めから開いている穴に刺し込むつもりだったから、なんだよね。
オーガ君の後ろの急所へと、ソレを刺し込んだ私は、急いでその場から逃げる。
そして邪悪な笑顔で、暴れ狂うオーガ君の行く末を見守っていた。
上と下両方の苦しみにもだえ苦しむオーガ君は・・・美すらも感じたものだ。
あぁ、楽しい・・・復讐とはこんなに気持ちがいいものだったのか。
ドラマなんかでは、復讐したって何も残らないとかよく言うが。
・・・全然楽しいじゃないか。
見ろよ、あの間抜けなオーガ君。
女は弱い者だと、征服するだけの存在だと奢っていたオスの末路があれさ。
「はっ!無垢で善良で幼気な少女を、異世界初対面でいきなり襲った罰だねっ!!
ねぇねぇ?刺して嬲るだけの存在だと思ったものに刺されるのってどんな気持ち?
ねぇ!!ねぇねぇねぇ!!!」
復讐を達成して愉悦に浸る予定だった。
なのに私は、想定外の何かに・・・私を乗っ取られていく。
込み上げてくるどす黒い何かに・・・心と身体をマグマの様に燃やされていく。
―――何だろうこの感情は?
わからない。
わからない。
わからない。
でモ
なんダカとってモ・・・・・ムカツクタノシイ。
「ミコトさんっ!!!」
え?なんだ?
その声で私の視界がクリアになっていく。
―――そして、私の瞳に映し出された物は・・・
倒れて息絶えたオーガと原型を失ったオーガの頭部だった。
状況がさっぱり理解できなかった。
いつの間にかオーガ君は死んでいて・・・
ぐちゃぐちゃになった頭があって・・・
私の両手は血まみれだった。
え、私がこれをやったのだろうか?
・・・ほんとに?
私は真実の有無を知りたくて、エリック君の方へと顔を向ける。
だが疑問を問いかけた先の彼は・・・恐怖で顔を強張らせていた。
一体、私は何をしていたというのだろうか?
でもさ、そんなにビビらなくたっていいじゃん。
何か・・・またモヤモヤしてきた。
―――私は、エリック君に一言言ってやろうと彼へと近づく。
しかし、彼は私から表情を強張らせたまま、腰を引きずり後ずさる。
・・・なんだよ。
何でそんな化け物にでも出くわしたような顔して逃げるんだよ。
仮にも、腰抜かしていたお前を助けてやったんだぞ?
流石にその反応はないでしょ?
てかやめろ・・・そんな目で見るな。
なぁ頼む、お願いだからやめてくれ。
私は何も悪いことはしてない。
・・・やめろ。
だからやめろって!!
私は悪い事なんて何もしてない・・・何も・・・何もしてないノニ。
何デ何デ何デ何デ、酷イ酷イ酷イ酷イ。
亜嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。
―――・・・キヒッ。
・・・・・アぁ、そうダ。
そういヤ・・・・・おマエもオスだっタナ?
そうカ、おマエもワタしを・・・・・たダの穴だと思ってルんだロ?
オマエたちはマタ、仲間ヲあつめテ、ワタしをいじメル気なんだロう?
そうダ、そウにキまってル!!
・・・・・お仕おキしなキャ。
ワルいワルい狼タチハ全ブ・・・・・血泥ニ変エなクチャッ!!!




