第38話:論争、私と、エリック君と、この森の問題点
親子の絆を確かめ合い、一通り喜びつくした私とシャッハ君は
いざ、レアの実採集へと向かおうと・・・
「・・・ミコトさん。」
おっと、完全にその存在を忘れてしまっていたよエリック君。
君は気遣いスキルだけではなく気配消失のスキルまで習得していたのか!
「ご、ごめん、ちゃんとエリック君がいることは覚えていたよ?うん。」
「・・・忘れてたんですね。
まぁ、それはいいですが・・・いや、良くもないですが。
まずは出発する前に、魔物と遭遇時の対処法を確認させてください。」
「・・・ん?何で?」
「疑うわけではないですが、私には御使い様の力はわかりません。
具体的に御使い様がどの程度までミコトさんを守って下さるのか。
ミコトさんを護衛するにあたって、それは把握しておきたいんです。」
「私を護衛?そんなこと気にしなくても、全然大丈夫だよ?
最悪の場合の自衛手段は持ってるし。
エリック君は寧ろ気にせずに、実力を発揮しちゃって!」
私の事ならば心配はいらない。
シャッハ君とのコンビネーション戦法は完璧だし。
仮に分断されたとしても自衛できる方法はしっかり考えてあるのだ。
「いやいやいや!!
ミコトさん待って、その装備で安心しろ言われても無理ですからね!?」
「え?問題なくない?」
「問題しかないでしょう!?あなたの腰に背負ってるソレは何なんですか!!」
「盾と武器だけど・・・。」
「違うでしょう!!
どう見ても、なべ蓋と棒きれ以外の何物でもないでしょう!?」
「正確には椅子の座る部分と、支える部分の棒だよ。」
「でしょうね!?それ物凄く見覚えありますし!!」
「あっ、気づいてた?
妹ちゃんにこっそりお願いして食堂のを一つ拝借したんだけどさ・・・。
いやごめん、後でちゃんと返すからさ。」
「勝手に持ってきたことを怒ってるわけではないですからね!?」
いや私だって、もっとちゃんとした装備で来たいって気持ちはあるよ?
でも、本格的に戦闘する気はないからこれで十分だし。
手持ちのお金なんてほとんどないし。
ルードからもらったも物だから、出来る限り温存しときたいんだよね。
それに買うにしたって非力な私じゃ、そもそも扱えるかの問題もあるし。
でもそれ以前にね・・・
「エリック君、君の立場についてここで考えてみようか?」
「・・・。」
「これはエリック君の更生計画であって、私が上官で、君が部下、わかるね?」
「でも、それとこれとはですね・・・。」
「いいえっ!!でももへったくれもありませんっ!!
私の指示には従う、そういう約束だったよね?忘れたとは言わせない!!
あぁ・・・なんかこの前殴られたお腹が痛くなっちゃって来たなぁー?
来ちゃったなーあ?」
「それを引き合いに出すのはずるいですよ・・・。」
「あぁ痛たたた、痛いよぉー・・・。」
「・・・ぐっ。」
「わかった?」
「・・・で、でもですよ?」
「わ か っ た?」
「・・・・・はい。」
「わかればよろしい!では、しゅっぱーつ!!」
―――半ば強引に出発を果たし
シャッハ君の案内を頼りに、私たちは道なき道を進んでいた。
エリック君が私を前を歩く形で進んでいたわけなのだが・・・
「ねぇエリック君、ちらちら私の方見るのやめてくれない?
今の君に、私を気遣う余裕なんてあるわけないはずなんだけど?」
「・・・すいません。」
エリック君は真面目だから、ああは言っても呑込めないか・・・。
でもねエリック君、それじゃだめなんだよ。
それこそが君の問題点なんだよ。
エリック君が前のパーティでポンコツ呼ばわりされていた理由。
それは、戦闘面における結果を出せなかったことである。
弱かったから捨てられた。
当たり前と言えば、当たり前かもしれない。
だが・・・少し待ってほしい。
パーティに必要なのは、ずば抜けた戦力だけなのだろうか?
パーティを会社に、仲間をそこで働く社員に置き換えてみよう。
社員がみなずば抜けて優秀な戦力を有しているとして
それで素晴らしい会社が成り立つのだろうか?
いいや、それだけでは無理なのだ。
集団で行動する事には必ず、ストレスと言うものがついて回る。
そして社員全員が優秀であったならば、必ずどこかでぶつかるのだ。
だから、ぶつかった人間同士の間を取り持つための人材も必要だし。
更にその上から管理する、リーダー的存在の重要度はもっと高いのだ。
だから、フォローに長けたエリック君は重宝されるべき人材であり。
それを管理しきれなかった人間こそが、真のポンコツであるのだ。
そして戦闘面においても、彼はやり方次第で化けると私は見ている。
本当は一度何かしらの戦闘を踏まえて
ちゃんと確信をもってから伝えようと思ってたわけなんだけど。
正直、この調子だと実戦時がかなり不安なのだ。
「エリック君、そのままでいいから話を聞いてくれないかな?」
「・・・わかりました。」
「エリック君、君はポンコツなんかじゃない。
でも君自身も感じている通り、君には大きな問題がある。」
「・・・。」
エリック君の足が止まる。
言い方が直球過ぎたのかもしれない・・・もっと慎重に行こう。
「でも大丈夫、私が思うにその問題点はすぐになお・・・
ドゴォオオオオオオン!!!
―――私の言葉を遮ったのは、森の鳥たちをも驚かす爆音だった。
遥か前方にある木が一本、進路を塞ぐように倒れ・・・いや、倒されたのだ。
そっかぁー・・・木が倒されたかぁー。
この森の木って結構でかいよねぇー。
少なくとも私たちの倍以上の大きさはあったよねぇー。
そっかぁー・・・。
あ、エリック君尻もちついてるー。
てか、さっき足が止まったのってこれを見つけからかー。
でもわかる―、その気持ち超わかる―。
やっぱ、現地人的にもコイツってヤバいよねー。
てか、なーんで私コイツのことすっかり忘れてたんだろー?
ここって私が始めていた森ってわかってたじゃーん。
何となくこの辺、私が初めて転生された場所に似てるしー。
てか、ドンピシャ的なー?
ハハッ・・・ハ・・・
あぁ神よ、今回は確かに私が全面的に悪かったと思う。
いくらなんでも不注意過ぎました。
でもさ・・・
このタイミングで、オーガ君の再登場はないって。
期限ぎりぎり滑り込みセーフ。




