第35話:冷戦、チャラ男と私の、湯沸かしゲーム
―――私たちは怒気を纏った男たちに囲まれていた。
「おいアマ・・・そいつぁ聞き捨てならねぇな・・・。」
ブリブリ君はさっきまでの余所行きの声を低く唸らせ、威嚇を開始する。
「やめなさい、ブリプス。」
「・・・チッ。」
チャラ男のジェリド君の言葉に、大人しく従うブリブリ。
上下関係の教育はしっかりできているようだ。
「しかしお嬢さん、聞き捨てならないのは私も同じです。
少なくとも、無能と言う単語が似合うのはエリックの方ではないですか?」
ブリブリ君の猪っぷりは予定調和だったが、チャラ男に怒気の様相は見られない。
それどころかしっかり煽り返してすらきやがった・・・。
まぁ、内心はわからんけどさ。
「そうでしょうか?
エリック君があなた方に解雇された経緯について聞きました。
それを持って、私は問題があったのはエリック君ではなくあなたたち・・・
いや・・・リーダーであるあなたに問題があったと思いましたね。」
チャラ男の片眉がピクリと跳ねる。
フフッ・・・やはりプライドはしっかり持っているようだ。
「いいでしょう・・・そこまで言うなら、詳しく教えて頂いても?」
「教えても時間の無駄でしょう?
それが出来ないから無能だと言ってるんですよ・・・わかります?」
「・・・・・困りましたね、これでは話が平行線だ。」
「ええ、そうですね。
ですから、さっさとそこを退いてくれません?・・・ポンコツリーダーさん。
あなたほどのポンコツになると、そんな気持ちすら察せなくなるんでしょうか?」
「・・・・・。」
チャラ男は顔を手で覆い・・・そして小刻みに震えていた。
ほほっ♪・・・効いてる効いてる。
煽り耐性はないが、煽りスキルには結構自信があるのだ。
へへっ・・・ざまぁ。
と言うか、私たちにはボロ宿再建と言う重大な使命があるのだ。
お前らチンピラ如きに構ってる暇なんてない。
―――退く気がないようだったので、隙間を見つけて立ち去ろうとする。
「それじゃあ失礼しま・・・・
「待ちなさい。」
チャラ男がエリック君を掴んでいない方の手を掴んでくる。
「・・・暴力に訴える気ですか?
ちょっと女の子に煽られた程度で手を出すなんて、最低ですね。」
「・・・・・フフッ、そんな気は毛頭ありませんよ。」
「だったら・・・
「ただ、あなたはまだ何も証明出来てない。
あなたの方こそ、我々の名誉だけ汚して立ち去ろうとしているのでは?」
くそっ・・・思ったよりしぶといな、こいつ。
あぁ、めんどくせぇ・・・。
「そもそも、そちらがうちのエリック君にちょっかいをかけてきたのでしょう?
名誉うんぬんを言われる覚えはありません。」
「・・・勘違いしてもらっては困る。
そちらと違ってこちらにはちゃんとした名誉があるのですよ。
名誉のかけらすら持ってない君たちと違ってね。」
チャラ男の口調が少し剥がれる。
大分余裕がなくなってきたようだ。
「ほんと、平行線ですね・・・。
ただ、こちらはあなたちと押し問答してる暇はないので。
だから・・・いい加減に手を離してくれません?」
「そう邪険にしないでくれ。
・・・・・わかりました、では・・・・・勝負をしましょう?」
やっぱそう来る・・・よねぇ・・・。
これがあるから煽っちゃいけないとは分かってたんだけど・・・。
まぁ、いきなり暴力沙汰にならなかっただけましか。
「・・・嫌だと言っても、その手は離してくれないのでしょう?」
「そうなりますね。
我々の名誉はそれだけ重いと言う事ですよ。」
「それで?私とあなたが戦えばいいんですか?」
「・・・そんな野蛮なことは言いません。
そうですね・・・エリックが一月以内にB級に昇格、これでどうでしょう?」
「一月ですか・・・名誉が重いとおっしゃった割にはけち臭いですね。
あなたたちと違って、こっちは新人相手に絡んでるような暇人ではないんで。
ギリギリの時間設定ならば、くだらない勝負に時間を割く気はありません。」
「・・・いいでしょう、ならば二月以内にB級昇格で。これ以上は待てません。」
「えぇ、その程度ならばいいですよ?それなら、片手間に終わらせておけます。」
煽りつつ、時間の余裕は確保成功。
B級ってのはどの程度なのかよくわからないけど、大体中間でしょ?楽勝楽勝。
「で、私が勝ったら何をして頂けるんでしょうか?
土下座は当然として、迷惑料ぐらい頂けるんですよね?」
「ええ構いませんよ。
私のポケットマネーで支払えるまでですが・・・10万ホープでどうですか?」
10万ホープ。
えっと、確か1ホープが100円ぐらいだから・・・1000万か!?
ええやん、ええやん・・・。
試しに言ってみたけど、まさかこんな形で資金調達ができるとは・・・。
ちょっと、見直しちゃったよチャラ男のジェリド君!!
「ただし、負けたらあなたには・・・・・私のモノになってもらいます」
上げた好感度を急降下させるジェリド君の気色の悪いセリフと共に
私たちの戦いの火ぶたは切って落とされたのだった。




