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神よ、与える前に考えてくれ、トイレットペーパーは武器じゃないっ!  作者: エッチな思考の鈴木
第二章 動き始めた異世界生活
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第31話:安寧、決意の私と、無垢なる子供たち




―――気づくとそこは、フカフカのベッドの・・・


上などではなく・・・固い木製のベッドの上だった。


一応、細やかな薄い毛布(?)が掛けられていた。

お世辞にも暖かいとは言えない薄くて羽毛成分のないタイプだ。

あ、いやこれもしかして何かの皮・・・くっさっ!?

私は余りの獣臭さに、飛び起きた。


「・・・あ゛っ。」


そして飛び起きてしまったせいで、起き上がると同時に腹部の痛みを思い出す。

腹部と言うより、股の方まで痛いんだけどさ・・・。


ほんとあのクズデブ・・・ガスパーとか言ったか、絶対に許さねぇ・・・。


糞ハゲに続き、クズデブが私の復讐リストに追加された。

こう見えて私は結構執念深いのだ。

牙を向けられた相手はとことん恨むし、絶対に忘れたりもしない。


・・・やられたらやり返すんだよ・・・10倍返しでな。


さて・・・イライラしてても仕方がない。

身体の具合は良好とまでは言えないが、動けないというほどではないし。

その程度には、結構ひどい目に合ってきたと言う事か・・・。


まぁ、まずは・・・状況の確認だ。

私が寝かされていたのは木製のベッド。

周りはガランとしていて、誰かの部屋と言うよりは

・・・宿屋と考えた方がよさそうだ。

また部屋は暗く

小さなテーブルとその上には、辺りを微かに照らす小さなカンテラがある。



―――そして・・・


私の大事なポーチもその横に置かれていた。


木製のベッドを軋ませ、お腹を手で押さえながらベッドから立ち上がる。

目的のポーチの所までたどり着くと

私は何よりも先に隠しポーチへと手を伸ばす。


そこには・・・




―――無垢な寝息を立てている、可愛い可愛い我が子がいた。


あぁ・・・ほんとによかった。


これだけ確認できれば、あとは何の問題もない。

私は安堵と共に、その可愛らしいほっぺを指で優しく摩る。

そうすると、シャッハ君がその指に両手を絡みつかせてきた。


フフッ・・・愛いやつめ・・・。


しかし、安心したらなんだか急に・・・お腹がすいてきたぞ。

てか身体痛い・・・あと結構寒い。

よくよく見ると足丸出しパジャマのまんまだし・・・。


「えっと・・・上着上着・・・。」


ベッドのすぐ左上に上着がかかっているのを見つけ、上に被る。


「ふぅ・・・やっぱトサカ製のマントは温いぜぇ・・・。」


さっきのすげぇ臭い薄毛布の後だから余計に、温かさのありがたみを感じた。

そう考えると、盗賊って意外と良いもん着てるんだなぁって・・・思ったり。

そんな小さな幸せを感じていると・・・



―――この部屋の古びたドアが、軋んだ悲鳴を上げた。


そしてその隙間から・・・野生のゴブリンがこちらを覗いていた。


・・・ではなく、小さな茶髪ロングの可愛らしい少女がこちらを見ていた。

暗かったから、驚いて仰け反ってしまった。

もちろん、こんな可愛い子をゴブリンと間違えたのは申し訳ないと思っている。


私が驚きで目をぱちくりしていると、少女も目をぱちくりさせる。

そして半開きのドアをゆっくりと開ける。


「・・・お姉ちゃん、大丈夫?」


今にも消えてしまいそうなか細い声だった。

そう話かけてくる可愛らしい少女の顔を見て・・・私は色々と察した。

うん・・・この子、あの真面目くんに顔立ちが似ている。

年齢は小学生1年生ぐらい?

恐らくは娘さん・・・ってことはないか・・・。

真面目くん結構若かった気がするし、妹さんかな?

あ、でもなー・・・この世界だと別に若くても子供いる可能性はあるのか・・・。

などと私が思考を巡らせていると・・・


「・・・・・。」


少女が私の返事待ちで、不安そうにこちらを伺っている。

・・・おっと、思考が長すぎて返事を忘れていた、いけないけない。


「えっと・・・うん、大丈夫だよ?」


「ほんと?お腹・・・痛くない?」


あれ?お腹痛めてる事情は知ってるんだ。


「あっ・・・まぁ、うん、ちょっと・・・まだ痛い気もするかなぁって。」


「どの辺?」


「こ、このへんかなぁ~?」


そうすると少女が駆け寄ってきて、お腹を摩ってくれる。

うん・・・ええ子やなぁ・・・。

私の冷えていた身体が、じんわりと温められていくのがわかる。


「お兄ちゃんが・・・ごめんなさい。」


少女が上ずった声を上げ、下を向いて謝罪してくる。

そして少女は黙り・・・時間が経つと鼻をすする音が聞こえてくる。

恐らくは・・・泣いているのだろう。

でもなぜこの子は、兄のために涙を流すのだろうか?

そもそも兄が何かしたからと言って、この子が謝る必要なんて何もないはずだ。



―――私は少女と目線が合うように、しゃがんで彼女に語りかける。


「あなたのお兄さんは悪くないよ?

 それに、あなたはもっと悪くない。」


少女は首を振る。


「ううん・・・お兄ちゃんはきっと悪いことした。

 ・・・だって・・・お兄ちゃんが辛そうだったもん。」


小さい子なりの感性で状況を察しているのだろう。

だが、本当にあなたのお兄さんは悪い事・・・は、してないのだ。

と言うよりもあれは仕方ないし。

そもそも悪いのは全部あのクズデブだから、この子が泣く必要何てもっとないのだ。


だがそれでも、悪くないで通すには納得することができない、何か・・・

彼女なりの確信があるようだった。



「でもねっ・・・私がいけないのっ。

 私がねっ・・・私がいるからねっ・・・私がいるからっ・・・。」




―――涙をこぼしながら謝罪する優しい彼女を


・・・可能な限り、私は優しく抱きしめる。


理由はわからないが、何かしらの家庭の事情と言うものがあるのだろう。

真面目くんが剣を収めなくてはならなかったのも

私が予想してた以上の理由が、何かあったのかもしれない。

だから私はこの子が泣き止むまで、あなたは悪くないと宥めていた。


まだこんなに小さいのに・・・

背負う必要のない物を抱えて、涙を流す彼女はただただ・・・痛々しかった。



 

―――彼女が心の安寧を取り戻し始めるまで待ち、私は切り出す。 


「お兄ちゃんは今いるかな?」


「・・・うん、下にいる。」


「そっか・・・じゃあ、案内してもらってもいいかな?」


「・・・うん。」


正直、私としては真面目くんには恨みなんて全くないし

こうやって泊めてくれてくれた優しさに、感謝さえしているのだ。


まぁ、なんだ・・・これも何かの縁だ。

こう見えても、生前は悩み事解決のプロだったのだ。

こういうのを見てしまったら、きっちり解決してってあげようじゃないか。


任せなさい、真面目くん!

任せなさい、優しい妹ちゃん!!


あっ・・・でもその前に・・・・・。





私の決意とは裏腹に、私のお腹は・・・間抜けな悲鳴を上げていた。




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