第27話:別れ、割れ物注意の狼男と、血迷った赤ずきん
―――焚火を囲み、隣り合って座る無知な狼男と迷える少女がいた。
「・・・。」
「ミヤウェー・・・なんか変わった名前してるな。」
「・・・・・。」
「・・・っておい、何て言う顔してんだよお前・・・。」
「・・・あ、うん、ごめん。」
宮上美琴・・・何なんだろなぁこの名前。
思考タイム0秒で発せられたもんなぁ・・・。
てか、自分の名前はわかるよね!?
えっと・・・・・
・・・宮・・・宮下・・・宮下しん・・・そう、宮下神司っ!!
っぶねーーー。
流石にここで名前すら失ってたら本気で泣いてたよ。
しかし・・・じゃあ宮上美琴って何なんだろ?
うーん、どう考えても女の子の名前っぽいし・・・。
宮までは一緒なのね・・・てか、漢字まで何かわかる。
うん・・・ナニコレ、こっわ!?
あ・・・でもさ。
乙女心スキル獲得とかも、もしかしてこのミコトちゃんが関係するのだろうか?
うーん、でも関係するって言ってもなぁ・・・。
「そういやお前、記憶喪失のふりをしてたんだよな?
もしかして・・・結構本当の話だったのか?」
「えっ・・・あっ、うん、まぁ、ほんと。」
「・・・そうなのか。
俺はてっきり、家出でもしてきた世間知らずかなんかだと。
・・・何か、すまなかったな。」
「いや、まぁ、全然覚えてなくもないんだけど・・・。
ほとんど断片的で・・・。
でもここって、元々住んでたところと全然違ってるし・・・
常識も全然知らないのばっかりって感じで、もう何と言うか・・・」
ダメだ、やっぱ自分の関連の事は考えるとなんか混乱してくる・・・。
やめやめっ!
悩んでも一文の得にならないのは私の主義ではないっ!!
「そ、そうか・・・なんか本当にすまなかった。」
あれ?なんか落ち込んでる?
てか・・・何か、最後だって言うのに空気が重くない?
だめだ、これはよくないっ!!
「話は変わるんだけどさっ!
ミヤウェーってのは、そっちが名前じゃないんだよ。
ミコト・ミヤウェー、こっちが正しい名前。
私のせか・・・生まれ育った場所だと名前と姓が逆だったんだ。」
なんとなく、ミヤウエという日本語の発音は目立つような気もしたので
ルードの発音に合わせてみた。
やっぱ現地人の文化にある程度合わせていかないと
後々に何かあるかもしれないし。
「・・・・・本当に文化から違うんだな。
しかし、翡翠の乙女ってのは変わった名付け方をするんだな。」
あっ・・・うん、翡翠の乙女・・・ね。
そもそも、そこからなのだよね。
私は髪がただ緑色なだけで、その翡翠の乙女とやらではない。
だから
私は翡翠の乙女ではなく、黒髪の日本人女性であると説明してみる事にした。
変な誤解は解いておきたかったのだ。
もちろん、元男だと言う事は伏せるよ、うん。
それに関しては隠し通すのがお互いのためでもあるのだ。
「・・・なんか・・・本当にすまん・・・。」
・・・ん?違くない?
ニホンジンってなーに?って言う質問とかを期待してたんですけどー?
てか、あかん・・・話変えるつもりが、また空気が重くなってる気が・・・。
てかさ・・・ルード君・・・本気でめっちゃ落ち込んじゃってない?
違う、違うんだよぉ?
そ、そんなつもりじゃなくてねっ!?
「ルードは悪くないからっ!!
むしろ、おかげで本当に助かったというかねっ!ねっ?」
「・・・おぅ。」
だめだっ!!
完全に落ち込んでるよっ、このガラスハート狼!!
まぁ、そうだよね!!
せめて青刻の悪魔と同族だから勘違いしても・・・ぐらいはあったんだもんね!!
全然無関係かつ非力な女の子を勘違いで全力で襲ったとなればそうなるよねっ!!
でも、このタイミングでそんな落ち込まないでよっ!!
散々お世話になった恩人に、別れの前にこの感じは私の方こそ落ち込むわっ!!!
「・・・すまん。」
あっ、ダメだこの流れ・・・
仮に、フォローできたとしても小骨がつっかえた様な状態で終わるっ!!
てか、そんな巨体でそんな捨てられた犬みたいな感じやめてっ!?
ちょっと可愛い・・・じゃなくてっ!?
えーとっ・・・どうするどうする・・・
どうす・・・あぁ・・・うん・・・う~ん・・・・・
―――あぁ・・・もうっ!!・・・・・しかたないなっ!!!
「ルードっ!!こっち向けっ!!!」
「・・・お、おぅ?・・・・・・―――――!!?」
―――鼓動が早すぎて、意識をしても止まらぬ熱量。
これはお礼・・・そう、ただのお礼。
不本意ではあるが、仕方のない行為っ!!
だから・・・ノーカン、色々ノーカン!!!
―――私は感じるままに流される。
それは憧れのレモンの味・・・などではなく、もっと艶めかしい何か。
逃れぬ感情を、秘めた想いを・・・私は隠す。
歌に乗せて、誰かに乗せて、心を隠して乱れ散る。
コレはおませな赤ずきん
乙女心の成すがまま、気弱な狼食らってしまう
抑えきれない感情に、少しのつもりで止まらぬ熱情
貪り食らったその先に、真っ赤に熟れた2つの林檎
爛れた果汁を引き延ばし、終わりを求めて離れ退く
だけども狂った狼は、逃すまいかと私を掴む
澄んだ瞳が私を突き刺して、迷う心も逃がさない
身をゆだねたその先に、待つのは愛か獣か
私はいけない赤ずきん
狼狂わす・・・とっても悪い、悪ずきん
あっ、うん、もう完結でもいいかなって、そんな気持ちになった。
いや、しないけどね!?




