第25話:躾、悪い大人と、無垢なる心
シャッハ君の教育方法は、別に難しい物ではなかった。
木から吊るし、何もしない・・・ただそれだけ。
そしてそれを・・・3日間行った。
その間、シャッハ君は飲まず食わずだった。
でも、ハスマッチョの話によると
高位体と言う存在は、そもそも食事と言うものが必ずしも必要な物ではなく。
あくまでもそれは味覚と言う娯楽でしかないらしい。
また、シャッハ君の様に幼い思考を持った高位体に関しては
依存対象とのコミュニケーションを深めるために行う者もいるとか。
ただ、高位体と言う存在自体が『神から与えられしモノ』と言われ。
希少すぎる故に、そのほとんどが詳しくは解明されていないらしい。
だから
―――私は確実に、この子を使役出来るようにならなければいけない。
シャッハ君は人の子ではない・・・何者かわからない化け物なのだ。
ここで少しでも甘さを見せれば
私は彼に・・・シャッハ君を殺してもらわなくれはいけなくなる。
そうすることが、私が人間社会で生きるための義務であるから。
その選択を選ぶことが・・・私たち人間の嵯峨であるからだ。
それでもシャッハ君を人と同列に扱えないことが、私はひどく寂しい。
それでも・・・これは必要なことなのだ。
だから私は、ただ静かに、笑顔を作らず、涙を見せず、ただ見つめ続ける。
早くこの苦い時間が終わってくれることを願って。
当初の計画では、本当は7日間実施することを予定していた。
ハスマッチョの推測では、私は何度も操られるはずだから
そのぐらいの期間は必要だろうと言う事だった。
もちろん、ハスマッチョがいる間は大人しくしている可能性もあったため
ハスマッチョは去ったふりをして、遠くで監視していた。
そして、私は食事の時間になるとその場を去った。
これが1日5回。
5回と言う数字は
シャッハ君が普段私に食事を持って来てくれた回数からきている。
会話ができない以上、徹底的に『拒絶』をアピールしなければいけないのだ。
―――でも、シャッハ君は一度も私を操ろうとはしなかった。
だから、初めは死んでしまったのではないかとパニックになりかけた。
でもそれが、シャッハ君の作戦かもしれないと疑いもした。
高位体は、存在している時点で生命活動が停止していることはないらしい。
故に、疑うべきは後者だった。
そして、3日目に私たちはシャッハ君の縄を解いた。
信頼したからではなく・・・疑うために。
―――でも、シャッハ君は動かなかった。
一歩も、動かなかった。
降ろされた時、シャッハ君は一度だけ私の方を一瞥した。
でもそれ以降は、ただ下を向き続けていた。
それだけじゃない。
シャッハ君は座ることすらもしなかった。
ずっと・・・ずっと、ただ立ち続けていた。
―――それが、彼なりの・・・謝罪であった。
私は瞳の奥から溢れ出そうとしている何かを押させこみながら
優しくて厳しい監督官に視線を移す。
そして・・・彼はただ、ゆっくりと頷いてくれた。
その瞬間、この子の謝罪はこれで終わりを告げた。
―――この子は十分にわかっていた。
自分がしたことも。
自分が次にすべきことも。
確かに、この子の行いは幼稚であるが故に、邪悪であったかもしれない。
でも、この子は子供であるが故に、綺麗な心を持っている。
―――だから・・・次は私の番だ。
これから先、私はこの人生をかけて、この子の想いに報いていかなければならない。
この綺麗な心を守ってやっていかなければならい。
少しでも正しき道へ導いて行かなくてはならない。
だから、これから行う甘やかしは、私のためでしかない。
それでも・・・私はこの子に謝りたい。
この子の想いが私に伝わったことを、何かで伝えてあげたい。
―――だから、これはただの決意表明だ。
くだらない行為だと笑ってくれて構わない。
自己満足以外の何物でもないと責めてくれても構わない。
だから今だけ、今だけは・・・
この愛しいモノを、抱きしめさせて欲しい。
重い話が連続してしまったけども、取り敢えず彼らの谷は越えたかと。
最後の一文に関しては、10話と一緒の様で若干違ってたり。
ペットを飼っている人の気持ちは私にはわかりませんが
人とは違う以上、愛だけでかたずけてはいけないんじゃないかなって。
ペットは何も悪くない。
けれど、飼い主は人間社会で生きる『人』だから、鞭も必要なんだと。
責任を果たすことも愛なのだよと。
そんな個人思想。
次回からは流石に話を明るくしたいっ!




