第16話:騙し合い、マッチョと私、初めてのお泊りデート
あれから、アジトがあったフクロウが鳴り響く夜の森を抜け
私たちは夜風が吹き付ける断崖絶壁の崖道を、優雅に歩いていた。
・・・もう一度言う、優雅に歩いていた。
いや、急げよっ!!
と言う、ツッコミはやめて頂きたい。
勿論、私はするがねっ!
―――こんな感じでこの男、まるで正体を隠す気がな・・・
「ここまで来ればいいでしょう、 そこの崖穴で一休みしましょうか。」
だから、その顔に似合わない口調をやめろっ!!
お前さぁ・・・絶対に素はオラオラ系のしゃべり方だろ?そうなんだろ!?
・・・とまぁ、
ハスキーマッチョこと自称商人君の方は、現在も優男プレイを継続中である。
いや、正直なところさ・・・
コイツの目的がさっぱりわからんっ!!
―――当初の私の予想では、
私を手に入れて売り払おうとした糞ハゲたちに対して
コイツは糞ハゲ一味とは別のグループであり
私個人では飽き足らず、私の仲間もろとも手に入れようとしてるド悪党。
―――悪の権化こと・・・奴隷商人ではないかと
思ってたわけなのだがね!
もちろん、翡翠の乙女の友達なんて、そもそもいないんだけどさ。
と言うか、それ以前にさ・・・
どうも、雰囲気違うんだよなぁ・・・。
奴隷商人にしては何と言うか・・・こう・・・
「うぉっ!?」
「大丈夫かっ、ですか!?
この辺は地盤が脆い・・・気をつけてくれ・・・さいね。」
「あ、ありがとう・・・。」
私が地面を踏み外したのを抱きかかえる様にして
引っ張り上げてくれたハスキーマッチョ。
カラコロと落ちていく崩れた岩盤は、ゆっくりと崩れて小さな存在となっていく。
まるでそれが私の今を示唆する何かであるように
断崖絶壁の闇の底に飲み込まれて、そして消えていった。
それが見せたのは
死への恐怖だったのか、未来への不安だったのか
今の私には漠然としか理解はできなかったが
それでも、私を抱き寄せてくれた温もりは
今と、そして今までの私を、いくらかは救ってくれた。
―――私はさ・・・思うのだよ。
今助けてくれたのだって
ちゃんと後ろに目を配ってくれてるからこそではないかと。
そもそも、何も言わずに私の前を歩いてくれて。
私がこけそうな岩なんかをどかしてってくれて。
少し疲れた様子を見せれば
大丈夫かって、声をかけてくれるのだ。
詰まるところ・・・めっちゃ紳士なんだよなぁ、コイツ。
私が女なら惚れてるかもな、うん。
・・・いや、流石にそれはチョロすぎか。
まぁ、だからさ・・・
今、コイツがめっちゃボロ出してたのはスルーしてやろう。
そう、めっちゃ後付けの敬語付け足してたけど、スルーしてやろう。
ただ、ただな、ハスキーマッチョ君よ・・・。
「オシリ サワッテル。」
「はっ!?すまっ、もっ、も、申し訳ないっ!!」
私に痴漢するのやめてください宣告を受けたハスキーマッチョ君は
あからさまにキョドっていた。
顔を乙女の様に赤らめ、慌てて私を抱きしめていた手を緩めて
その逞しい両腕で、力いっぱい胸板に押しつぶしていた私の顔を引き離す。
まぁ、減るもんじゃないしいいんだけどさ。
おかげで、面白い反応も見れたし。
しかしさ、何だかんだここまで結構歩いたおかげで、
今日は疲れたんだよハスマッチョ。
―――私は、倒れ込むようにして、指定された寝床へと駆け込んだ。
こうして、
私とハスマッチョの1日目は、崖穴お泊りデートで幕を閉じようとしていた。
ついでに
紳士な私は
先ほどの感謝の意を込めて、ハスマッチョにささやかなプレゼントをする。
もちろん、これはただのお礼だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
まぁ、だからさ・・・
「サムイ。」と言って、くっついて添い寝してあげた。




