第1話:始まりは、ギャグテイストに、残酷に
神よ……
「―――おまえは馬鹿かっ!!?」
あぁ、この私のやるせない想いっ!
そして、私にこんなものを渡して転生させた頭のおかしい神の所業についてっ!!
私に語らせてくれ、いや無理やりにでも勝手に語るっ!!!
―――時間を巻き戻すこと30分前……
私は日本と言うストレスまみれの国で悲しいほどに輝かしくない人生を30年近く。
それでも前向きに過ごしてた善良な一般人だったわけだが……。
今回、実にしょうもない死に方でその生涯に幕を閉じた。
詳しい死因ついては割愛しよう……思い出したくもない。
―――だが、大事なことは過去よりも、今だ。
なうで一番大事なことは
私が新たな土地へと転生し、定番の知らない草地で
見たこともない植物や木々に囲まれていたと言うこの状況だ。
しかも、この状況を理解するための神様によるチュートリアル的な前置きだって受講した覚えはない。
つまりは……
いきなり危険な戦闘フィールドに投げ出されてしまうタイプの
異世界転生モノとしては、極めてハードな始まり方であったと言うわけだっ!!
少なくともこの時点で、この不親切な神への好感度はちり紙レベルだよっ!!
「……まぁ、落ち着こう。」
確かにここまでは最悪な状況だ。
しかし……しかしだ、諸君。
逆に言えば、こんな危険な状況だからこそ。
今私は……チート武器的な何かがあるのではないか?
と、私は閃いてしまったわけだ……。
そして……そんな希望を抱く私の右手には。
……確かな手ごたえがあった。
―――勝った。
間違いない……私の第2の人生は勝利したっ!!
ここから始まる、私のチートハーレムライフ!!
いや、私はハーレムよりは純愛派なので美女とのラブロマンスの方が正解かなぁ?
あぁ……思わず顔が緩んでしまう。
全く神め。
ハードモードと見せかけて、ちゃんとチート武器を手に握らせて置くとは。
中々に憎い事をしてくれるじゃないか。
……いやいやしかし、調子に乗り過ぎてはいけないな。
チートに奢らず、もう少し控えめに行くのが堅実的だ。
うーん、そうだな……。
手始めに、この最強を手に悪人たちをバッタバッタと倒し。
その報奨金なんかで生計を立てたりしちゃったりしちゃって……。
大金を手にし、この世界を観光しながら……旨いもんを食べ歩く。
……うん、これだけでも実に……実に最高じゃないかっ!?
……フッフッフ。
まぁ、何にせよだ。
ここから私の底辺ライフは変わるのだっ!
勝ち組ライフへと、転向してゆくのだっ!!
この……
「トイレットペーパーと共にっ!!!」
……ん?(驚愕)
んー?(疑問符)
ん~……。(整理中)
は?(笑顔)
4度見した。
念のため、改めて状況を整理し直してみたのだが……。
んー……違うな、これは違うと思うんだ、神。
と言うかさ、神よぉ……
「どないせぇっちゅうねんっ!?」
「神、おい、神ぃっ!お前は馬鹿かっ!?
これ武器ちゃうっ、日用製品じゃっボケェ!!」
「お前にはこれが武器に見えたんかっ?
それともあれかっ?神の世界じゃ、これ武器に入るんか!?」
「でもこれ、ふわっふわやんけっ!!
私の愛用してた匂いつきの、お尻にちょー優しいタイプの奴やんけっ!!」
「絶対、武器にしても1ダメージも入らん奴やろがっ!!
寧ろ、ダメージどころか、ふわもふで回復すらしそうな奴やんかっ!!」
「おい、神ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」
―――誰にも伝わらぬエセ関西弁が、虚しく森に木霊する。
え、てかほんと……どうしよう……。
お客様の中にトイレットペーパーのプロはおりませんか?
私は、これを使って生き抜く方法が検討もつきません。
お願いします……。
誰か、これを使って一体何ができるのかを教えてください……。
―――そして時は冒頭へと戻る。
私はあまりの状況に、無慈悲に吹き付ける冷たい風に煽られ
Fなんちゃらで有り金全部溶かしてしまった様な間抜けた顔で放心していた。
いや、確かに神への好感度はちり紙レベルだと言ったがっ!
それはトイレットペーパーが欲しいということではないっ!!
何だこれは……ブラックコーヒーよりもビターな神なりの冗談か何かなのか!?
フォッフォッフォ、主人公くん。
正直者の君にはこのおトイレ専用の上質なちり紙を与えよう、フォッフォッフォ。
フォッフォッフォ……。
フォッフォッ……。
フォッ……。
「何がフォッフォッフォじゃっ!!!」
あぁ、もうっ!!
こんなアホな思考漫才繰り返しても意味がないっ!!
とにかく、とにかくだ……一旦冷静になろう。
もしかしたら……そのもしかしたらがあるかもしれない。
―――私は他にも何か持っていないか、身の回りの確認を開始した。
着ている物は生前まで着ていた水色の長袖の秋用パジャマ。
機動性が高く、ポジショング能力も優れた完璧で最高の逸品だ。
ポケットには、食べようと思って冷蔵庫から出していたチョコレートが数個。
他に何か周りに落ちてないかと見渡してみたものの、何もなし。
んーー……ここまでの事を踏まえると
転生後の姿は転生前の30過ぎたおっさんまんまと言うこと……なのか。
まぁ、鏡がないので、正確な確認は取れないのだが……。
ん……?待てよ?
と言うか、そう考えるとこれは転生と言うか転移と言えるのだろうか?
いやいや、でも一度は死んだのは確実だしなぁ……。
うん、よくわからんっ!
結局の所、私の手元にあるのは―――トイレットペーパーと言う事実だけ。
……まだだ。
早合点はよくない。
まだ、このトイレットペーパーがただの日用製品と決まったわけじゃないっ!!
魔法の呪文で鋼鉄の固さになるとか!
敵に投げつけると超強烈な爆裂魔法が発動するとかっ!!
実は食べると不思議なオーラに包まれて、最強になるとかっ!!!
私の知らないトイレットペーパー君の秘めたる能力がきっとあるは……!!
―――10分後
結果だけを述べれば……全然そんなことはなかった。
試行その1
手に巻き付けて、近くの木を殴ってみた。
答え:痛い。
試行その2
何となくそれっぽい呪文と爆発をイメージしながら木に投げてつけてみた。
答え:跳ね返ってきた。
試行その3
一枚破って食べてみた。
答え:吐いた。
涙が……涙が出てくるよぉ……。
やはり、私は不幸の元に生まれてきた存在なのか……。
転生前の死に方だって
きっと男なら絶対に死にたくない死に方ベストワ……。
……だめだ。
こういう考え方はよくない。
いつもの……いつもの私らしく行こう。
そう、ポジティブ……ポジティブに考えるんだ。
幸い私と言う人間は、ラノベの主人公の様に両親や他に家族もいない。
職場の連中だって、特に好きではなかったし。
引継ぎなんかで困ってると思えば、ちょっとスッキリする。
他に、俺が死んだところで嘆くような人間も……
いや……一人はいたな。
お互い、住んでる場所も離れてて、ちゃんと会ってはいないが
メールでお互いを励まし合う様な親友はいた。
アイツのおかげで、ここまでの人生頑張ってこれたと言っても過言じゃない。
お礼とか……ちゃんと言ったことなかったかもしれない。
アイツからしたら、いきなり音信不通になった風にしか見えないのか……。
「……悪い。」
……ダメだ、またネガティブになってる。
ポジティブ……ポジティブで行くんだよ、私。
そうだな……とにかく、この森を出て人がいるとこを探してみよう。
丁度、日も落ち始めてるし、行動は早い方がいい。
まずは第一村人との接触と、可能な限りの衣食住の確保!
「話はそれから……。」
パキッ
―――不意に背中の方から音がした。
これは……地面に落ちている小枝か何かが折れた音。
音の聞こえ方から、距離はきっと目視できるようなとても近い場所。
ただ、何かが小枝の上に落ちて折れたというよりもだ……。
何者かが踏みつけた と私は感じたのだ。
それも、自分の背丈よりもずっと遥かに大きな……。
何と言うか、これはその……。
―――愚かな私はそこでようやく振り向く。
血走った目
何かに興奮してるような荒い鼻息
下顎と、おデコから突き出た二つの大きな牙と角
私の瞳に映りきらない、大きな身体
その手には、私など一振りで消し飛んでしまいそうな巨大な棍棒
それは、誰もが知っているあの怪物
それは、この状況で最も出会いたくないモノ
鼻息を大きく息巻きながらよだれを垂れ流す、緑の大男―――
……オーガだった。
トイレで思いついてしまったので書くしかなかった。
短い連載だろうけど、完結はさせようと思ってる。
なるべく、エッチな方向で物語を進めたい。(願望)
内容はタグの方向で進行したいと思う。多分。
チートに関しては程々で進行していきたい。
<追記>
1月23日に超改変しました。
2月28日に中程度の改変しました。
3月13日に中程度の改変しました。