プロローグ
ステージの熱。
背中から迫り来る音の渦。
驚くほど海を思わせる、ギターのセンリツ。
正面から受けた白いライトの向こうに見える、誰か。
変わらない。
あの頃も、今も、何も。
熱に浮かされるように、私は、ほんの少しだけ、笑う。
"プロローグ"
ーーユリエさん、初期の作品は、今も根強いファンがいるようですが、当時と今ではテイストがだいぶ違いますよね?
「はい。作曲してる人が違うので」
ーー初期の頃の曲は、昔のバンドの曲だということですが
「学生の頃にやっていたバンドです。私のデビューが決まると同時に解散になりました」
ーー曲だけは使って、ということですよね?
「そうです」
ーーなんだか業界的な闇を感じるお話ですが笑
「私が頼みました。どうしても、デビューするなら今のバンドの曲がやりたい、って」
ーーなるほど、惚れ込んでいたというわけですね。
「そうです。」
ーーユリエさん、ストレートですねー!
「嘘をつく必要が?」
ーーさすが、"笑わない歌姫"。発言がクールです!
ずっと同じ人に作ってもらうのではなく、徐々にテイストが変わったのはなぜですか?
前はかなりロックテイストでしたが、今はロックというよりポップスに近いですよね?
「大人に...」
ーーはい。
「大人に、ならなければならないと、思ったから、です。」
ーー大人、ですか?
「私は、あの曲たちに、熱烈に恋をしていた。今でも、そう。苦しいほどに恋い焦がれています。でも、恋は永遠ではない。愛に変えなくては。愛を知らなくては。大人になって初めて、あの頃を愛せると思ったからです。」
ーーなるほど
「だからこれは、私が、生まれて初めて恋を知って、愛するために離れていく、物語なんです」