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死人が通報してきた?


俺はその言葉の意味がわからず周りにクエスチョンマークをかなりの数飛ばしていた。まさか生き返って?でもそれだと黄龍ファンロンの復元能力を使う意味が無くなる。しかも俺たちと死神区が組む必要さえ無くなる。


「つか、どうして死人が通報してきたってわかったんだ?」

「スマートフォンから通報されたのですが、その死体達が所持していたスマートフォンはロックを解除しないと電話がかけられないよう設定してありましてねぇ…しかもそのロックが声紋認証式だったんですよ」

「いやでも殺される前に電話したんじゃ?」

「いや、それはありません。何せ通報した際に言った言葉は《魔術師に殺されたから捜査してくれ》ですからねぇ。死ぬ前に、しかも殺される間際にそんな事言いますかぁ?普通。それに死体はスマートフォンを握っていましたし。腐ってドロドロの死体に貴方はスマートフォンを握らせる事ができますか?」


樂条の言葉に俺は否としか答える事ができない。たとえ術師でも死体を操る事は出来ないし、どんな事をしたって触れば崩れてしまう腐敗した死体にスマートフォンを握らせる事は出来ないからだ。


駕城も面倒くさそうに頷いていた。なんだか今回の事件は面倒くさそうだな。


「失礼します。資料をお届けに参りました」


だるー、とそう思いズルズルとソファから落ちそうになると、女性用の制服を着た奴が入ってきた。腕章を見ると『本部付事務官』と書かれていた。


「ありがとー、ていうか君可愛いね、今度遊ばギャッ」


カインが口説き文句を最後まで言えなかったのは、隣に座る樂条が脇腹に一発お見舞いしたからだ。痛そ…何気樂条って力強いんだよね。


「ほら、渡したらさっさと戻りなさい。いつまで居座るつもりですか?図々しい…」


わざわざ持ってきてくれた女には目もくれず突き放す樂条。ったく、こいつ黄龍ファンロン以外の女にはほんっと厳しいんだからよ。ま、男にもだけど。


女は頭を下げて部屋から出て行った。駕城もまたため息を吐いてやれやれと首を振っている。どうやらいつもは傲岸不遜なこの上司もこいつらは苦手なようだ。まぁ周りから浮いてるくらいの方が死神区はやってけるが。

何せ術師による殺人が一番多い区だしな。


「ああ、もっと死人がかけてきたとう確固たる証拠が出来てきましたよ」


嫌な笑みを浮かべて樂城は俺たちに分厚いファイルのある一ページを開いたまま渡してきた。そこにはさっき捕まえた女の奴みたいに細かい情報が載っていた。クロも覗き込んできて少し窮屈になる。そんな中見つけたある漢字二文字。『死亡』という二文字。その隣に書かれた『二〇〇〇年十一月九日』という文字列。その数字が書かれている欄は『死亡した日にち』を示すものでーーー。


「今から、二十年前に…死んでんのか、もう」

「なら腐っていても不思議はありませんねぇ。どちらにせよ、死体を観に行く必要が出てきましたぁ。今から行きましょうか」

「どこに」

「阿保ですかぁ?もう死体は回収されていますから司法解剖を観に行くんですよ。近くのK大に回収されたようですからねぇ」


樂城はゆっくりと立ち上がると隣の部屋に入って暫くして戻ってきた。青いチャイナドレスを着た女と一緒に。そいつが出てきた瞬間クロが猫が威嚇する時みたいに喉を鳴らした。クロとそいつ、東堂院黄龍とうどういんきたつは犬猿の仲という言葉も可哀想になるくらい仲が悪い。

黄龍の読み方は本当は『きたつ』なんだけれど、本人はその呼び方が大層嫌いなようで、間違ってもその名前で呼ぶと軽く百年は日の目を見れなくなるので皆中国読みで黄龍ファンロンと呼んでいる。


「なんじゃ、変に猫臭いと思ったら乳離れのできん猫がおったのか。図体ばかり大きくなって…オツムは空っぽじゃろうて」


ころころと鈴の音の様な声でそう悪態を吐く姿も様になる程、黄龍は綺麗だ。狐とは真反対だが…現代の妲己というところか。ある意味。群青の髪を高い位置で一つに纏めてゆるーくカールしている。目はクロと同じ金目だ。


「こらこら、仮にも仲間にそんな事を言うもんじゃありませんよぉ。黄龍ファンロン。世界広しと言えども四人しかいない”仲間”もいるんですし」


いつもとなんら変わらない口調で樂城は俺とクロを見ながら言う。


世界広しと言えども。

確かにそうだ。

クロや黄龍ファンロンの様に”四神”の力を持った人間は四人しかいない。そしてそれを使役できる人間も四人しかいない。


古代中国の時代から伝わる霊獣”四神”、青龍、白虎、朱雀、玄武、それぞれの力をその身に宿した術師がいる。分類としては神道術師として分類されるようだ。神道術は”神の力を借りる”術だが”四神”の神道術はまたそれとは別次元の話になる。


その存在自体が神に近いのだ。


神道術師は別に神の力を持っているわけじゃない。あくまでも借りているだけだ。だがクロ達”四神”は神の力を持っている。だが彼等は彼等自身でその力を行使する事が出来ない。


だから俺達”四神使”がいる。


「ふふ、千夜成がそう言うのなら言わないでおこう。さてわっちを起こしたんじゃ、何か面白い事でもあるんじゃろ?千夜成」

「まぁ、ね。早いとこ行ってさっさと解決させてしまおうか」


樂城が満面の笑みを浮かべながら黄龍ファンロンを抱きかかえる。こいつ、態度はデカイくせに背はちっちゃいんだよな。言うと怒るから言わないけど。








◇◇◇◇◇◇◇


俺、クロ、駕城、カインは樂城の先導で本部を出た。まるでトンボ帰りでもするようで泣けてくる。しかもそれが家に帰るんじゃなくて事件現場に行くっていうんだから尚更泣けてくる。


「そうそう、今度沙羅さんが帰ってくるそうですから、本部もまた忙しくなりますよぉ」


表の警視庁の地下駐車場に着くと真っ黒いリムジンに乗りこんだ。相変わらず無駄な経費はあるんだな。


「あの人荒らすだけ荒らして帰るからねー。美人だけど俺は苦手だなー」


カインが運転席に座りエンジンをかけた。運転手はいないんだ…。


クロはまださっきの疲れが抜けないみたいで俺に体を預けて船を漕いでいる。ふんわりとした柔らかい髪がゆらゆ揺れていた。


こいつの体が真っ白なのもこいつが『白虎』であるが故だ。”四神”の力を持った術師はその持っている四神の力によって身体的特徴が変わる。『青龍』の力を持っている黄龍ファンロンの髪は群青だし。確か爪も青だったな。


四神の術師は二人で一組だ。”四神”の力を持った術師と、それを行使し制御する”四神使”。俺はクロの四神使だ。十五の時から一緒にいるからもう五年の付き合いだ。まだ五年という感じもするのは、目の前にいる黄龍ファンロンと樂城が十八年の時を共に過ごしているというのを知っているからだろう。


なんだかんだ言って仲のいい二人をいいなーと思っていると車が止まった。


「もう着いたのか?」


いくらなんでも速いと思う。それは駕城も樂城も同感だったようで運転席を覗く。


「いやー、それが、動かないんですよね?」


周りを見れば、道路を走っている車は全部止まっている。信号は青だ。反対側四車線も同じ状況だった。

どういう事だ?

駕城も俺も皆、首をかしげる。ドアを開けてみようにも開かない。


「何故だ…?」


駕城はそう呟く。


「術が…使えない…」


若干、焦りを交えた声で。
















◇◇◇◇◇◇◇◇


「行かせないっすよー。まだ君っちに動かれたら面倒なんすよね」

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