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本部は女帝区の隣の皇帝区にある警視庁の地下にある。

そこに入れるのはほんの一握りの人間だけ。俺はその一握りの人間だ。何故ただの大学生がそんなところに入れるのかと言うとただ単にただの大学生じゃないからだ。


俺の役職名は警視庁裏捜査一課刑事。


裏捜査一課がどういったところか、と問われれば俺はすぐに答える事ができる。先ほど言った術師の取り締まりが仕事だ。だがそれはあくまでも一般には公開されていない。故に「裏」などという言葉が頭に来る。何故一般に公開されていないかというと、理由は簡単。一般には公開できないからだ。

術師を取り締まる際。俺たちは何をしてもいい。


殺しても

痛めつけても

拷問しても

性処理の道具にしても

どんなに非道い事をしても

許される。


そんな事が国民に知れてみろ。あっという間に日本という国は潰れる。何もしていない術師から批判を受け偽善者がそれを煽り一般市民はマスメディアに流され政府は終わる。


だから。

「裏」なのだ。


俺はそんな組織に属している。この組織は意外と大きくて歴史もあるらしく海外にも支部があるようだ。俺は日本から出た事がないし秘密主義の組織な為そういった事はほとんど知らない。


普通の警視庁、要するに普段一般人が見ている警視庁の屋上に着くと俺は拘束した女を担いで専用のエレベーターに乗り込んだ。このエレベーターは一気に地下の裏警視庁まで行く。クロはもう人型に戻っていて眠そうだった。虎になるといつもこうだ。相当体力を使うらしい。


「ねー着いたら寝ていい〜?」


ふにゃふにゃになった声音で寄りかかりながらそう聞いてくる。


「いいけど部屋着くまで寝んなよ」

「うん〜」


クロがそう頷くのと同時にチンッと音が鳴って目的の階に着いた事が分かる。俺はクロを引きずりながら薄暗い廊下を歩いた。途中何人かの人とすれ違った。こんな時間に人がいるのは少し珍しい。ここに勤めている人間は大抵夜に仕事があるからだ。


無機質な長い廊下の突き当たり。英国とかの屋敷の扉みたいに、豪奢な彫刻のされた扉がある。そこに駕城はいるはずだ。そこが彼の部屋の筈だからだ。


「入るぞ」


ガチャンと開ければそこにはやっぱり、駕城楓がいた。


「遅い。もっと手際よく捕まえろ」

「あんたはいっつも遅い遅いって言うけどな。俺は速い方だぞ。クロがいるんだし」

「それをもっと生かせと言っているんだ。何故わからん」


ほんと、ああ言えばこう言うって、この人の為にあるんじゃないかって本気で思う。

駕城は黒檀の執務机に書類を広げていて眼鏡をかけていた。書類仕事をする時はいつもかけている。そっちの方が目付きが悪いのが多少、多少緩和されるからいつもそうしていればいいと思う。


「ほらよ、薬打ってるから今は気絶してるけど縄は普通の縄だ。早いとこ牢屋に入れるんだな」

「わかった、弾凪が呼んでいたぞ。お前検診に行ってないな?命令だ、今すぐ行ってこい」

「げ、ばれた…りょーかいりょーかい、行ってきますよ。行くからクロを頼みましたよ。部屋に連れてっておいて下さい」


女をドサッと床に落として俺はやってらんねーとばかりに手を振って部屋を出た。後ろで駕城の盛大なため息が聞こえた気がしたが関係ない聞こえない無視だ無視。大方クロを預けられたのが面倒なだけだろう。あいつ駕城には懐いてないからな。




駕城の言っていた弾凪というのは裏捜一専属の医者の事だ。弾凪渚はじなぎなぎさ。それがフルネームだ。普通に美人で医者としての腕もいい。

彼女のいる医務室は駕城の部屋から少し離れた所にある。同じ階にあるだけでもまだ救いがある。裏捜査一課は地下八階建てとかいう非現実的な広さだからだ。ちなみに駕城の部屋は地下一階。下に行くにつれて二、三、と下がっていく。俺は持ち家があるからあんまり本部には来ないけれど家がない人はここの寮に住んでいる。寮は五階だ。


「あーあ、検診サボるんじゃなかった…」


いつの間にか医務室に着いていた。

アニメとかに出てきそうな…ラボみたいな部屋が目の前に広がっている。エヴ◯のジオ◯フロントみたいな雰囲気だ。いやなんて言うのか、ザ・近未来みたいな施設だ、そこだけ。


「ナギー、いるか?」


恐る恐る自動ドアの前に立ち、扉が開くと俺は顔だけ中に突っ込んでそう言う。すると奥からダダダダという音が聞こえてきた。


「トーリっ、検診に来いってあれ程言ったでしょーが!」

「グホォッ!」

「ただでさえあんたは壊れやすいんだから!あーしかもまた黒虎使ったでしょー!ほんとに手がかかるんだから!」


はい、この高い声でキャンキャン吠えてドロップキックかましてきた金髪美少女が弾凪渚です。ゆるーく巻いた背中まで流れる金髪によく似合った碧眼。何気スタイルがよくて背は女にしちゃ高め。ま、俺よりも低いけど。


「痛いから、ねぇ何気痛いから。襟引っ張って引きずるのやめてくれないっ!?」


裏捜査一の制服である黒コートは立て襟だ。おかげで掴みやすいのかナギはそこを掴んで問答無用で引っ張る。しかも引きずる。この人何気力強いんだよねー…


「っんとに、ちょっと目を離すとこうなんだから。トランク持ってないみたいだけどどこにやったの。ま、あたし的には使ってくれない方が嬉しいんだけど?」

「あー、クロんとこだ…つかどこまで行くの。診察室通りすぎた気するんだけど」

「あんたは問答無用で治療室よ!一体何ヶ月検診来なかったと思ってるの!?ただでさえ神道術は体に負荷がかかるっていうのに!しかもあんたは四神使でしょうが!」


またキャンキャン吠えられて俺は思わず耳を塞ぐ。確かに検診全然来てなかったけどさ…


神道術はどうやら体に物凄い負荷がかかるらしい、俺たち神道術師にその自覚はないんだけど自覚がないからこそ検診を重要視する。もしも戦闘中にガタが来たら命取りになるからだ。


体に負荷がかかる理由は多分アレだ。

神道術はその名の通り神の道をく術だ。サクっと言うと神の力を使うっていう事。人の体に神の力を一瞬でも流すという事はそれはそれはおそれ多い事で、故に負荷がかかる。


さらにいえば俺は四神使だ。


「ナギー、あの、治療室は勘弁してくれよ…?」

「あ?」


俺がそう言うともの凄い形相でこっちを向かれた。鬼が目の前にいると錯覚するくらいだ。冷や汗ダラダラでいると医務室も入り口からかなり遠い所にある筈の治療室の入り口目の前に来ていた。


「さぁ、入って?」


語尾にハートが付きそうなくらいの満面の笑みを浮かべられても困る。百面相しなくてもいいから。


もうお分かりの通り俺は検診、というよりもナギの検診が大っ嫌いだ。嫌いじゃなかったら毎日でも検診に来てやるっつーの。


ナギの唯一の欠点。


それは治療の行程が荒い事だ。

治るし確かに体の調子は良くなる、だがそれを手にする為の治療が地獄なんだ。払う犠牲が多すぎる。もうほんとに口にしたくないくらい悍ましい。


「ナギさ〜ん、ちょっと、つか、かなり、マジでやめて?」

「イヤ」


俺は治療室の扉が開くと同時に診察台に放り投げられた。っんとにこの馬鹿力が!

俺が逃げ出そうとしているとガチャンと不気味な音がした。動けない。どうやら腕と脚は診察台に拘束されたようだ。


「あ、あの、」

「さぁー治療するわぁ」

「イヤァァァァァァァッッッ!!」


そうして俺は三時間程気を失っていましたとさ。

笑えねー…

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