いつかのあの日
はい、2話目ですね。
今回は、霖之助の回想が殆どです。
幾つか誤植等を見つけて直した筈なのですが、他にもあったら勝手に解釈しちゃってください!
僕と魔理沙が初めて会ったのは、魔理沙が5歳頃の時。
魔理沙は魔理沙の叔父の後ろに隠れていて余り僕に顔を見せてはくれなかった。
けれど、次第に魔理沙は僕にも心を開いてくれる様になった。
気がつくと、魔理沙は僕にベタベタくっつく様にまでになっていた。
それが魔理沙との出会い。
ある日の事、魔理沙は僕の家に遊びに来た。その時魔理沙はよく、僕の家の中からジョウロと言う道具を持ち出し、地面に突き刺して遊んでいた。
「えっと…魔理沙? 何をしているんだい?」
僕は恐る恐る魔理沙に尋ねた。
すると魔理沙はこう答えた。
「アリの穴に水を入れてるんだぜ!」
魔理沙はそれを実に楽しそうに眺める。何が楽しいのかと、僕も魔理沙の隣にしゃがみ込み、アリの巣を眺める。
巣の外にいたアリは必死にジョウロをよじ登り何がなんでも巣に帰ろうとしている者も居れば、栓をされているのにも関わらず巣の穴を必死に探すアリもいた。
「ところで魔理沙」
僕はさり気なく魔理沙に尋ねた。
「なんだ? こーりん」
「…なんでアリの巣に水を流すんだい?」
「そりゃあ、そこにアリの巣があるからだぜ!」
まるで何処かの登山家だな、と心の中でツッコミを入れる。
そして、気が付くと空は真っ赤に染まっていた。
「なぁ、こーりん」
「なんだい、魔理沙?」
魔理沙は僕の右手を強く握りながら言う。
「どうして太陽は沈むんだ?」
僕は少しだけ考えると、魔理沙にニコッと微笑み答えた。
「太陽は地球を回っているんだよ。だから、昇ったり沈んだりして見えるんだ。実際はこの幻想郷の何億倍もあるんじゃないかな?」
僕は幼い魔理沙にも解る様に説明した。すると、魔理沙は頭を抱えながら呟いた。
「う~ん、太陽は欲しくないな…」
太陽が欲しいという言葉に僕は驚きを隠せなかった。
もしかしたら魔理沙は太陽が欲しかったのか? と心の中で疑問に思う。
そう思っていると、右手から温もりがすり抜けて行った。いや、正確には繋いでいた魔理沙の手が離れて行っただけだ。
どうやら、魔理沙の叔父が迎えに来たようだ。
その半年後、魔理沙の叔父は里の人間により殺害された。
理由は簡単だった。
人間は不思議な力を持つ者を化け物の様に扱う。やがて、里の人々の不安と恐怖心が集い、魔法を扱えた魔理沙の叔父を殺したのだ。
僕はその事を知り、魔理沙の叔父の家に向け走り出していた。
魔理沙の叔父は僕に言っていた。自分はどうでもいいから、魔理沙だけは助けてやってくれ、と。
僕はせめて魔理沙だけは助けないと……。
その使命感だけが僕の走る理由だった。
後もう少しで魔理沙の叔父の家だと言う所で、僕は里の人間達に止められた。
「キミ、ここから先は立ち入り禁止だ!」
魔理沙の叔父を殺すと言う計画を立てたとされる男はそう言って僕の肩に手を置く。
僕はチラっと辺りを見渡すと数は10人から20人程度だった。僕は迷わず腰に携えてあった刀を引き抜いた。
すると男は表情を変え、僕を鋭い目付きで睨んだ。
勿論僕も男を睨み返した。
「キミ……まさかあの化け物にの怪しい魔術に操られてるのか!?」
男は僕にそう問い掛けるが僕は心の中でそんな訳ない、と答える。
寧ろ、お前たちの方が何者かに操られた人間にしか見えない。相手は不思議な力を使える普通の人間なのに。不思議な力を使えると言う、それだけの理由で彼らは人一人を殺そうとしているのだ。
「悪いけど、僕はここを通るよ」
僕は微笑みながら地を蹴った。
そこでほ僕の回想は途切れた。
僕は太腿辺りに冷たい何かが辺り、回想は強制的に止めさせられたのだ。
「あ………」
僕の手に握られていたグラスが傾き、グラスからワインが零れていたようだ。
「何やってるのよ、霖之助! 早く着替えなさい! シミになるわ……は!?」
魅魔はまるで誰かの母親の様な口調で言うので、僕はクスリと小さく笑った。
すると、魅魔は頬を赤らめながら言った。
「な…なによ……」
その姿を見て僕は幼い魔理沙の姿を重なった。どうしてなのか、僕の瞳には涙が溜まっていた。
「……魔理沙」
そう呟いた時だった。
「遊びに来たぜ、こーりん」
扉が開かれると共に聞き覚えのある独特の話し方をした女性の声が聞こえてきた。