表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫の騎士  作者: 寝猿
プロローグ
6/7

弟子入り

ティムは夢を見ていた。


内容は覚えていないが、

多分、忘れたい方の夢だ。


枕に染み込んだ大量の汗が、その夢の内容を暗示している。

昔の夢だったんだ、とティムは悟った。


過去は魂の奥底で、地下のマグマとなってティムの中に流れていた。

普段それは姿を隠しているが、時折夢や現実の苦しみとなって、

静かな噴火を試みるのであった。


体を起こし、夢の余韻が体から抜けきるまで、ティムは目を閉じて待った。

深い呼吸が震える魂を鎮めていく。

すると、昨日の出来事が脳裏に蘇った。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


リリィの言う通り、村人を襲った魔女の気配を感じたティムは、

彼女に見付からないよう姿を隠した。


集落には神隠しに遭ったはずの人々の姿が戻っていた。

リリィが姿を消した後に降り注いだ光は、どこか異界に退避していた集落の人々が、

元の世界に舞い降りた光だった。

魔獣を送り込んだ魔女も、そこで起こったことをすぐに理解したようだ。

力の差を正確に把握したからであろう、魔女の気配は直ぐに消えた。

ティムはそれを確認してから、夜の平原を中核都市に向かって歩き出した。


それにしても、あれだけの数の人間を退避させるとは、

リリィの魔力が戻りつつあるのかも知れない。

「急がないと・・・」

その言葉の先は、平穏な夜の空に消えた。

少なくとも今晩は、血なまぐさいことは起こらなさそうだった。



中核都市に着いたティムを待っていたのは、

戦闘の直前、彼を後ろ手にふん縛った新人ナイトのピートだった。


「師匠、信じてました!!」

「し、師匠?」

初対面とは別人のような対応に、ティムは困惑を隠しきれない。

「あの魔獣、やっつけたんですよね?!見た目が貧相なんで魔獣のディナーにされたと思ってましたが、人は見かけによらないんですね!!」

信じてた人の言葉とは思えない。

「いやー何かの間違いじゃないかな。気絶してるうちに、誰かが退治してくれたみたいで・・・」

「ご謙遜を!じゃあこれは何ですか!紛れもなくナイトの証!!」

ピートが持っていたのは、失くしたと思っていたナイトを証明する金のバッジだ。

「情報屋が持ってましてね、持ち主に返すと言って預かってきたんです。これ先輩のでしょ」

持っていたのは紛れもなくティムのバッジだった。

「あ、情報屋で落としたのか~ありがとう」

「やっぱ先輩が魔獣を倒したんですね!そうと分かれば改めて・・・」

ピートは仰々しく土下座しながら、「僕を弟子にして下さい!」と叫んだ。

道行く人の視線がティムに突き刺さる。これでは自分が悪いことしているみたいだ。

「えー、と、僕は弟子とかそういうのは・・・」

「お願いしますっ!」再びアタマを地面に付ける。

「つ、疲れてるから、一晩考えさせてくれないかな~・・・なんてね・・・とりあえず、アタマ上げてくれないかなぁ~ほら、皆見てるし・・・」



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


結局その場を逃げるようにして立ち去り、回答はうやむやのまま、街を出ることにしたのだった。

悪夢の正体はこれだったのかもと、直面している課題を思い出したティムは苦笑した。

「とにかく、さっさと宿を出ないと・・・」


ティムは慌てて荷物をまとめ、眠気眼の主人に宿代を支払うと、そそくさと街を出た。

一息ついたのも束の間、門で待ち伏せしていたピートの姿を見て、

ティムは再び溜息をついた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ