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もう一度、君に会いたい  作者: 尻切レ蜻蛉
8/9

Cream6


八神が案内してくれたのは、店からそう離れていないマンションだった。

シンプルな外観で、全体的にシックな感じだ。

入口にも、オートロックのドアにも警備員がいて、それなのに物々しく見えないのは、流れている空気が穏やかだからだろうか。

老舗や緑の多いこのエリアは随分人気があるのだと、母親が零していた気がする。

事務所のある最寄り駅から、特急で一駅、徒歩数分といった所だ。


「冷蔵庫にはある程度、物が入れてあります。ルームキーパーは必要ない、とのことでしたが、必要があればすぐに手配します。食事の宅配だけでも可能ですから、必要に応じてご連絡ください」

「はい」

「部屋の中のものは好きに使っていただいて、大丈夫です。ただ、」


不意に視線を投げられて、眉を顰めると、八神が鞄から一組の鍵を出す。


「奥部屋には、仕事の道具などが仕舞われていますから、こちらの鍵は彼にだけ渡しておきます」


カードキーではない、レトロな鍵は、大小5本が一組になっていた。


「1番大きな鍵が、部屋の鍵です」


促されるままに廊下の突き当たりにある扉の前に立つ。

後から取り付けられたらしい鍵穴に鍵を差し込むと、重い錠の上がる音がした。


「言っておきますが、それは複製できない鍵です。君のそれの他は、予備がもう一本あるきりですから、くれぐれも紛失しないように」

「げっ」

「報告に、毎日事務所の方に寄るのなら、あそこの金庫に預けても構いませんよ」

「そうする」


及び腰で頷くと、八神は微かに笑ったようだった。

部屋の中はそう広くなかった。

右手の壁は備え付けのクローゼットで、奥の窓には緑の遮光カーテンがかかっている。

敷布団だけのベッドの脇に机があって、その上に立方体のジュラルミンケースがでんと置かれていた。


「クローゼットの鍵は、少し変わった形の金のもの。机の上のケースは、1番小さな鍵で開きます」

「あと二つは?」

「クローゼットの中にある、機械のものです」


八神は机の上のケースを、とんとんと叩く。


「此処のヘッドフォンは装着時にリアルタイムで事務所にデータを送ります。異変があればすぐに対応できるようにするためと、今後の為にデータを確保するためです。何か質問はありますか?」


無意識に彼女と顔を見合わせて、気づけば示し合わせたように首を振っていた。


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