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もう一度、君に会いたい  作者: 尻切レ蜻蛉
5/9

intermission


「八神」

「貴方には無理ですよ」


二人きりの社長室で、八神がネクタイの結び目を長い指で緩めて肩を竦めた。

向かいに合わせにソファに腰かけて、お互い背凭れに体重を預けて言葉を交わす。


「そう言われても、お前にだけ悪役やらせてんのもなぁ」

「良いんですよ。そういう役回りはこちらの方が向いています」

「だからってな」

「悪役なんてものは、向き不向きがあるんです。それに、貴方の方が彼が懐くには向いています。寄る辺もないと困るでしょう。そういう訳で、貴方が悪役では困るんですよ」


素っ気なく言って、八神はソファから身を起こした。

横に置いていた鞄から、取り出したファイルをソファに挟まれた机にのせる。


「言っておきますが、半々というより部が悪いと思いますよ。あの年頃の感受性と言うのは、この上もなく理想的であるが故に、厄介です」

「解ってるよ。だからこそ、白黒はっきりしたいんだ。あいつがこの仕事を続けていくつもりがあるなら、早過ぎはしないだろう」


苦虫を噛み潰したような表情でファイルを受け取った友人に、八神は呆れたように溜息をつく。


「言葉と表情が食い違っていますよ。早過ぎるとは言いませんが、もう少し先でも良かったのではないかと思いますね」

「先に伸ばしても、良いことばかりじゃねぇだろう」


言外に滲んだ苦々しさに、八神もつられるように眉を顰めた。

今もなお、二人を共通して苛む後悔がある。

それは二度と繰り返す事を望まない痛みだ。


「そう、ですね。手にした力の大きさと意味を知らないままで、良いわけはありません。彼はもう理解できる人間だと、信じましょう」

「あぁ。理解ある大人であってくれ、とは言わないが、乗り越えるだけの子どもでいてほしいもんだな」


開いたファイルから覗いた一枚の写真に、窓から入る斜陽が落ちて、その色の白い少女の頬を僅かに茜色に染めた。



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