異能師の来日
やっとこさ、人に読んでもらえるレベルに成りました。
長かった。
イギリス某所
ある古い建物内に、三人?の人物がいた。
一人は成金趣味の腹のでっぷりと突き出た、豚顔の男性。頭は剥げていて、髪の代わりに油が浮いている。(因みに今イギリスは秋と冬の変わり目で決して暑い訳ではない)
そして、その油の乗る額をタオルで拭きながら
「おい、本当に大丈夫なんだろうな!この屋敷の物は芸術的価値が高い物ばかりなんだ。万一でも傷付けたり、壊したりしたら、お前の依頼料など10倍出しても足りんぐらいの賠償金を請求するぞ!」
と、いかにもな、何ともけち臭い、貧乏人臭を漂わせたセリフをもう一人の少年に向かって、怒鳴りながら言った。
それに対して、少年は
「大丈夫ですよ。この人はどうやら、貴方に主人との思い出の品を騙し取らせたのが原因で離婚に追いやられた、この屋敷の元持ち主の恨みの宿った生霊の様です。その品さえ返しに行けば、この屋敷から出ていくと言ってますよ。ですよね?」
少年の言葉に、もう一人?の体が半分透けている女性はコクコクと頭を縦に振って肯定した。
更に
「・・・なるほど・・。もう割り切っていらっしゃると。・・・強い人ですね、貴女は。この人はもう、別れた人の事は仕方ないけど、愛した人との思い出だけは譲れないので寝室にある、夫婦写真の入ったロケットの懐中時計を橋向こうの宝石店まで渡しに来いと、来なければこの屋敷の呪いは解かないと言ってますよ。」
その話を聞いた男は、何のことだ?と首を傾げ
「あの部屋にそんな金目の物なんて有ったか?それらしい物は全て回収したはずだが。」
男の呟きに少年が生霊に話を聞くと。
「・・・なるほど。騙し取られたと言っても、それ自体には価値は全くないそうです。ただ、夫婦の財産を騙し取る為の最初の口実づくりの為に、夫婦が大事にしていた物を難癖付けて騙し取ったのだそうですよ。手口自体は頭に血が上った影響で覚えて無いらしいですが。」
「解った、見てくるから待ってろ。」
そういって、寝室のある部屋へと入って数分後。
「おい!これでいいか聞いてくれ。それらしいのはこれ位だったぞ。」
そして、少年は男に品物を生霊の方に向けさせ確認させて聞いてみると。
「ええ、間違いないそうです。それを持って早くこい!だそうです。何やら、事情がおありの様ですから、早くいた方が良いですよ?・・・あ、そうだ。これで依頼は終了ですから、代金の方を明日、この口座に入金お願いします。言っときますが、我々の社会は横の繋がりが強いですから、踏み倒したとなればもう何処も貴方の依頼は受けてくれませんからね?そこのところをお忘れなき様に。」
少年の忠告を聞いた男は
「ふん!そんなことは百も承知だ。昔えらい目にあったからな、もう二度とせんワイ。心配するな、それじゃ、また何かあれば頼むかもしれんから。その時は頼むぞ?魔術師。」
男の言葉に少年は笑顔を向けて
「ありがとうございます。またの依頼、楽しみにしています。ですが・・・」
と少年は一呼吸置き
「僕は、異能師です。」
と名乗った。
依頼を終えて建物を出た少年が懐から携帯を取り出して時間を見ようとすると、・・・なんとメールが10件も来ていた。
慌てて内容を見るが、その全てが会社の同僚にして、この10月の頭から日本で一緒な異術(主の魔術だが、陰陽術や果ては忍術と言った多種多様な物)高校に通う同級生の風蔵寺楓からだった。
少年はメッセージの
「いつまでそっちにいるつもりですか!早く帰ってきてください。編入に際しての連絡事項が結構あるんです。クルスさんなら飛ばせば明日の昼には帰られると思いますから、段取りをしておきますので、文句があるなら風のメッセージかメールか電話で直接かで一言連絡ください。それでは。貴方の楓より」の文字を見て
うーん、これは突っ込むべきか。・・・何にしても電話だけでもするか。・・・電話代は結構かかるが風の声も幾らなんでもここから日本までは届かないしな。
少年はそう結論づけると、携帯を操作して楓に掛ける。
プルルルル…プル・・
「遅いです。いつまで待たせるんですか?今どこですか。まさか、まだイギリスですか。会社での依頼達成報告もしないといけないんですから、早く帰ってきてください。5日後には学校にも行かないといけないんですからね。・・・ちょっと、クルスさん。聞いてますか?」
・・・なんか、凄い矢継ぎ早に言われたけど、学校に行くのが五日後って言うのも急だな。
ちょっと聞いてみるか。
「ねえ、楓、五日後って早すぎませんか?せめて一週間後にしましょうよ。」
そう要求すると、楓は
「ダメです。学校で始まる、クラス無視の男女ミックスペアマッチの申請が五日後が締切なんです。それまでに何とか帰ってきて貰わないと、参加資格を失います。言っときますけど、イタリアのノエル君やフランスのレノアさん、ドイツのブルーノ君も留学生枠で参加してますよ?更に、このイベントの上位入賞者ペアには世界大会の参加資格も与えられますから。我が校では5組ですけどね?去年の世界大会で3年生の炎昇寺先輩と盾無先輩が優勝したおかげで、個人、団体、ペア、ミックスペアの4種目に5組参加できるのですから、チャンスを作ってくれた先輩方には感謝しないといけません。・・・っと、話はこちらでもできますから、早いとこ帰ってきてください。待ってますよ?」
「・・・了解です。色々と聞きたいこともありますから、早めに帰ります。」
「はい!」
・・・プー,プー、プー・・・
しかし、ノエル達まで日本に留学してたとはな。・・・まさかとは思うが、紫蘭麗とかまで来てたりするのか?
だったら、騒がしくなりそうだな。
「ま、ぶちぶち考えても仕方ないので、帰るとしますか。」
(風操作、浮遊、速度快速)
俺がそう念じると、俺の思いのままに体は浮き上がりあっという間に地上の建物が見えなくなる所まで上がってきた。そして、風を操作しているとはいえ、今から出す速度は少し寒くなる可能性が高いので、同時に温度操作も忘れずに使用する。後は日本までノンストップで飛ばせば何とか明日の昼くらいには風蔵寺の家まで帰れるだろう。序にレベルも190位にはなるだろう。・・・今のを確認するとしようか。
(鑑定)
クルス・ゴウン
アクティブ
風の支配者 レベル185 30/1800
使い魔使役 レベル60 50/550
影 レベル170 44/1700
時空間転移 レベル88 5/700
温度操作 レベル166 45/1600
治療 レベル95 56/900
特殊スキル
蒼の右目(選受眼)
赤の左目(迷考眼)
異能武器化
パッシブスキル
状態以上無効化(中)
鑑定
センス
剣術の心得
記憶の図書館
透視
霊視
霊との会話
・・・うん、あと5レベル位なら日本まで帰れば190まで十分に上がるな。
それでは、レッツゴー!
と、風を動かして正に風の速度と言うべき速さで日本まで一直線(比喩にあらず)に飛んで行った。
場所は変わって都内の一大興業発展都市。
全国の魔術や陰陽術などの特殊な術を使える者たちを育成し、、周辺都市における霊や動物の魔物かの被害を未然に防ぐ者たちを排出する国家規模の学園都市の一つ、覇道学園。
この学園は主に関東に住む魔術や霊能力、超能力と言った、所謂異能を持つ13~18歳の少年少女を各家庭に許可を得て通わせ、一人前の術師にするのが役割だ。
そして、普通の学問も同時に習わないと社会に出てやっていけないだろうと言う、保護者の支援の元、生徒と家族の住む住宅街、買い物をするための商店街、娯楽なども合わせた総合公園など、敷地面積もさることながらその規模は優に四国が丸々一個入るだろうと言う大きさだが、専用の結界により入園時に、はいる者皆に配られる特殊なセンサー式マイクロチップをドリンクと一緒に飲むことによって、体の上腕にバーコードが浮かび上がり、そのチェックを通った者のみが結界内にて生活できるようになっている。
全国にはこの覇道学園の他に東北に天神学院。
北海道にユバイト学園。
関西に陰陽学院。
四国に千峰学園。
中国地方に最強大学付属校。
九州に軍属予備校。
この、7か所の学校がそれぞれ全国で同じような異能の所持者を育てる役割を果たしている。
その一つである、ここ覇道学園では一部の学生が間近に控えた一大イベントに熱気を滾らせていた。
そのイベントとは学園一斉バトルの開幕である。
ジャンルは6種。
個人、団体、タッグ、ミックスペア、大人数戦、スリーマンセルの6種。
ルールは、参加自由。
武器も携帯自由。降参、退場以外はその場で死なない限り四肢の欠損も許可と言う些か過激な内容だが、実際の仕事の事を考えたルールだ。
そして、もう一つ。あるクラスで、ある話題が挙がっていた。
ある男子生徒が
「おい、聞いたか?編入生の話。何でもバトルの申請締め切り当日に来るらしいぜ。」
というと。ある女子が
「私は、強くて、カッコイイならだれでもいいわ。」
といい。他の女子も
「あたしも、断然カッコイイ男子に一票。」
といった。ところが、大柄な、ごつい男子が
「俺はどんな奴でも良いが、ひょろい、弱そうな奴はごめんだ。ぶっ飛ばし甲斐が無い。」
と、強い奴しか興味が無いと言った感じだ。
それもそのはず、このクラスはこの術師が集まる学園の中でもそれぞれの学年トップに君臨するAクラス、通称エリートクラス。そして、過去最強との呼び声高い今年の2年のAクラスの生徒だ。この他にも学園を運営、維持する教師予備軍の生徒会も特別にSクラスとして存在するが、1~3年が混じっている為、純粋な力のみならばこのAクラスが上だと言える。(勿論、個人最強は生徒会長になるのだが。)
そして、そのクラスの中でただ一人編入生の事を知っている、女生徒。風蔵寺楓が
「私はその人の事を知っていますが、少し特殊なのでバトルの参加はしますがこのクラスには来ませんよ?」
と言った事で、周りがざわついた。
それはそうだろう。態々申込み当日に編入するくらいだ。実力に自信があるものだと誰しもが思う事だ。
しかし、特殊とはどういう事だと、近くの女生徒が聞くと。
「その人は、魔力や闘気といった、所謂内在力が無いのです。私たちが普通に力を行使する時に使う、当たり前のような力が。なのに力は使える。なので、異端が集うZクラスに編入します。まあ、実際のバトルでは最低でも、個人、タッグ、ミックスペアには出て貰いますが。」
その話を聞いたごつい男子が
「ほー?風神の神子とあだ名されるほどのお前がそれ程期待するとはな。俺も少し興味がわいた。是非一回戦で戦いたいものだ。」
「生憎ですが、どんなに運が良くても当たるのは、4回戦以降です。言わなくても分かるでしょう。」
それを聞いた男は「ふん」と鼻で笑い
「言ってみただけだ。まー、それまで勝ち残れたのなら、ますます、戦いたいと思うだけだがな。」
「もー、京史郎はホント、バトルマニアなんだから。その戦い癖で、無駄に備品を弁償したり、依頼の品を使い物にならなくした事も数知れずだってのに。よくもまあ、学習能力のないこった。・・・おねーさん涙が出るよ。」
目薬を出してまで涙を演出した少女に京史郎と呼ばれた男子、炎豪寺京史郎は
「うるせー!何が、おねーさんだ。てめえの方が誕生日あとだろうが穂香。適当な事言ってんじゃねーよ。」
「あら?学校の備品を壊した時に生徒会に内緒で直してあげたのは誰でしたかのー?依頼の品を依頼主に内緒で復元して、無かったことにしてあげたのは誰でしたかのー?」
と穂香と呼ばれた女生徒、後藤穂香は自身の能力で隠していた事実を暴露した。
その事に京史郎は
「う・・!その事に関しては感謝してるよ。だから、やっちまう度に飯奢ってんだろう?やっちまうもんはシャーねーだろう。」
とここまでのやり取りでそろそろかと思った楓が。
「まあ、バトルで戦えるかはともかく、近々2年の全体で一度模擬戦があったはずなので、試に決闘を申し込んだらどうですか?案外、バトルでやるより早く戦えるかも知れませんよ?編入生の知り合いという事で、私が色々と教える事になってますから。」
「お、いいね。それじゃ、よろしく頼むわ。」
「ええ、楽しみにしていてください。」
と微笑みながら心の中では
(これで、クルスさんへの当て馬が一人できましたね。もう一人くらい欲しい所ですが。まー、生徒会にはあの男がいるので少し誘導すれば当て馬にはぴったりですね。)
と、腹黒いことを考えていたりする。
そして、楓たちに噂されている頃アメリカ大陸上空では
「ハーックション!・・ん?ちょっと寒くなったかな。温度調整は完璧の筈だが。」
と、タイミングよく、くしゃみをしていたとか。
そして、翌日の昼過ぎ遂に日本に上陸することが出来たクルスは
「よし、ここからなら、十分に風蔵寺の家まで時空間転移できるな。・・・まず媒介を出して、と」
(影、転移石)
と掌を重ね、影を作るとそこから自らの異能で作った、転移用の紋章を彫った石を取だし、その紋章に触れた。
すると、一瞬で日本は関東の風蔵寺の屋敷の境内前に現れて
「ただいまー。クルス、今帰りましたー。」
と元気よく挨拶して。
「おかえりー、待ってたよ。随分と急いで帰ってきたじゃないか愛弟子よ。さては、バトルの事で楓に急かされたな?」
「解りますかー?(笑)」
「解らいでか(笑)」
と笑いあって、再会と任務達成を喜び合って、無事、来日を果たした。
色々と指摘お待ちしております。ハッキリ言って、バトルは自分的に素人ですので読みにくいかも入れませんから。