高層マンション57階
「入るよー? 孝ー?…あれいないのかな?」
「風呂入ってるー」
「ああ、なんだ、びっくりした」
「入るー?」
「え?」
「ゆかりも、入る?」
「ううん。あたしは明日入るよ」
「んじゃあ、あと五分で出る」
「わかった。…あ、ねぇ、ご飯食べた?」
「食べてないよ、何で?」
「今、明日の朝ご飯分、お買い物してきてついでにあれこれかったからさ」
「じゃあ、なにかお願い。あ、それと明日行かなくてよくなったんだ」
「えー! じゃあ、意味ないじゃん」
「まぁ、それならそれでどっかデートしよ?」
「花やしき!」
「お前、いつもいつも変わってんな」
「え? そう?」
「普通、ディズニーランドとか言わない? この前なんて高尾山って言ってなかった?」
「うーん、別にいいじゃんか」
「だってデートスポットって感じしないじゃん、古くて」
「勝手な偏見だよ。高尾山は確かに違うけど。でもまぁ、愛があればどこでもデートだ―…って、なんか着てよ!」
「ごめん、ごめん」
「あー、冷めたーっ」
「じゃあ、花やしき行くのやめよっか」
「やだよ! …それで、今日はソース、ケチャップどっちかける?」
「オムレツ? じゃあ、ケチャップ」
「うん、わかった。よいしょっと」
「ああ、腹減ったー」
「何で食べてなかったの?」
「それ食べるため」
「ほんと?」
「うそ。なんか今日はめちゃ忙しかったんだよ」
「そっか、じゃあお疲れ様だね」
「そうだよ。…てか、お前ケチャップで花やしきって書くなよ。怖い」
「じゃあ、行く?」
「…うん」
「じゃあ、好き」
「ん? …俺も」