ある家の食卓
「…僕さ、ほんとは好きだったかも、その人のこと」
「それは聞いてればわかるよ」
「でも、なんでだろう。いつの間に連絡取らなくなったし、若気の至りだったのかな」
「うーん…、難しいよ。でも勢いで人を好きになるような人があたしの夫なわけないと思うな。そしてあたしはその過去も、とにかく聞けてよかったとも思うし、だからさ、そんな顔したらいけないよ」
「穂奈美…。君と結婚できてよかった」
「はは、言うと思った。あたしもだよ、修ちゃん」
「だよね。…はい、にんじん」
「もう。ほんとにんじんくらい食べてよねー」
「まじいじゃん…」
「まったくもう」
「よし、ごちそうさま」
「ごちそうさま」
「そうだ! …ねぇ、今日はもうこのまま寝ちゃう? 明日休みだし、買い物したいって言ってたじゃん?」
「うーん、それじゃ、洗い物だけするね」
「えー。待てないよー」
「だーめ。汚れは一日置いとくと落ちなくなっちゃうのもあるんだから」
「あ、じゃあ、僕手伝ってあげる」
「どーも。でも、いいよ。修二、変なことするでしょ?」
「しないよ」
「…。どこ触ってるの!」
「冗談、冗談。あ、これ残りの食器ね。今日も美味しかったです。じゃあ、僕はシャワー浴びてこよっと」
「シャンプー、ちゃんと使ったら元の場所に戻してよー?」
「んー」
「…ほんとに子どもみたいなんだから」
「そんなことないよ」
「…まだいたの?」
「じゃ、行ってくる」
「いちいち触るなっ」