お昼休みの社員食堂
「おい、おいおいおい」
「なんだよ?」
「それは本当?」
「ああ、そう。ほんと。昨日確かに聞いたんだってさ」
「じゃあ、お前親父さんか!」
「そういうこと」
「修二、お前ってすごいのな」
「んん?」
「奥さん、大学時代からの同級生だろ」
「そーだねぇ」
「そうやって人は生きていくんだな」
「そんなに遠い目しないでも…」
「でも、ほんと、よかったなー」
「問題は山積みだよ」
「ん? そうなの? 名前は大地でいいぜ」
「ばか。ほら、お前、昨日、今日に自分の遺伝子受け継いだ子どもができるって聞いても実感わかないだろう? なんていうか、それが、得体の知れないなにかに気づけてないようで、すごく怖かったりもする」
「それはたぶん、すごい幸せな悩みだと思うけどな」
「そーなのかなぁ」
「責任はすげぇけど、正真正銘、修二たちの愛の結晶なんだから、なにも怖がることはないと思うぜ」
「いいこと言う」
「お前の今の愛の気持ちを絶やさなければそれでいいっていうか」
「ふはは」
「なんだよ」
「それ、お前はちゃんと優梨子ちゃんに伝えたらいいのに」
「余計なお世話だよ。俺らはまださ……あ、そうだ、修二はなんで結婚しようと思ったの?」
「まだ、なんだよ」
「いや、まだまだ気持ちが落ち着かない。そりゃ、愛はあるけど、なかなか覚悟できなくてな、お互いに」
「僕らはそうだな、覚悟とか、そんなんじゃなかったな。好きがすごく好き、大好き、になって、ああ、もうこりゃ結婚するしかないなって。ずいぶん、頭悪いけどさ」
「はは、お前らしいよ」
「だろう? たぶん、繋げるじゃなくて、繋がる。勝手に繋がってるんだ」
「やっぱりすごいな。お父さん」
「ばーか」