怒りは内に秘め……
本日2話目の投稿になりますのでご注意くださいm(__)m
「ふん……」
俺は慎也と同じ空間にいたくなくて、この場を離れようと立ち上がった。
「あれ?もう行っちゃうのかい?」
「あん?…俺に何か用でもあんのか?」
「いやだなぁ。さっき言ったでしょ?ここに誰かいるだなんて思ってなかったよ」
「舐めてんのか、てめえ?」
「怖いからそんな睨まないでくれないかな?」
「チッ……」
ずっと浮かべている慎也の笑顔。普通の人が見れば、優しげに映るんだろうが、本性を知ってる俺には気色悪いものにしか見えない。
それにさっきから人の神経を逆なでするようなこの喋りはなんだ?
イライラさせやがって。
再び歩き出そうとした俺を慎也の言葉が止めた。
「ああ、そうだ!そう言えば、さっき生徒会室から出てくるところを見たんだけど……、もしかして青葉会長に叱られでもしたのかな?」
いや、出てきた名前に止められた。
「ああん?」
こいつ見てやがったのか。
しかも、美涼と昇、両方と繋がりがあるんだから当然だが、どんな話をしたかもわかってやがるな。
くそっ!ってことは、やっぱり俺が屋上にいるってわかってて来たんじゃねえか。
目的は何だ?
「彼女のことだから、聞く耳も持たずに、一方的に君を責めたんじゃない?ちょっと頑固で融通が利かないところがあるからね、青葉会長は」
「……だったら何だってんだ?」
「いやぁ、ぶっちゃけ相当イラついたんじゃないかなって」
「……まあ、確かにイラっとはしたけどよ……お前がそれを言うのか?」
目的を探る意味を込めて、俺は、こいつが隠そうとしていた美涼との付き合いに触れることにした。
「うん?」
「……会長はお前の女じゃねえのかよ?」
俺が言い終わった瞬間、慎也の笑顔が醜悪なものに変わった。
少なくとも俺にはそう見えた。
「あ~あ……、美涼喋っちゃったんだ。……口の軽い女ってマジで最悪だわ。これはもう確定だな」
後半は、これがこいつの本性だって一発でわかる、冷え切った声と表情だった。
「おまえ……」
「あ~ごめん、ごめん。確かに美涼は僕の女だよ。だってあの体じゃん?存分に味わって僕好みに調教したくなったんだよね。龍賀君ならわかるだろ?そういうの」
慎也はまた醜悪な笑みを浮かべ始めた。
「……まあ、そうだな」
嫌な話だが、以前までの俺なら本心から同意できたのかもしれない。漫画で望愛にしたように……。けど、今は違う。そんなものわかりたくもない。
ただ、本能とでも言えばいいのか、ここから先の受け答えは間違えられねえって直感があった。
「だよね。だから時間かけて告白までしたってのに、あの女すっごいガード堅くてさ、正直イラついてたんだよね。最初は優しく抱いてじっくり染めてやろうと思ってたけど、恋人ごっこも面倒くさいから今回はもう終わり」
「……別れるってことか?」
「ははっ、そんな訳ないじゃん。手っ取り早く仲間と壊しちゃおうと思ってね。そのために付き合ってることを隠してたんだから」
「随分慣れてるような言い方だな?お前は優等生じゃなかったのか?」
本当はわかってる。
こいつは何人もの女を同じ手口で破滅させている。
しかも、その様子を撮影した動画で女を脅して金を奪い、女があらゆる意味で使い物にならなくなったら、動画をヤバいサイトにアップして金稼ぎまでしている始末だ。
そして、特に気に入った女は自分の手で開発して、厭きたところで仲間に渡していたのだ。そう、今回美涼にしようとしていたみたいに。
「まあ、いつものことだからね。それに、龍賀君にまで優等生だと思われてたなんてちょっと嬉しいな。これはね、ただみんなが望むような人柄を演じてるだけだよ。その方が受けがいいからね。僕は小心者なんだ。むしろ、僕からすれば、龍賀君みたいに周囲なんて関係なく、思うままに生きてる方が余程すごいと思うし、羨ましく思うよ。僕には絶対できないからさ」
どれだけ本気っぽく演技をして、すごい、羨ましい、そんな言葉を並べても、こいつが全くそう思っていない、どころか俺を馬鹿にしてんのは丸わかりだった。
「そうかよ。……だが、なんでわざわざ俺にそんな話をした?やりたきゃ勝手にやればいいだろ」
「いやぁ、今回は龍賀君も一緒にどうかなと思ってね。ストレスは与えてきたヤツで発散するのが一番だし、相手が女なら方法は一つしかないでしょ?怒るかもしれないけど、こういう方面では僕達気が合うんじゃないかと思ってたんだ」
「へぇ……確かにな」
俺は何とか笑ってみせた。
ふざけたことばっか言いやがって。クソ野郎が!
沸々と湧き上がる怒りを抑えるため、右拳を握り締める力はどんどん強くなる一方だった。
今ここでこいつをぶん殴って全てが解決するなら喜んで殴る。
今さら善人面して穏便に解決しようなんて思っちゃいない。俺は俺だからな。ヒロインの破滅さえ防げればそれでいい。
だが、それでは一時しのぎにしかならないだろう。
それに、そんなことをしてしまえば、退学まではいかなくても、きっと停学は避けられない。もしその間に、問題が起こったらどう対処すればいい?望愛のことだってもう大丈夫なのかわからないし、それに―――。
どう対処したらいいのか、まだはっきりとした解決策が見えなかった。
「龍賀君なら乗ってくると思ってたよ。ああ、安心して。クスリ使ってちゃんと楽しめるようにするからさ」
「そいつは楽しみだな。で、いつやるんだ?」
どこまでも腐ってやがる。
「来週の水曜だよ。美涼の生徒会がないからね。僕らがいつも使ってる廃倉庫に呼び出すから、時間は5時ってところかな」
それから、慎也は廃倉庫の住所を言ってきた。
6月10日水曜日、廃倉庫。すべて漫画どおりだ。この日、美涼は破滅の道へと入ってしまう。
「わかった。……が、相手は会長一人なんだろ?こっちの人数が多くて遊べねえなんてことにはなんねえだろうな?」
「はははっ、それも安心していいよ。こっちは僕と龍賀君を入れて四人だからさ。人数を増やし過ぎると余計なリスクがあるからね。時間もたっぷりあるし、僕は途中動画も撮らなきゃいけないから、それなりには満足できるんじゃないかな?」
「はん。それなら問題ないか。お前に乗るぜ、久住。動画ってのも今まで撮ったのがあるなら、その日に見せてくれや」
絶対に、こいつをのさばらせおく訳にはいかねえ。
「好きだね、龍賀君も。動画は全部僕のスマホに入ってるんだ。大事な金のなる木だし、ここが一番安全だからね。当日美涼が来るまでの暇つぶしに見せてあげるよ」
「あんがとよ」
「どういたしまして。それにしても、龍賀君がすんなりオッケーしてくれて本当によかったよ。それじゃ話も済んだし、僕はお先に失礼するね」
慎也は満足そうに屋上を去っていった。
俺はその背中を睨みつけていたが、ふぅっと大きく息を吐いて、体に入っていた力を抜く努力をする。
言葉の端々から何となくわかった。
慎也は何かあったとき俺に罪を擦り付けるつもりなんだろう。下手をすれば過去の分まで。
だから、最初は確認するように話しかけてきて、俺が美涼との関係を知っているとわかった途端、今回の計画に引き込みにかかってきた。
奴は頭も切れるからな。
そういう裏でもなければ、わざわざ俺というリスクを背負う意味がない。
日時について口頭だけなのも、余計な証拠を残さないためなんだろう。
以前の俺なら、もしかしたらいいいように利用されていたかもしれない。
だが、今は違う。これはチャンスだ。
慎也は俺が相手だからか、間違いなく油断して、ベラベラと余計な情報を吐き出した。
望愛との関係の変化、それが巡り巡って漫画にはなかったこんな展開をもたらしてくれたと思うと何とも不思議な気分だ。
俺は頭の中で解決法を組み上げていく。
相手が三人程度なら龍賀玲旺の敵じゃない。証拠も慎也自身が持っている。
ただ、中途半端だけは許されない。
これから先、美涼だけじゃなく、別の被害者を出さないためにも。
だから、容赦なんてしない。
俺が全員まとめて……徹底的にぶっ潰す!
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