ピンク髪ヒロインが話しかけてきた
本日3話目です!お読みいただけたら嬉しいですm(__)m
翌日。
6月1日。
気合を入れて学校に来た俺だったが……。
教室に入るなり―――、
「お、おい……」
「なんでアイツが……?」
「バッ!?アイツとか、聞こえたらどうすんだよ!?」
「こんな時間からいるなんて珍しいよね?何かあったのかな……?」
「そんなのわかんないよ……」
俺を遠目に見ながら、男女関係なく、ヒソヒソと何やら話していた。
教室に入るまで、そして入ってからも、周囲の視線が非常に痛い。
そりゃ、今までほとんど学校に来てなかった奴が、朝からちゃんと登校してくればそんな反応になるのもわかるっちゃわかるのだが……。
正直、何とも居心地が悪いが、俺は黙って自分の席に座った。
すると、
「おはよう龍賀くん」
「……おはよう桃瀬」
そんな俺に望愛が声をかけてきた。
瞬間、クラスメイトの困惑が伝わってきた気がした。
けれど、恐らくこのクラスで一番困惑していたのは俺だ。
何とか挨拶を返すのでやっとだった。
昨日のことがあるにせよ、まさかこんな人目の多い場所で望愛の方から絡んでくるとは全く考えていなかったのだ。
せっかく俺の方からは関わらないようにすると決めたってのに……。
俺はこれ以上話すことはないというのを態度で示した。
そのつもりだったのだが―――。
「龍賀くん、昨日は助けてくれて本当にありがとう」
望愛には通じなかったようだ。
どうやらまだ話は続くらしい。
こうなっては黙っていても仕方ないため、俺も答えざるを得ない。
「礼なら昨日受け取った。だからもう必要ないぞ」
「そう?けれど、昨日はその……すぐにお礼を言えなくて失礼だと思ったから」
「真面目なヤツだな」
思わずツッコんでしまったが、そう言えばこういうキャラだったかと思い直す。
真面目でしっかり者。そして誰に対しても優しい、清楚系美少女。
ちなみに、ピンク髪で清楚?、とツッコんではいけない。
それが桃瀬望愛という人物なのだ。
そうして、あらためて望愛を見れば、やはりヒロインだと納得できる性格と容姿をしている。しかも、この制服姿がまたヤバい。さすがはそっち系の漫画というべきか、胸部分の膨らみが強調されるようなデザインなのだ。正直眼福っす。
男なら誰もが憧れ、その体を欲望のままにしたいと考えてしまうだろう。ってか、男なら普通に惚れる。
それほどの魅力が望愛にはあった。
ただ、こんな風に彼女と普通に話すことなど、当然だが、漫画では描かれていなかったことだ。
「普通じゃないかしら?」
「そうかよ」
くそ!小首を傾げる仕草一つとっても可愛いじゃねえか。
「ええ。それで……その、龍賀くんに一つ確認させてほしいことがあるの。……いいかしら?」
「何だ?」
「えっとね……、昨日羽織らせてくれたシャツって…、本当に、その、返さなくてもいいの?」
急にモジモジしだすからいったい何事かと思って少し訝しんだが、内容は拍子抜けするものだった。
「んなことか。昨日言ったとおり、捨ててくれて構わないぞ」
「捨てたりなんて絶対しないわ!」
「は?」
じゃあなんでわざわざそんなことを訊いてきたんだ?
俺が捨てていいなんて言っちゃったから、それに反して返すってのは怖いし、処分した後に因縁をつけられるのも嫌だったから、とかじゃないのか?
「いえ、な、何でもないの。確かに昨日は捨てていいって言われたけど、龍賀くんにとって大切なものだったらちゃんと洗濯してアイロンがけしてお返ししなきゃって思って。そう、だからあらためてきちんと確認した方がいいなって。そう思ったのよ。本当よ?」
お、おう。
ちょっと勢いに引いてしまったが、まあ言いたいことはわかった。
つまりは望愛が持つ優しさの表れなのだろう。
ただ、結構な早口で捲し立てたからか、若干望愛の顔が上気している。
それが何だか可笑しくて、つい微苦笑が漏れてしまった。
「なるほど。けど、本当に着古しただけの安物だから気にすんな」
「そう!ぁ…、え、ええ、わかったわ」
満面の笑みになったかと思えば、今度は澄まし顔。
表情が本当に豊かだ。
これが本来の望愛なのだろう。
けれど漫画だとそうじゃない。俺に対して、前半では嫌悪と恐怖しかなかったし、後半では快楽に蕩けたものばかりだった。
まさかこんな望愛を間近で見られるとは思わなかったが、ちょっと調子が狂ってしまう。
あんな偶然の出会いで、望愛の抱く俺への印象が変わった、のか?
それに、先ほどから感じている強い視線。
チラリと見れば、そいつの目が怖いことになっている。
これではまるで寝取る方向に進んでいるみたいじゃないか。
不可抗力なのだから勘弁してほしい。
「話はそれだけか?なら、もう席に戻れ。自分で言うのも何だが、俺みたいな奴と関わらない方がいいぞ?」
「あら、龍賀くんは優しい人だと思うわ」
「冗談はよせ。俺はそんなんじゃない」
「ふふ、じゃあ私が勝手にそう思わせてもらうわね。本当に優しくない人はそんな風に言わないもの」
「っ……物好きなヤツだな。それより、さっきから幼馴染がずっと見てんぞ?仲良いんだろ?」
そう、怖い目でこっちを見ているのは望愛の幼馴染、いずれ?すでに?彼氏の浅野昇だった。
「え?……ああ、昇くん」
はて?望愛の声が一段低くなった気がしたが、気のせいか?
「桃瀬のことが心配なんだろ、きっと」
「はぁ……そんなのじゃないわね、あれは」
「あん?」
「いいえ、何でもないわ。でも、そうね。わかったわ。それじゃあ龍賀くん、またね」
望愛はあからさまに大きなため息を一つ吐いたかと思えば、俺に向き直ったときにはすでに笑顔だった。
おいおい、ため息まで吐いちゃったよ。
お前ら相思相愛だろ?
ケンカでもしたのか?
そんな疑問を抱いたせいだ。間違いない。
俺は、聞こえていないとわかっていて、またなんてねえよ、と自席に戻る望愛の背中に向けて小さく呟くことしかできなかった。
なんか朝からどっと疲れた……。
それから、
「皆~、席につっ!?……けー」
男の担任が入ってきて朝のホームルームが始まったのだが、担任までもがずっと俺の方をチラチラと見ながら話をしていた。
「後、も、もうすぐ期末テストだからな。……夏休みが近いからって…皆、気を緩めるんじゃないぞー」
さすがに居心地悪すぎるだろ。
玲旺の今までの行いのせいなのだろうが、こんなのばっかりだと来たくなくなるって。
俺はもう気にするのを止め、先ほど俺を睨んできた浅野昇に目を向けた。
望愛の幼馴染ということ以外、正直これといった特徴のない、どこからどう見ても普通の男子高校生だ。
帰宅部だが、人との接し方が上手いのか、それなりに友達も多い。
というか、実のところ、漫画では多くの登場人物と関わりがある。
漫画の主役は間違いなくヒロイン達だが、そのヒロイン達全員と知り合い以上の関係を築いてるこいつは、もしかしたら陰の主人公と言えるのかもしれない。
だって、自分の彼女を含め、知り合いの女の子が次々と破滅していくって普通に考えたらヤバ過ぎる。
ただ、ここは確かに漫画の世界かもしれないが、間違いなく現実だ。
それは、俺と望愛に漫画にはなかった展開が起こっていることからもわかる。
一方で、不安なこともある。
それは、俺が望愛を寝取らないと決めたように、たとえフラグをぶっ壊しても、強制力のようなものが働いて大きな流れは変わらないのではないか、というものだ。
これについては、今後も注意していく必要があるだろう。
だからこそ、無駄だとわかりつつ、俺は心の中で昇にはっぱをかけずにはいられなかった。
せっかく俺という寝取り役が引いたんだ。
俺を睨むのもいいが、それじゃ何の意味もねえってわかってんのか?
そんな暇があったら、好きな女をしっかりと掴まえて全力で幸せにしろよ。
でなきゃ、俺じゃなくたって誰かに奪られちまうかもしれねえぞ?
ただ、悲しいかな、この朝のホームルーム以降、俺は何度も強い視線を感じることになった。
休み時間になると、俺の周りの席の生徒は悉く席を離れるので、はっきりとわかってしまったのだ。
正直すげーウザい。
お読みくださりありがとうございます。
面白い、続きが気になるなど思ってくださった方、画面下の☆☆☆☆☆から応援していただけると嬉しいです!
【ブックマーク】や《感想》、《イチオシレビュー》も本当に嬉しいです!
モチベーションがとんでもなく上がります!
何卒よろしくお願い致しますm(__)m




