ピンク髪の美少女と遭遇した
本日2話目ですm(__)m
大分進んできたし、そろそろぐるっと大回りしながらアパートに引き返すか、と思ったそのとき、ピンク色が視界に入った。
ん?と思って見てみれば、なんとピンク髪の女の子が俯き気味に歩いていたのだ。
すっげえ!さすがは漫画の世界だ。
あり得ない髪色の人間が普通にいる!
確か俺が寝取るヒロインの髪色もピンクだった。しかも地毛だぞ?
というか、他のヒロインもカラフルな髪色だったし、この世界では意外とピンク髪の人も結構いるのかもしれない。
いかにもここが漫画の世界だと思わせてくれたことに、俺は一気にテンションが上がったが、事態は良からぬ方向に進んでいく。
「あれあれ?キミ泣いちゃってどうしたの?」
「何か悲しいことでもあったのかなぁ?ならさ、俺らとこれから楽しいことして忘れちまおうぜ?」
他人のことは言えないが、カフェから出てきたばかりの見た目軽薄そうな男二人組が、ちょうどいいと言わんばかりにピンク髪女子に何やら声をかけた。男達は俺よりも年上に見える。
「結構です」
「ま、そう言わずにさぁ。俺らが優しく慰めてやるから。俺、キミみたいな清楚系ちょータイプなんだよね」
「そ、そ。とりあえず行こうぜ?」
言いながら男の一人が彼女の肩を抱いた。
「っ、やめて!離して!」
「そう言うなよ。な?」
彼女の顔を覗き込んで男が脅すように言った。
「ひっ!?」
他の通行人もいるのだが、見て見ぬフリをして誰も彼女を助けようとはしない。
この間にも俺は彼女達に向けて歩みを進めていた。
「だ、誰か……!」
「さ、行こう…ぜ?」
やり取りがすべて聞こえていた訳ではないが、嫌がっていることは間違いなさそうだ。
俺だってこれまで女を誑し込んだり、一夜限りの関係を楽しんだりしてきた人間だ。彼らのやっていることを否定はできない。
だが、俺は嫌がる女を無理やりってのはこれまで一度もしてこなかった。
それに、今の俺はこれまでとは違う。
つまりは彼女を助けることにした。
彼ら三人に真っ直ぐ視線を定めながら近づいた俺に気づいた男が目を向けてくる。
それにつられたのか、ピンク髪女子の方も俺に視線をやり……そこで大きく目を見開いた。
おいおい、マジかよ!?
ただ、彼女の顔を見て驚いたのは俺もだった。
何故なら彼女は俺にとっても知らない相手ではなかったから。
背中まである長くふわりと柔らかそうなピンク色の髪、美しい顔立ちに、切れ長の目には恐怖からか涙を溜めている。
そして何よりも目を引くのが、まるで男の情欲を誘うように服を盛り上げている大きな胸だ。
スカートから覗く眩しい足も彼女の魅力をこれでもかと引き立てていた。
そう、このピンク髪美少女の名前は桃瀬望愛―――漫画内で俺が彼氏から奪うヒロインその人だった。
漫画では、玲旺に対して嫌悪感を抱いているのに、夏休み前、半ば無理やり体の関係を持たされた望愛は、夏休み中、そしてその後もご都合展開で玲旺によって快楽漬けにされ、どんどんと性の快楽に堕ちていく。最終的には玲旺の子供を身ごもるが、そこで玲旺に捨てられてしまい、絶望の中物語は終わるという展開だった。
快楽堕ちする過程が非常にエロかったのをよく憶えている。その節は大変お世話になりました!
……それに、漫画では描かれていなかった玲旺の過去を知った今だからこその推測だが、玲旺が面倒だからという最低な理由で、それまで同じ学校の女には手を出してこなかったのに、望愛を彼氏から無理やり寝取ってまで自分の女にしたがったのは、そして子供ができた望愛を捨てたのは、たぶん―――。
って、そうじゃない!
今そんなこと考えてる場合じゃねえ!
こんな偶然ってあるのか!?
それこそご都合展開じゃねえか!
関わらないようにさえすりゃいいと思ってたのに!
「龍賀、くん……」
「な、何だよお前?」
「な、何か用かよ?」
俺は頭を抱えたい気持ちに駆られたが、それらの声で我に返った。
そうだ。今はこの場をどうにかすることが先だ。相手が望愛だからって助けない理由にはならない。
男二人は俺の見た目にビビっているようで、すでに腰が引けている。
一方で、望愛の方も、助けてもらえる、という希望を打ち砕かれたような無気力な目をしていた。
思わず苦笑が漏れる。
四月からクラスメイトである望愛から見ても、俺の顔はやはり怖ろしい悪役顔なのだろう。高い身長と筋肉質な肉体も恐怖を煽ってしまうのかもしれない。
望愛の反応には若干傷つくが、まあわかっていたことだ。もう関わらないから今回ばかりは我慢してほしい。
ゆっくり堂々と俺が近づくと、望愛の肩を抱いていた男はその手を放した。
すでに男二人の心が恐怖で折れかけているのがわかる。
あと一押しのようだ。
「消えろ」
俺は、男達を眼光鋭く見下ろすようにして一言告げた。
「は、はいぃぃ~~~~!!」
「すんませんしたぁぁ~~~~!!」
「きゃっ!?」
「チッ」
男達は回れ右をするとすごい勢いで走り去っていった―――のだが、そのとき、焦り過ぎていたのか男の一人が望愛にぶつかった。
望愛が倒れそうになるのを目にした俺は、咄嗟に一歩を踏み出し、望愛を引き寄せるように彼女の肩を抱きとめた。
しかし、そんなこと気にしていられないとばかりに男達は見向きもせず、あっという間に見えなくなった。
情けねえなぁ。
望愛一人に二人でナンパなんかしていたくせに、無様な姿を晒した男達に呆れた俺だったが、望愛の肩を支えながらすぐに彼女へと目を向ける。
俺とは目を合わせたくないのか、望愛が肩をビクッとさせ目を逸らしたのがわかった。
ま、それも当然だろうと納得する。
「大丈夫だった……かぁあ!?」
俺は一応一声かけようとしたのだが、すぐにパッと顔を逸らすことになってしまった。
「……ぇ?きゃっ!?」
望愛も自身の現状に気づいたようで、短い悲鳴を上げると頬を染めながら胸元を手で隠した。
ぶつかったときに男が持っていた飲み物がかかったのだろう。
ミルク系だったのか、色は目立たなかったが、深い谷間と可愛らしい下着の端の方が透けて見えていたのだ。
さすがヒロイン。大変すばらしいモノをお持ちだ。
って、だからそうじゃない!
なんで俺が照れてんだよ!?
玲旺にとっては女の胸なんて何度も直接見てるし、珍しくもなんともないだろうが!
俺は自分にそう言い聞かせて気持ちを落ち着け、顔の向きを元に戻した。
「そいつは俺のせいだな」
「え……?」
「そのままじゃ帰りにくいだろうから……、これで勘弁してくれ」
「ぁ……」
俺は着ていたシャツを望愛に羽織らせた。
不格好かもしれないが、これで目立たなくできるはずだ。
「……ごめんなさい。私こそ、その、見苦しい、ものを見せちゃって……」
今にも涙が零れそうな望愛は明らかに落ち込んでいる様子で、胸元を隠すように俺が羽織らせたシャツの襟元をギュッと握りながら、声を絞り出したのだが―――。
この女、何言っちゃってんだ?
俺には言っている意味が全くわからなかった。
見苦しいって何が?まさか、そのすばらしく育った胸のことを言っているのか?
どうしたらそんな発想になるってんだ?
わからな過ぎてめっちゃ気にはなるが、そもそも俺は望愛から怖がられてるんだから、早く離れてやるのが正解だろう。
「……桃瀬みたいな可愛くてスタイルも良い女、魅力的だと思いこそすれ、見苦しいところなんて全くないと思うぞ?それとも……そうやって俺を誘ってんのか?今すぐ体でわからせてやろうか?」
……って、うおぉぉっい!何耳元で囁いて口説こうとしちゃってんだ俺!しかも、よりにもよって望愛を!寝取らない決意はどうした!?
サラッと言葉が出てきちまった。これが強制力ってやつか!?そうなのか!?
……いや、本当はわかってる。単に、前世の記憶を思い出しても、俺って人間はこういう奴だってだけだ。それでも、今のは完全に失言。油断禁物だな。
ま、本来の玲旺ならもっと強引で、ひどい過激な表現だっただろうけど、最後のは駄目だ。
「……ぇ」
俺の言った言葉の意味をちょっとした時間差で理解したのか、望愛が一瞬身体を震わせると、俯いてしまった。羞恥からか頬がみるみる染まっていくのが見える。
ほら、こうなっちまったじゃねえか。
俺みたいな奴に言われても嬉しくない、どころか、身の危険を感じて怖がっちまってる。
「安心しろ。冗談…って訳でもないが、さっきの奴らみたいに無理やりするつもりなんてないから。桃瀬からすれば俺がどう思おうがどうでもいいだろうしな。すまんが、忘れてくれ」
「ぁ……」
「一応、あいつらはもう戻ってこないだろうが、まあ服も濡れちまったし、気をつけて早めに帰れよ。シャツは捨てちまっていいから。怖がらせて悪かったな」
「……あ」
余計なことだとは思ったが、俺は最後に言いたいことを言って望愛の横を通り過ぎた。
さて、ハプニングはあったが、ぐるっと大回りしてアパートに帰るか。
そんなことを考えていると、少し離れたところで背後から声が聞こえた。
「あ、ありがとう、龍賀くん!」
ドクンと心臓が高鳴った。
自分の見た目や所業から、謝られることは多々あれど、ありがとう、そんな言葉を言われたのはいつぶりだろうか。
ピロートークでなら玲旺の記憶にいくらでもあるが、こういうのはほとんど記憶にない。
俺は望愛の言葉を素直に嬉しく感じていた。
「……おう!」
だから俺は、顔を望愛に向けて、短くだがしっかりと答える。
見れば、望愛の目にもう涙は溜まっていなかった。
「……っ!?」
が、望愛に再びサッと顔を逸らされてしまった。
自分としては自然と出てしまった笑顔なのだが、やはり怖かったのか、それともキモかったのか、何にせよ直視できないほどだったという事実に俺は内心、軽く落ち込むのだった。
何はともあれ、これで本当にもう俺が望愛と関わることはないだろう。
今日は偶然に偶然、いや、さらに色々と偶然が重なっただけだ。
望愛が具体的にいつから付き合い始めるのか、もしかしたらすでに付き合っているのか、それはわからないが、俺が邪魔をすることはないから、彼氏と思う存分勝手にイチャイチャしてくれ。
そんなことを考えながら部屋に戻った俺は、とりあえずごみの分別からやり直し、掃除を行った。
掃除前と比べてそれなりに綺麗になった部屋を見て、今日はここまで、と俺は一つ頷くのだった。
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