3 「俺は君に選ばれた立場の人間だ」
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孝之は萌恵の両親との挨拶を終え、真っ直ぐ六本木の自宅マンションに帰ってきていた。パソコンのデスクトップをじっと睨みつけ、SNSに拡散された孝之と萌恵のネットニュースやコメントに目を通す。
【浅見財閥の御曹司(38)×現役JK(18)!?
A.I.Sが導き出した運命の相手は20歳差!!あり?なし?】
『年齢見て二度見したわ』
『AIポンコツすぎん?』
『金持ち無双で草』
『また上級国民案件か』
『これ擁護してるやつ正気?』
『親どこ行った』
『気持ち悪いって思うの普通だろ』
『A.I.S信者、息してる?』
『炎上狙いの記事でしょ』
『財閥ってだけで人生イージーすぎ』
『倫理観ログアウトしてて笑えない』
『これ許されるなら何でもアリじゃん』
『週刊誌ウキウキ案件』
『またコメ消される流れ?』
『これって合法?』
『流石にフェイクニュースだろ』
『どうして俺は財閥に生まれなかったんだ』
匿名のSNSという場は発言が過激になりやすく、容易に予測できる内容ばかりだったが、孝之は萌恵に余計な外野の声を入れたくなかった。
こんな無責任な人間たちに惑わされている暇など、孝之と萌恵にはない。
すぐに浅見財閥お抱えの弁護士に、圧力をかけさせるため指示を出す。
掲示板やSNSの動きを止めることは難しいが、面白がったマスコミが昼のワイドショーなどで取り上げることくらいは止められる。
メールで指示を出すと、孝之の母、貴子が既に動かしていたようで、ほっとため息をつく。
ポンッとチャットの通知音が響く。
(萌恵)ー さっき家に帰ってきました。
今日孝之さんが両親に挨拶に来てくれたと聞きました。
良かったら少しだけ話せませんか? ー
孝之は萌恵からのチャットに、苦笑して通話ボタンを押す。
萌恵の両親に一応口止めはしたものの、あの親子の仲の良さを考えると、孝之一人に萌恵との交際の責任を持たせず、話しているだろうなと思っていた。
「もしもし、萌恵さん?」
『はい、萌恵です。孝之さん、急に通話したいなんてわがまま言ってごめんなさい』
「大丈夫だよ。今日は休日だからね。バレー部の練習お疲れさま」
先週初めて電話したときのはしゃいだ萌恵の声とは打って変わって少し硬い声に、なるべく優しく声をかける孝之。
『あの、今日父たちに挨拶に来てくれたって聞いて…』
「…話は聞いたのかな?勝手に話を進めてしまって、萌恵さんが戸惑うのも無理はないと思う。…ただ」
『ううん!違うんです!
私が考えなしで、子どもだから、孝之さんに全部任せちゃってて…ごめんなさい』
言葉を遮るほど思い詰めているような様子の萌恵に、謝られるようなことをしているつもりはなかった孝之は少し驚く。
「俺は君を子ども扱いしているつもりはないよ。一人の女性として尊重したい。それでも学生の間はご両親の理解がいると思ったんだ」
『父から、2年間結婚は待ってくれる約束したって聞いて…。孝之さんは本当にそれでいいんですか?』
萌恵の父、幸一が彼女にどういう説明の仕方をしたのか何となく理解した孝之は、きっと萌恵は孝之を買いかぶりすぎていると思った。
ただ両親を安心させるために肉体関係を持たないと約束したのだが、確かに年頃の娘にストレートに伝えにくかったんだろう。
でもこれでは孝之が譲歩しているように萌恵は受け取ってしまう。
何も偉そうに上の立場に立って、待ってやるから気持ちを整えろ、なんて萌恵に求めている訳では無いのだから。
「萌恵さん。誤解しているようだけれど、俺は君に選ばれた立場の人間だよ。A.I.Sで20年間相手が見つからなくて、俺自身も相手を探すのをサボっていたんだ」
『はい…』
「独身貴族を貫いてこのまま好き勝手に生きていこうと思ってたところに、萌恵さんがこんなおじさんの俺でもいいって言ってくれて、とても嬉しかった」
『…っ、孝之さんはおじさんじゃありません!』
論点がズレていて、真面目な話をしていたのについ、ふふっと吹き出してしまう孝之。
声を張り上げてしまった萌恵も、あっと口をつぐむ。
「一人で生きていくつもりだったから、俺もすぐに結婚したいとかそんな気は本当にないんだ。だからお互い対等な立場でいたい」
『…その、私、男性経験がなくて、どうしたらいいか分からなくて』
「そうだね。じゃあ…前したいと言っていたデートをしようか」
え!と驚きつつもワントーン明るくなった萌恵の声に、孝之は可愛らしくて目を細める。
孝之は萌恵の弾んだ声を聞くのが心地よかった。
『会ってくれるんですか?忙しいのに?』
「うん。繁忙期まで少しあるし、来週の日曜日にランチに行こうか。空いてるかな?」
『あ、えと、…空けます!!』
スケジュールを見ようとしたが、億劫になったのか元気のいい返事に孝之はまた吹き出してしまう。
顔をあげるとデスクトップのSNSのコメント欄が目に入り、萌恵にも伝えておかなければいけないなと思う孝之。
「…そういえば、週刊誌の記事の件だけれど。SNSのコメント欄が大分荒れてるんだ。
こちらでも対策はしていくから、萌恵さんは今はなるべく見ない方がいいかもしれない」
『そう、なんですか…。分かりました、エゴサ我慢します!』
一応釘を刺したが、聞き分けのいい萌恵でも見るなと言われると見てしまうのが人間の性だ。
早急な対応が必要だろう。
「ケーキは口にあったかな?」
『あ、これからいただきます。私の分までありがとう、孝之さん』
「そうか。ランチで食べたいものを考えておいて」
はーい、と返事をした萌恵との通話を切ったあと、パソコンに向き直る孝之。
母親に負けていられないため、早めに拡散系インフルエンサーとやらを片付けてしまおうと孝之は黒く笑った。
お読みいただきありがとうございます。
ついに親公認のデートまで来れました!
でも次回は準備編です。
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