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AIが選んだ相性率100%の運命の相手は20歳差でした  作者: 藤崎まみ
第2章 仲を深めるのは人間の仕事

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7/13

1 「20歳まで手を出しません」


A.I.S(アイス)で萌恵とマッチングしたあの日から、早2週間。6月の2週目の土曜日の正午頃、六本木の高級マンションの自宅で孝之はスマホを片手に、眉間に皺を寄せながら母親の貴子と通話していた。



「はい、大丈夫です。分かっていますよ」

『くれぐれも、()()()()()()お付き合いをすると宣言なさい。いいわね』

「もう耳にタコができますよ。…約束に遅れますので失礼します」

『孝之!』



今日、白川家に萌恵との今後の付き合いについて、父親と母親に改めて挨拶にいき、話し合う予定になっていた。


平日の昼間は仕事で両者とも都合が付かず、夜は萌恵が帰宅してしまう。

孝之との付き合いを前向きに考えている娘の前では話しづらいこともあるだろうと、萌恵の部活動の練習の日に予定を被せていた。


それをどこから聞きつけたのか、貴子がここ2、3日しつこくきちんと挨拶してこいと何度も言い聞かせされていた。


ポンッとチャットアプリの通知音が部屋に響く。



(萌恵)ー こんにちは!お昼ご飯食べましたか?

    私はこれからお弁当食べます♪ー



萌恵はこの2週間、宣言通りチャットから孝之と仲を深めようとしていた。

始めのうちは、おはよう、お疲れ様、おやすみといった挨拶のような内容だったが、次第にこうして1日に数回彼女はマメにチャットで孝之に自分の生活を報告してきていた。


もうすぐ中間テストだとか女子バレー部の引退試合が近づいているから練習がキツイとか、友達とカフェに遊びに行った報告などである。


週末には通話までおねだりされ、しばらく話に付き合うなどしていた孝之。


スマホの画面にピコピコ動く、語尾に付けられた絵文字をみて、ふっと口元を緩ませる。


仕事中は通知を切っていたし、休憩中に返信すれば、萌恵は返事を急かしたり文句を言ったりすることはなかった。


秘書の佐伯が昼休みにニヤニヤ含み笑いを浮かべた顔で見てくるくらいで特に支障はなかった。

萌恵とのやり取りは不思議と煩わしくなく、自分がらしくないことを楽しんでいるのは事実だった。



(孝之)ー 部活動お疲れ様。もう食べたよ。

    午後も頑張って ー



萌恵にチャットの返事を送ると、すぐに既読がついて笑顔のキャラクターのスタンプが返ってきた。

リアルタイムで連絡が取り合える楽しさに、なるほどチャットが流行る理由もよくわかるな、と思いながら支度を始めた。


孝之は萌恵の自宅のマンションへと向かった。




***




萌恵の父親である白川幸一は、今年50歳になる。

年頃の娘を育てながら、ASM銀行の支店で次長を務めている。


転勤の多い職種ではあったが、やっと昇格して暫くは都内勤めになるため、交通の便のいい駅近のマンションを借りていた。

一般家庭よりは少しはいい生活を送り、堅実に真面目に生き、愛しい妻と可愛い娘を必死に養ってきた幸一。


自分も使った公共サービスのA.I.S(アイス)の識別結果でまさか自分の娘の相手が、自分の銀行のトップの、そのまた上の親会社の社長だなんて、これっぽっちも思っていなかった。



「改めて、ご挨拶させていただきます。浅見孝之です」

「…萌恵の父の幸一です」

「失礼します」



孝之を自宅のダイニングテーブルに座るように促す。


幸一から見ても、萌恵と妻が散々38歳なんでとても見えないイケメンだった、背が高くて芸能人みたいよ、なんて言っていたのを反芻する。


それほど見目の良い男で、地位も高く、同じ男として父親として色々刺さるものがあり、幸一は少しだけ痛む胃をさする。


キッチンで紅茶を用意して持ってきた香奈恵は、お父さんファイト!と心の中で小さくエールを送っていた。


対面の幸一の隣に香奈恵が座ると、ゆっくり孝之が口を開く。



「この度A.I.S(アイス)が識別した相性率100%という数字ですが、私としましても萌恵さんとは年の差が釣り合いが取れないことは自覚しています」

「孝之さんは、38歳でしたか」

「はい、4月で38になりました」



自分と一回りしか違わない男に愕然としながらも、20歳の差をぐっと噛み締める幸一。



「折角、娘のいない時間に来て頂いたので、正直な思いを伝えさせて頂くと、娘が孝之さんとの関係を楽観視し過ぎていると私は思っています」

「…お父さん!」

「母さんが萌恵に寄り添いたいのはわかる。けど心配に思う所もあるよね」



幸一の反対の言葉に、香奈恵はここ数週間の萌恵の楽しそうな様子をみてすっかり応援したい気持ちになってはいたが、確かに色々不安はあり口をつぐむ。


孝之は特に顔色を変えずに、萌恵の両親の話をじっと聞き入れていた。



「萌恵は元々夢見がちなところがある子で、私たち夫婦がA.I.S(アイス)で結婚し家庭を持ったので、少し信頼度が高くなっていると思います」

「…確かに」

「結果が孝之さん1人という状況には驚きがありますが、娘は男性経験も乏しく社会の常識にも疎い。

このまま交際を続けさせるのは、男親として不安があります」



本来であれば数年かけてチャットを通したり新たな候補者とマッチングしたりする。そういった恋愛順序を追っていくことが、萌恵にはできない。

残されているのは自由恋愛だが、孝之との関係を続けてては萌恵はそんなこと一切しないだろう。


もちろん一人目で上手くいくカップルもいるが、萌恵と孝之は年の差が大きく判断する期間が人より短くなる。


娘の選択肢が狭まっていく事実を幸一は見逃せなかった。



「私は萌恵さんが望んでいるのなら、彼女の意思に寄り添いたい。しばらくは誠実なお付き合いをと考えています」

「…失礼ですが、私が32歳の時に萌恵が産まれました。孝之さんと萌恵が結婚を考え、子どもを意識し出すのは何年後になりますか?」



香奈恵は夫が、こんなに孝之と萌恵の関係に反対の意見があるとは知らなかったことに驚いていた。


確かに言われてみれば妊娠のタイムリミットは女性だけの問題では無い。


まだ進学を考えている萌恵にとって、早くても2、3年はかかるだろう。仕事が軌道に乗ってからなんて言い出したら、孝之はあっという間にアラフィフになる。

その前にと子どもを考えて、萌恵は将来のことを考えられなくなるかもしれない。


孝之は父親の意見を最後まで聞いたあと、ふぅと息を静かに吐いてカバンから書類を取り出し、夫妻に手渡した。



「えっと、こちらは?」

「私のブライダルチェックの診断結果です」

「ぶ!…ごめんなさい」



つい気安く覗き込んでしまった香奈恵は、サッと目線をあげる。

孝之は気にした様子もなく、書類に目を通すように促す。


そして真剣な目で、幸一を見つめ返した。



「診断結果の通り、今のところ生殖機能の全ての項目で基準値より上回っています。未来のことはなんとも言えませんが、必要ならば定期的に検査しても構いません」



小さく口を開けて絶句する両親に、孝之は続ける。



「何も今すぐ萌恵さんとの結婚を希望しているつもりは私も一切ありません。

ただ、今まで誰も選ばれずにいた私にとって大切にしたい存在ではあります」

「…は、はい」

「萌恵さんの希望にはなるべく応えるよう努力します。

()()()()()()お付き合いに尽力します」



孝之が誠心誠意、萌恵との付き合いを願ってくれている事実に、嬉しく思う幸一。


ただ、同じ男として、いくら誠実など言っても過去に色々身に覚えがあるし、父親としての立場上どうぞどうぞと娘を直接差し出す言葉を出すのは難しかった。


香奈恵はハラハラと夫の顔を見る。



「お父さん、孝之さんがこんなに萌恵の為にしてくださっているのに…」

「分かってるよ…、ただ本当に萌恵が心配なだけなんだ」



ただの我儘で交際を許せないのではないと妻にはわかって貰いたかった。でも幸一からみても最近の萌恵は恋する乙女状態でとても幸せそうだった。


孝之はそんな2人の様子を見て、萌恵が両親に大事に育てられていることを再び実感しつつ、思案しながら口を開く。



「では、2年間。20歳を迎えるまで、私は萌恵さんに手を出しません。お約束します」

「…孝之さん」

「私としましても20歳の年の差は大きく感じています。今すぐ10代の女性をどうこうしようなどと考えていません。

…その2年間でA.I.S(アイス)が再び識別者を見つける可能性もあります」



『その際に萌恵さんが望むのなら、すんなり自分は手を引きます』



精一杯の言葉に幸一はゆっくり孝之に頭を下げた。



「娘を、どうかよろしくお願いします」



孝之は萌恵の両親と約束を交わした。




***




萌恵が部活動の練習が終わって帰宅する頃には、もう孝之は自宅へ帰っていた。



「えー!孝之さん来てたの!?なんで教えてくれなかったの?」

「急ぎの用があったのよ、ほら例の週刊誌あまり騒がれなかったのに、ネットで騒がれ始めちゃったみたいで」



その話もあの後にしたため、嘘では無いが萌恵には今日メインの話は内緒にしておくように孝之に言われた香奈恵はサッと会話をそらしていく。


浅見財閥のスキャンダルとして流れた週刊誌はそこまで騒がれることがなかったが、SNSでネタを探していた業者が騒ぎ立てネットニュースがいくつか出回っていた。


JKと御曹司の恋の行方は!?といった見出しに様々な意見が付けられ、一部界隈でバズっているようだった。



「いい?萌恵ちゃん。まだあなたの名前までは出てないけど、このご時世SNSに匂わせ画像とかあげたらすぐに特定されるんだからね」

「うん、わかってる。まだクラスの子誕生日まだだしA.I.S(アイス)の話もあんまり出ないよ」

「萌恵、母さんもちょっとこっち座ってくれないかな」



神妙な顔つきで脅すような母親に、ゆっくり頷く萌恵。9月の誕生日の子が多いよ、なんてどこか返事は軽い。

そんな2人をダイニングに呼びつける幸一。



「汗かいて臭いから、シャワーのあとじゃダメなの?」

「いいから。萌恵、今日孝之さんは挨拶に来たんだ」

「お父さん!」



孝之から口止めされていたのに、と驚く香奈恵に幸一は首を振る。



「萌恵はもう立派な成人女性だ。知っておく権利はある」



父親の真剣な顔付きに、圧倒されて自分の定位置に腰を降ろす萌恵。



お読みいただきありがとうございます。


未来のお嫁さんの両親への手土産が

ブライダルチェックなんてスパダリですよね!


是非ブクマ、リアクションよろしくお願いします。


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